家の空気を追い求めて・・・25年 (2)
・・・ 家の空気を追い求めて・・・25年(1)からつづく ・・・
化学物質の濃度低減
建材に含まれる化学物質、施工に伴う接着剤の使用は、建物をつくる上で不可欠です。
測定と分析及び濃度発生の施工的要因これらを検証してきた過程で、いろいろ努力をしてきましたが、どうしても個々の要因(施工精度に伴う建物の品質等)により、化学物質の濃度が基準値より高くなるリスクがあります。
そこで、初期濃度(建物のできたてが濃度は最も高い)を低減するため、完成後の建物引き渡し前のベークアウトを行うこととしました。(これは現在でも引渡し前に行っています。)
しかし、このベークアウトは施工者から嫌われます。
なぜならば、左官建材は水分を多く含みますし、木材も乾燥材を使用しますが、それでも水分をある程度含む上、ビニールクロスは最終仕上げ材ですが、接着糊には多くの水分を含みます。
このように完成直後の水分が多い中で、ベークアウトのために、室内温度を数日間上げ続け、換気と加熱を繰り返し化学物質を強制的に放出させる作業は、左官材料の収縮亀裂やビニールクロスの糊のはがれなど施工リスクを伴います。
私も初期には、何回も不具合を起こし補修を余儀なくされました。
それでも施工会社の皆様に理解いただき、お客様の健康のため建物の空気の品質を上げる努力を積み重ねることができました。
でもこのベークアウトは、建物の材料(特に内装材)により温度・湿度の加熱時間調整、夏・冬の外気温の違いなど経験を積まないと難しい作業であると、今もつくづく感じています。
換気の重要性
もうひとつの化学物質低減方法として重要なのが換気です。
換気は室内の化学物質やハウスダスト等有害物質の低減除去には欠かせない手法であり、「室内空気環境」をよりよくするためには、外部空気の入れ替えは最重要です。
そこで、換気についても設計・監理をしている建物で実証実験を繰り返しました。
まずは、換気扇の換気風量の測定を行い、カタログデータと設置環境による風量の違い、換気扇の高さと給気口の高さ及び設置位置による空気の流れ方を、何物件かにわたり実証確認を行い設計にフィードバックを行いました。
この空気の流れは、実際の建物で確認を行うため、実験用のスモーク(からだに無害な煙)を発生させ、目で見える煙の流れを確認し、換気扇の位置・能力の選定の参考にしています。
しかしながら、空気の流れは現実の建物では理論通りいかないことを思い知らされ、さらに検討を続ける結果となりました。
なお、義務付けられている24h換気は住宅では、1時間当たり0.5回以上換気を行う設定ですので、2時間でその部屋の空気が全部入れ替わると思われがちですが、換気で排出した空気は給気として同量入ってくるため、完全に入れ替わるのは時間がかかります。
また換気扇の位置・給気口の位置・エアコンの位置については、空気の流れを伴うため、マドの位置・家具の位置を考慮しながら検討を行いますが、なかなか理想どおりいかないのが現状です。
ちなみに空気の流れが上手くいかない部屋は、空気だまりができ(特に角が多い)カビの発生の原因にもなります。
情報提供
安全な空気を追及する上で、建物の空気の品質を上げる努力を積み重ねてきましたが、安全な空気はつくる側だけでは、品質を上げることはできません。
そこには、住む方のリスクに対する情報と知識が相まって、初めて空気の品質が向上します。
そこで住む方に、リスクの存在とリスクの回避方法をご理解いただくため、2006年より現在までセミナーをとおして情報提供を行っています。
(地域金融機関主催セミナー等)
例えば
私たちの空気の摂取量は、1日に15㎏~20㎏であり、大半は室内の空気である事。
「アレルギー物質と室内空気」・「室内空気環境と換気」・「室内環境と化学物質」・「体内時計とリスク時間」など、
身近な内容でお伝えしています。