ジプシー・ガールズ

 私はジープの広い後部座席に寝そべり車内の天井を眺めていた。
固いサスペンションから伝わる振動が心地よく、胃のあたりが浮き上がるような高揚を感じる。

「サキ、起きてる?」

運転席でハンドルを握っているのは同級生のトモコ。
運転免許は持っていない。無免許運転だ。
最もそれを取り締まる警察も、もういないけど。

 2018年--異界元年。
私たちの世界は異世界と繋がり、全てが変わった。
向こうの世界から現れる西洋甲冑の軍団に現代兵器は通用せず、私達の住む街はドラゴンの火に飲まれた。
国家は崩壊した。

「サキ、ヤバい。ドラゴンが来た」

窓の外から見上げる。
…大きい。
まるで岩山だ。
広げた翼は校庭のサーキットくらいある。
私達の車は巨竜が落とす影にすっぽり覆われていた。

「トモコ、飛ばして。上からの攻撃は私が何とかしてみる」

私は傍らの刀袋をつかみ、ルーフを開け、車の天井へと這いあがった。
強風にセーラー服が激しくはためく。

つづく

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