ジョブ理論
「ジョブ理論」 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム
(クレイトン・M・クリステンセン 著)
ジョブ理論の概要
企業が蓄積しているデータは「顧客が高い確率で商品Aを好む」などの形で示されるが「顧客がなぜその選択をするのか」は教えてくれない。アイスの売上と森林火災は夏に増加するので相関関係はあるが、因果関係はない。
・ジョブの定義:ある特定の状況で人が遂げようとする進捗。重要なことはなぜその行動をしたのかを理解すること。
・ジョブでないもの:ニーズとは異なる。ニーズはトレンドと似て漠然としており顧客が商品やサービスを選ぶ具体的な理由にはならない。
朝のミルクシェイク
「どうすればミルクシェイクがもっと売れるのか」
値段を安くするのか、量を増やすのか、硬く凍らせるのか。
観察してわかったことは、午前9時前に1人でやってきた客がテイクアウトすることが多かったこと。
夕方のミルクシェイク
同じ人間でも夕方は状況が変わる。子供にいい顔をして優しい父親の気分を味わうためのジョブ。ライバルは、おもちゃ屋に立ち寄ることや自宅でバスケットボールで遊ぶことなど。
マーガリンのジョブ
マーガリンは飲み込みやすいようにパンの耳や皮を湿らせる何か。マーガリンやバターは冷蔵庫で硬くなり、そのままではパンに穴を空けてしまう。マーガリンのライバルはいつもバターであるとは限らず、クリームチーズやオリーブオイル、マヨネーズなど。
ジョブの見つけ方
ジョブ理論は少数の変数から答えを導く公式ではなく複数の切り口と機能を持った統合ツール。ある状況下で顧客に何かを選択させる複合したニーズの本質を解き明かすもの。
気づかれにくいもの
1:現行の習慣:現状に満足はしていないが今のやり方に慣れている。
2:変わることや新しいことへの不安
マットレスを買うときのジョブ
一見、店頭(コストコ)で衝動買いに見えた行動は、実際には1年前から気になっていたもの。夜にぐっすりと眠りたいが慣れてしまっていた。古いものの廃棄から新しいものを運び入れるまでの多くの面倒が伴う。
企業のプロセスへの統合
1ジョブの特定:感情的・機能的・社会的文脈の状況下に依存
2求められる体験の構築:優れた体験が商品を選ぶ基準となる
3ジョブ中心の統合:社内プロセスを統合することで競争優位となる
・計れるものは実行できる
ジョブ理論は、プロセスを何に合わせて最適化するかを変えるだけでなく成功の尺度も変える。業績の評価基準を内部の財務実績から外部的な顧客ベネフィットの測定基準へと変わる。(Amazonの、発送日ではなく到着日の計測)
イノベーションのデータの誤謬
1能動的データと受動的データの誤謬
・プロダクトの販売はプロダクトのデータを生み出す(何個売れたなど)
・購入は顧客データを生み出す(法人か個人か、地元か遠隔地かなど)
・競争相手の登場により、比較データを生み出す
このような能動的データは目立つため自然な市場による受動的データに比べて優先順位が高くなってしまう。
2見かけ上の成長の誤謬
・大規模な投資を行うと、大きな利益を生むため見かけ上成功しているように捉えられる。
3確証データの誤謬
・そうあってほしいというデータに着目しがちになる。
・全てのデータが人間の偏見や判断に基づいていることを理解しておく
ジョブを重視した組織の4つのメリット
ジョブ理論のこれから
イノベーションへの解は、Job to Be Done(片付けられるためのジョブ)。顧客の属性や製品の特徴ではなく、顧客が片づけたい用事が商品を買うか買わないかの決定要因になる。”顧客の属性”と”欲しいもの”に相関はあっても因果はない。
ジョブ理論と同様に潜在的なニーズを見つける方法として、”エスノグラフィー”や”デザイン思考”がある。