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簡体字と繁体字の違いとは

■簡体字と繁体字

同じ漢字圏であっても台湾と香港は「繁体字」、中国では「簡体字」が使われています。この違いは中華圏向けの情報発信を行う上で一番に注意を払わなければならない部分です。

例えば台湾人や香港人向けてに訴求をするために簡体字でページを作った場合、台湾や香港の人たちからは「これは私達ではなく中国人向けのページだ!」と思われてしまい、見向きもされなくなってしまうことがあリます。その逆も同じです。中国人向けの訴求にも関わらず繁体字で訴求をすると「私たち向けではない」と思われてしまうリスクがあります。

「繁体字と簡体字」

■簡体字とは
簡体字は、繁体字を簡略化させた字で、中国やシンガポールで使われています。一部の簡体字は日本の漢字と近いものもありますが、極端に簡略化された字もあることから、日本人から見るとまるで記号のようにも見えてくることもあります。
現在の簡体字が中国に定着したのは比較的新しく、中華人民共和国の成立前は繁体字が使われていました。ですが簡体字の概念自体はそれ以前から存在し、庶民が簡単に漢字を書くために使われてきました。しかし、それらの簡体字は統一されていたわけではなく人や地域によって様々でした。
1949年に中華人民共和国が成立すると、識字率の向上と文字の統一を目指して中国文字改革委員会が設立され、1964年に「簡化字総表」として正式に採用され、修正が加えられながら現在の形となりました。

日本語と簡体字の比較

■繁体字とは
繁体字は昔から使われている伝統的な漢字です。台湾や香港、マカオを中心に使われています。繁体字は字数が多いため書きづらい部分もありますが、日本の旧字体に近いため日本人には馴染み深い字も多いかもしれません。

台湾では昔から中国大陸から渡ってきた人々を中心に漢字が使われ、現在の繁体字は清末期に使われていた漢字が基本となっているそうです。その後、中華民国政府によって繁体字の統一化/標準化が進められたため、現在も繁体字が日常的に使用されています。

香港は中国に隣接した地域ではありますが、1842年から1997年まで約150年間に渡ってイギリスの統治下にあったことから、中国から簡体字が流入されずに中国に返還された現在まで繁体字が日常的に使用されています。

日本語と繁体字の比較

■繁体字と簡体字の比較

簡体字と台湾繁体字、香港繁体字の比較

こちらは日本語を台湾の繁体字、香港の繁体字、簡体字で表記したものです。( ※オレンジ色は、他と異なる漢字が使われているもの)

・東京
簡体字の場合は「東」という字が簡略化されます。繁体字は日本語と同じ「東」が使われます。

・成田国際空港
中華圏への路線が多い成田国際空港の場合は繁体字と簡体字では表記が異なる点が多くなります。繁体字の場合は「国際」は難しい「國際」になりますが、簡体字の場合は「国は」日本と同様で「際」は簡略化され、「际」となります。「機場」は中国語で空港という意味ですが、繁体字の場合は日本でも使われる漢字になります。それが簡体字になると簡略化され、「机场」となります。

・ホテル
簡体字と香港繁体字の場合は「酒店」、台湾繁体字の場合は「飯店」となります。中国や香港では「飯店」は中華レストランに、台湾では「酒店」はナイトクラブという意味になりますので、使う際には注意が必要です。

・台湾
簡体字の場合は「台」も「湾」も日本語と全く同じです。
繁体字は台湾と香港では表記が異なり、台湾繁体字の場合は「台」が「臺」となります。しかしながら、実際は台湾では「臺」という字は公式文書や公共の場面などでは使われていますが、一般には「台」を使うことが多いようです。

・大阪
一方「大阪」は簡体字も繁体字も日本語と全く同じです。これは「北海道」でも同じことが言えます。

・タクシー
タクシーの場合は繁体字と簡体字は関係なく全く異なる字を使って表されます。簡体字の「出租车」の場合は中国のタクシーの営業形態からこのような字になりました。「(出)租車」は台湾では「レンタカー」ということになります。台湾は読んで字の如く「行程を計る車」で「計程車」です。

香港の場合は英語の「Tixi」を広東語の発音で当てはめたもので、実際に「ディックシー」と発音されます。これはイギリス統治時代の名残りがあるものと思われます。バスの場合も同様で、簡体字は「公交车」台湾繁体字は「公車」、香港繁体字は「巴士」となります。

このように簡体字と繁体字を比較すると字体が大きく変わることがわかります。また、場所ごとの環境や背景によって使われる漢字が全く異なることもあるのです。またひとえに繁体字でも台湾と香港では政府ごとに標準字体が制定されているため、必ずしも全く同じというわけではないことがわかります。

■台湾、中国、香港向けのページやコンテンツ制作について

1. 簡体字ページと繁体字ページを分ける
最近は簡体字と繁体字を分けて制作されているページが数多く見かけますが、一部では簡体字しかないサイトも存在します。台湾や香港人旅行者向けへプロモーションを行いたいのなら、まずは繁体字ページは必須です。
さらに、よりプロモーションの効果をあげたい場合や、台湾だけ/香港だけにターゲットを絞る場合は、台湾繁体字と香港繁体字を分けて台湾向けと香港向けのページを別々に作る必要もあるでしょう。

2. 現地目線で制作する
google翻訳などで簡体字や繁体字のページを制作することもできますが、まだまだ精度が低い部分もあり、正しく翻訳がされていなかったり、現地で使われていない言葉になることも多いようです。
さらに香港で日常的に使われる広東語や台湾で使われることがある台湾語を文字化した現地だけで使われる漢字「方言字」が日常的に使わることもあります。
そのため簡体字や繁体字のページを制作するのであればやはり現地目線で、現地の人の手で作る必要があります。

台湾、中国、香港は同じ漢字圏ではありますが、歴史的な背景やその場所の環境によって漢字の形が変化し日常で使われています。日本の漢字も同じです。だからこそ中華圏に向けて情報発信やプロモーションを行う場合は現地の言語の違いを理解する必要です。

■ 補足

1.中国

中国における言語と文字

言語
日本では北京語(中国では普通話)と言われることもあります。中国は広いため地域ごとに方言あったり上海語や広東語などの全く違う言語が日常言語として話されることがありますが、中国語教育が広く行われているため国民のほとんどが中国語を理解し、話すことができます。
文字
中国では政府が簡体字を正式な字体として認めているため、街中やメディアでも使われる文字は簡体字です。(寺院や古書、歴史ドラマではしばしば繁体字が見られます)。簡体字は部首がしばしば省略化されます。そのため、日本人にとっては非常にわかりづらく感じます。

2.台湾

台湾における言語と文字

言語
台湾も中国語が公用語として使われています。しかし中国とは語彙や発音が異なることがあり、台湾の中国語は日本では「台湾華語」(台湾では國語)と呼ばれ、区別されます。発音の仕方や語彙で中国からの旅行者か台湾からの旅行者かを見分けることもできます。台湾南部などの一部では台湾語と呼ばれる閩南語や客家語などの方言も頻繁に使われます。台湾の交通機関では中国語のアナウンスとともに台湾語と客家語のアナウンスもされます。これらの方言も広東語同様に中国語話者と会話してもほぼ通じません。

文字
街中では頻繁に繁体字が見られます。繁体字は簡体字に比べると画数が多いのが特徴です。繁体字は日本の旧字体に近いため、日本人にとっては繁体字の方が簡体字より読みやすく感じるかもしれません。台湾ではそのほかにも「注音符号」というものがあります。注音符号とは発音記号のことで、日本のひらがなのようなものです。中国では拼音と呼ばれる表記でローマ字で発音を表しますが、台湾では注音符号がど広く使われます。パソコンのキーボードやスマホの入力を注音符号にしている台湾人も多く、街中ではたまに注音符号で書いてある看板や商品を見かけることもあります。

注音符号

3.香港

香港における言語と文

言語
香港では広東語と英語が共通語として話されます。日常的には広東語が使われ、香港住民の9割が広東語を理解し、話すことができます。交通機関のアナウンスやテレビなどの映像メディアも広東語がメインになります。映画においても広東語映画が独自に発達し、「香港映画」として世界に流通している例もあります。広東語は中国語とは発音や文法が違うため、広東語と中国語で会話をしてもほとんど通じません。そのため中国語話者と会話をするときには中国語を使用することが多いようです。
英語はイギリス植民地時代の名残として残されており、その影響があってか香港で話される広東語は文中に頻繁に英語が混じ流ことがあり、中国の方言としての広東語とは多少毛色が異なるものになります。

文字
あくまでも広東語は口語(話し言葉)のため繁体字の中国語が使われますが、同じ繁体字でも台湾とは文字や文法に多少違いがあります。また、街中では元々口語である広東語を文字化した方言字というものが使われることがあります。広東語話者の間では方言字でやりとりが行われることがあるほか、香港の一部メディアでも方言字を用いられています。広東語の方言字は基本的に繁体字が使われますが、中国語とは違う文字や文法が使われることがあるため、広東語圏以外の人々には通じません。

広東語

(※Vponサイトより編集して公開しています)