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私がヴィーガン/グルテンフリーのお菓子屋さんをやる理由

札幌の山の近くで、北海道で初の「乳製品/卵/小麦/白砂糖不使用のお菓子屋さん」を27才でオープンして今年で3年目。
ヴィーガンやベジタリアン、グルテンフリー、アレルギーや病気といった理由で食に制限がある人もない人も、みんなが普通のお菓子と遜色なく食べられるスイーツ作りをしています。

ロゴ


▲私のお店「アリサの北海道お菓子店 chat」のロゴ。

お店のことは、主にInstagramで更新しています。

Instagram→ @arisa_hokkaido

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なぜ、お菓子屋さんを続けているのか。
宗教や考え方、体質、病気などの状態を飛び越えて、みんなの笑顔のきっかけになる「おいしい!」を届けたいという 強い思いがあるからです。

考え方、宗教、健康状態によらず、できるだけ多くの人が食べられるものを作り「おいしいね」と共感するきっかけを作ることで、あたたかい相互理解を生み出したい。

この思いに至るまでには、私個人の血筋と体質 が大きく関わっています。

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私の血筋について。


私は、祖父がドイツ人のいわゆるクウォーターです。
北海道生まれ北海道育ちなので、道産子クウォーターです。

写真の、乳母車に乗っているのが私。

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祖父は、イギリスのオックスフォード大学で哲学を専攻。第二次世界大戦中に札幌にやってきて、キリスト教系の高校で英語教師や校長先生などをしていたそうです。

▼おじいちゃんの棚にあった本たち。赤いのはシェイクスピア。

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百貨店での催事出店の際に、ディスプレイしたりしてます。

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家には様々な国の様々な本がたくさん置いてあり、テレビで流れているのは海外のニュース(日本のバラエティー番組は、中学校まであまり見てなかった)な環境で育ちました。小学校の頃の私は、日本の総理大臣は誰かわからなかったけれど、アメリカやドイツ、イタリアの首相の名前はしっかり覚えていたという…日本のバラエティー番組なんかもほぼみないで育ってしまったので、流行りの曲もわからないし、学校の話題についてけなかったのを覚えています。(でも、特に知りたい見たいとも思わなかった。)

親戚がドイツ住んでいるので、海外からのお客様もたまに来てくれました。もちろん、私たちがドイツに行くことも。

ちなみに、ドイツの親戚のお家は、牧場を営んでいます。
ゆるやかな丘陵遅滞の田舎の広い土地では、牛や鶏が自由にノビノビと歩き回っています。
たまに、脱走するそうですが、お腹空かせて自力で帰ってくるらしい。いい子。
ドイツのおうちの食卓では、自家製のハムやソーセージ、オーマ(ドイツ語でおばあちゃん的な意味)が作るケーキなど、絶品メニューが並びます。
でも、結構な頻度で、ラザニアやビスコッティーなどイタリア料理も出てくる。で、なんで??と聞いたら、昔、イタリアからドイツに移住してきたからだそうな。(ってことは、イタリア系ドイツ人??)

そのおかげで、北海道に住みながらも、いろいろな国の文化や世界の様々な考え方を小さい頃から自然と吸収することができました。
さらに。
私の祖母は9人兄妹なのですが、半分以上が外国の人と結婚。戦後まもなく海外の人と結婚しまくる兄妹って当時は珍しいのではないでしょうか。アメリカ人やドイツ人、ヴェネズエラなどなど。
そんな親戚たちに囲まれていたので、小さい頃から「国境」や「人種」という概念が希薄でした。

生活環境や血筋が影響して、金子みすず的にみんな違ってみんな良いし、それぞれに文化や主義主張があるのは当たり前で、それが違うことが仲違いの原因には決してなり得ないことを、小さな頃から感覚的に理解してました。むしろ、それを尊重することが、あたたかな関係構築にとって必要なことなのだろうな と、親戚付き合いから学びました。

だからこそ、日本での、食に対する認識に強く違和感を感じていました。

こんな思い出があります。
小学校2年生の時、アサリサラダがどうしても食べられなくて、「食べるまでお昼休みしては行けません!」と先生に怒られたときのこと。
食べたら吐きそうなのに、なんでだよ。
と、アサリサラダとひたすら見つめ合って「食べられないものがある状態」について、2年生なりにひたすら考えていました。

体が食べたくないって言うから吐こうとしてるのに、なんで食べさそうとするんだろう…

食べられないもの/食べたくないもの を、強制することって、正しいのかな??
よっぽど栄養が偏っていたら、注意を受け入れるべきだとは思うけれど、私はいつもは残さなくて、このアサリサラダの変なドレッシングだけが、どうしても吐きそうになるだけなのに。

そういえば、豚肉やお酒が食べられない人や、お肉やお魚や卵も食べられない人がうちに来たこともあったよな…この人たちが小学校に来たら大変じゃん!給食食べられなくて、昼休みが永遠にもらえないじゃない!

結局、アサリサラダを頑張って食べきり、その1時間後に腹痛で吐いてしまったのは自分の考えを裏付ける経験となりました。※好き嫌いを肯定するのでなく、「食べたくない」「食べれない」の背景には根源的な理由があることも多いので、それをしっかり聞いて受け入れてほしかたっという話です。

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私の体質と環境について

私の実家は、母の方針でゆる〜く自給自足をしており、ハーブや野菜がたくさんある環境で育ちました。

実家の様子は、youtubeチャンネルにも登場してます。

鶏や、養蜂もしてたり…とても長閑なイングリッシュガーデンが、私の遊び場でした。


出てくる料理もお菓子も母の手作りがメイン。
大体お庭のもの、調味料も、きちんと製造された安心安全なものを食べていたにも関わらず、家族で私にだけ、アトピーやアレルギー体質が強く出ていました。

病院のアレルギー検査では、当時は何にも反応せず、ただアレルギー抗体の値だけが異常に高い状態でした。

薬はあまり使いたくなかったので、とりあえず、腸内環境を悪化させる小麦と卵、乳製品は避けることに。

しかし、ここで問題があります。
私のお母さんは、ドイツ人のハーフなので、乳製品/小麦 を使ったお料理がメイン。お菓子もそうです。

私は、お母さんのお料理もお菓子も大好きなので、とても困ってしまいました。

困ったけれど、母の手料理を食べることを諦めたくない!我慢したくない!
おいしいねって言いながら、一緒のものを家族一緒のテーブルで食べたい!!

そこから私の乳製品/卵/小麦/白砂糖不使用のお料理の研究が始まりました。
安心安全な素材や調味料を使うことは大前提、材料を私が食べても大丈夫なものにして、見た目も味も同じにすれば問題ないからです。

小麦粉の代わりに米粉を使い、牛乳の代わりに豆乳を使い、バターの代わりに菜種油を使い…

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この、小さい頃に感じたことと経験は、成長してからもずっと心の中にあります。

大学に入ってからは、症状も落ち着いたのもあり洋菓子店でアルバイトをしていたのですが、油断大敵!

そこで本格的に小麦アレルギーになってしまいました。

でも、大好きなケーキを諦めたくない!
私は食い意地がはっているのです。

大学受験で中断してそのままになっていた、乳製品卵小麦白砂糖不使用研究を、プライベートの範囲で再開して素材への知識、調理の方法 など、世界中のあらゆる情報を調べ実践しました。
通っていた学部が理系だったこともあり、エビデンスのある科学的な情報を揃えやすかったのはラッキーでした。
作ったスポンジを、バイト先のケーキのスポンジと何度も何度も比較しました。材料は違っても、絶対同じものを作ってやる!という気持ちです。

調理や材料について調べて、作り続ける中で、一貫して感じていたのが「日本の食の多様性への理解のなさ」です。
ヴィーガンやムスリムの友人たちは、私が小学校の頃から変わらず日本では相変わらず食べるものに苦労していました。

おいしいね であたたかい関係を築きたい

なぜ、日本が多様な食文化に対する理解が進んでいないのでしょうか??
それは、何かの理由で食べられないものがある人たちに触れたり、そういった人たちが食べる食事や文化に接したことがないからだと、私は考えています。

日本の教育や暮らしでは「食べられないものがある」という状態を自然のうちに、知るきっかけが、あまりにも乏しい状態です。
「そういうこともあるんだね」 と知るコンタクトポイントさえあれば、ビーガンやグルテンフリー、アレルギーやムスリム、時には病気などで、何か食べられないものある状態 に対して、自然に受け入れられるようになると思うのです。

食べ物に何も制限がない人にとっては、知らなくても良いことのように思えますが、実は他人事の話ではありません。

現在食べることができていたとしても、体質や飽食による体調の変化により、将来的に特定のものを食べないという選択をとる未来が、誰しもにも訪れるかもしれません。
インターネットのおかげで、多種多様な情報に誰もがアクセスできる現代社会だからこそ、ある日、あなたが何かのコンテンツに触れたことをきっかけに考え方が変化して、食べるもの/食べないものを自分で選択する日だって来るかもしれません。

今もしくは未来の、何かしら食べられないものがある状態が普通になりつつある社会で、お互いのことに無関心ではない、あたたかい関係を築いていくために必要なのことの1つが、「おいしいね」と共感しあえる食べ物です。

同じものを食べて、同じくおいしいねと思える楽しさや嬉しさは、時間軸に左右されない、かけがえのないものです。

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以前、小麦アレルギーの自分が食べられて、これ以上湿疹が悪化しないようにと乳製品/卵/小麦白砂糖不使用で作った自分用のケーキを、ヴィーガンやムスリムの友人に、お裾分けすると、とても喜んでくれました。

久しぶりに、友達と同じものが食べられた!と言ってくれました。

みんなで一緒のものを一緒においしいねっておしゃべりしながら食べる喜び!おいしいねって言い合いながら、笑顔で過ごす時間の尊さ!

私はこれを近い将来の自分のミッションにすることに決めました。

北海道でやるから意味がある

自給自足の家庭で育ったからか、土地のものを食べる という感覚が強くあります。

北海道は、1年の半分近くが雪が積もっています。
なので、畑や森の土も半年間はしっかりと休憩することができるのです。
しっかり休めるからか、元気な土が多くて、肥料がなくても野菜や果物はスクスク育ちます。

農薬を使わなくても、おいしい食材が手に入るのが北海道の良いところです。

土を触って、鶏や犬や猫といった動物たちと転がりながら暮らしてきたからこそ、北海道の大地の良さをDNAレベルで理解しています。

自分が育った土地の米粉や果実、大豆を使ったお菓子作り。
これは、私にとって自然なことであると同時に、ここに生まれたからこそ、やるべきことだと考えています。
北の大地の力をお菓子に注ぎ込み、多くの人に届ける。
体も心も喜ぶから、思わず笑顔になってしまうくらい美味しいお菓子ができあがる。

北海道がもつ力強さをエッセンスとしてお菓子に注ぎ込むこと。
これが、結果として北海道への恩返しになるのだ、と信じています。

私のYouTubeチャンネル「愛里沙の北海道暮らし」は、北海道への強い思いから、始まりました。(このチャンネルへの思いは、また別の機会にnoteに書きます。)

地球環境や動物について

私は動物や自然も大好きです。
山に行くたびに、人間が住む場所を奪ってしまっている動物たちに申し訳ない気持ちになります。捨てられるゴミの量にも、胸を痛めます。
でも、お菓子屋を始め、人間の営みには環境破壊がつきものです。
だからこそ、お菓子のパッケージや製造過程も、できるだけ環境破壊が少ないものを と心がけています。

また、売り上げの一部を動物愛護団体に寄付するなど、小さなことではあるけれど、人間が動物たちの住む場所を脅かしてしまっている今、自分にできることはなんなのか、考え続けていかなくてはなりません。

環境や動物たちに胸を張って、「ちゃんとしたお菓子を作ってます!」 と言えるように、広い視野をもって、人間のこと以外もきちんと考えながら、お菓子を作っていきます。これは、私のポリシーにも近いものかもしれない。


さいごに

宗教や考え方、体質、病気などの状態によらず、みんなの笑顔のきっかけになる「おいしい!」を届けるため、私は乳製品/卵/小麦/白砂糖不使用のお菓子屋さんを始めました。

3年続けましたが、まだまだ足りないので、もっと頑張ります。
2021年は、事業を大きく動かして、新しサービスを作ったりと、力いっぱいジャンプしないといけない年です。

北海道の元気な土を踏み締めて、動物たちにも応援してもらえるよう。

2018年にオープンした「社会を考えるお菓子屋さんissue sweets lab」、そしてリニューアル後、その思いをさらに強くした「アリサの北海道お菓子店chat」では、このようなマインドを胸に、お菓子を日々手作りしています。

長くなったけれど、最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。

note書くときのコーヒー代や、クロエちゃんへのスペシャルおやつ代にさせていただきます٩( 'ω' )و