見出し画像

IQの低い物書きのアリさんと穴田魔絵図書館(18)

【完全に創作のフィクションとしての読み物も書いていくことにしました。創作ですので、当たり前ですが登場する人物は実在しません。モデルとなった人物も当たり前ですが実在しません。ものすごくテキトウに書いている「落書き」に近いものだからです。文脈を深く考えず、ただ直感的に「息抜き」で書いているものです。】


「抜けっ!抜かぬかっ!」


突然、穴田魔絵の重厚な木製のデスク脇に置いてあるラジオデッキから音声が流れた。

♪♪♪
「拙者は蝦夷軍のリカと申しまするっ。お命頂戴致しまするっ。」
リカは、刀を鞘(さや)から抜いて、杉田軍の女くノ一の三浦鷹子(みうらたかこ)の前に立ち塞がった。
鷹子は毛筆を右手に持ち、書写をしていた。
鷹子は毛筆を右手から静かに座卓の右側に置き、諭すように言った。
「いえ、抜きませぬ。断固、抜きませぬ。
わらわには夢がありまする。日本を八紘為宇(はっこういちう)※の世界にすることでありまする。
わらわはその夢を夢みて、日本全国を放浪の旅をして参りました。そしてもう、外の世界に答えが無いと悟り、こうして独り、書写をし、書を読むことだけを一生の修練とすることにしたのでありまする。毛筆は剣よりも強し。
【堅忍不抜】の魂で死守致しまする。」
リカは絶叫した。
「抜けっ!抜かぬかっ!」
女くノ一の三浦鷹子は、鞘(さや)に手を付けようとは一切しない。
リカは、ふうっと安堵のような溜め息をついて、刀を鞘(さや)にスッと納め、踵(きびす)を返し、退散した。
敵といえど、刀を鞘(さや)に納めている丸腰の人間を切りつけるわけにはいかない。
それが日本の武士の暗黙の礼儀というものである。
♪♪♪
※八紘為宇とは
「天下を一つの家のようにすること」または「全世界を一つの家にすること」を意味する語句。
(wikipediaより引用抜粋)

毛筆
書写

鬼頭魔蘭は言った。
「大河小説『女狐水脈くノ一女忍物語Ⅴ』の朗読をやっていますね。おねいちゃんは昔から日本のルポルタージュ文学が大好きよね。」
穴田魔絵は言った。
「昔の日本の武士(軍隊)は、必ず、自分の所属している組織名と自分の名前を、敵の相手に大声で名乗ってから戦闘をしていました。それは、自分という命が生きていくためには、他人(敵)の命を戴かなければいけないという、和心(万華の心)に反してしまった自責の念による、最低限の礼儀でした。」

読書

コンコンっ。
秘書の智子@が、社長室のドアをノックして言った。「プレジデント(社長)、何かお呼びでしょうか。」
社長の穴田魔絵は言った。
「智子@さん、こちらにいらっしゃるのは新しく入社して下さった新米秘書のサラさんです。智子@さんの後輩になります。宜しくお願い致しますね。」
穴田さんの重厚な木製のデスク脇に佇んで(たたずんで)いたサラは会釈して言った。
「宜しくお願い致します。サラといいます。」
智子@は、碧眼でショートヘアで、ボーイッシュでスレンダーな体格の、ハリウッド映画のキャットウーマンみたいな容貌のサラに会釈して言った。
「サラさん、私もまだ入社して1年ぐらいでベテランとは言い難いですが、宜しくお願い致します。」
穴田さんは言った。
「サラさんは智子@さんと違い、身体能力が高いお方なので、おもに外回り担当で頑張って頂きますね。
木登りがお得意だというセールスポイントと、お若いのに夢(理想)を語れる姿に惹かれて、私の元で働いて頂きたいと思いました。」

キャットウーマン

智子@はどういう基準で採用しているのだろう、と何気に思いながら言った。
「夢(理想)を語れる姿、とはどういうことなのでしょう。」
穴田さんは言った。
「じつは、サラさんは求人募集で弊社に入社されたわけではありません。
ある日、サラさんが道端で、『この国、おかしいよっ!この国、夢がないっ!』と1円の対価も得ずに街頭演説で絶叫していたのを、私は見て思わず、『うちで働きませんか』とスカウトしたのです。」
智子@は、道端で拾ったアメリカンショートヘアの野良猫みたいな人ですね、という言葉が浮かんだのを、おくびにも出さずに言った。
「この国の未来を憂いて、たった一人、道端で街頭演説をして、この国の夢(理想)を語れるなんてすごいですね。
不特定多数の大勢の他人を相手に、そのような度胸は私にはありません。素晴らしい才能ですね。」
穴田さんは何気に言った。
「智子@さんは何か夢がありますか。」
智子@は背中にちょっぴり、冷や汗をかいて言った。
「わわ私は、今、語れるような夢は思いつきません。
しゃ社長は何か夢がありますでしょうか。」
穴田さんのチャーミングな黒目の大きな両瞳は一瞬、黒目だけの瞳となった。
智子@は背中のうぶ毛を逆立てて言った。
「社長に夢を聞くなんて、お、おこがましいことをしてすみませんっ。」
穴田さんは至極、真面目な面持ちとなって言った。
「私は、近い将来、私設の図書館を創ろうと思っています。
それは、どのような時代の為政者にも犯されない(禁書・焚書のこと)、左翼による言葉狩りの影響もない図書館で、人類が存在する限り未来永劫、無くなることがない図書館を創りたいのです。
その図書館に納められた読み物は、誰でも自由に観覧でき、その納められた読み物は未来永劫、保存されます。
紙などの物理的な媒体以外に、インターネット上や、まだ一般的な民間には公開されていないテクノロジーを用いた記録媒体でも保存されます。
その私の【穴田魔絵図書館】では、たとえば、アリさんが書いた読み物、、、小さな出版社にさえ取り扱って貰えず、世間一般的には、もちろん全く評価されず、ほんの数人の物好きな(ものずきな)人が読むだけかもしれないような読み物『音の無い世界』も未来永劫、保存されるのです。
ちなみに【穴田魔絵文学賞】も創立する予定です。
定期的に受賞者を募り、受賞されなかった文学作品も、未来永劫、穴田魔絵図書館で保存されるのです。

才能の有無は別として、アリさんみたいな作家志望の人が居たとして、一生懸命、身を削る思いで書いた読み物が、不遇の時代で、たとえ、一切、世間に評価されなくても、その読み物は未来永劫、残せるとしたら、それこそが穴田魔絵図書館が存在する価値があるというものです。」
智子@は捕捉して言った。
「アリさんのような人が同人誌とか作ってみても、あるいはインターネット上でブログとして残してみても、アリさんがこの世から居なくなったら、間違いなく、アリさんが書いた読み物はいづれ無くなってしまいますね。
でも、穴田魔絵図書館があれば、未来永劫、残すことが出来るということですね。とっても素敵なことです。」
キャットウーマンのような容貌のサラは言った。
「頭のネジが緩んでいるような作家さん達の救いの図書館ですね。とっても素敵です。」

始終、そばでウンウンと頷いていただけの鬼頭魔蘭は開口一番、まめ知識を披露した。
「今現代はAI(人工知能)でも文学小説が書けてしまう時代ですね。それが人間の魂に変容をもたらすほどの感動的なものが書けるのかどうか、かなり、疑問ではありますね。
ベストセラー作家の百田先生はおっしゃっておられました。今現代の若者は本を読まず、YouTubeや映画等も2倍速や3倍速で見るのだそうです。
Z世代以降の年代の若者は、何もしなくても自動的に自分を目掛けて流れてくる、あらゆる情報が、それこそ無尽蔵にあるのです。
情報量が多すぎる世界に生きる若者は、情報の取捨選択に忙しいのです。
古き良き時代のレコードの時代は、一枚のレコードを買うのも金銭的にも大変な人が多く、一枚購入すると元を取ろうと、擦りきれるまで聴いたそうです。今現代の若者は、最初から、世界中の全てのレコードが手元にあります。スマホ1台で出来ることです。
今現代は、情報は最初から手元に存在するので、情報の取捨選択が全ての時代なのです。」
智子@はなんとなく言った。
「そのような時代で、アリさんのような人が物書きをして、後世に遺したいだなんて、それこそ、穴田魔絵図書館しかありませんね。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?