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自閉症と遺伝子検査とこれから生まれる未来の子供の話

以前、私はTwitterでこんなツイートをしました。


現在5歳で発語なしの、中等度知的障害を伴う自閉症の息子。
息子はこれだけ明らかに「普通」とは違うのに、どんな身体的な検査をしても、全く異常が見つからないのです。

そもそも発達障害、自閉症とはそういうものなのかもしれません。
明確にその障害を判定する術は、心理士による「発達検査」しか無い。
でも、自閉症は「脳機能の障害」と言われるにも関わらず、脳を見てもどこにも異常が無いというのは、どういうことなのかなんとなくスッキリしないというか、モヤモヤが残っていました。

別に息子の障害の原因がわかったからといって、息子が定型発達の子のようにグーンと色んなことができるようになるわけではありません。

何かわかったからといって、治療する術も特に無い。
それでも、親として息子の障害の正体を知りたい、息子の事を、もっとよく知りたい・・・そんな思いから、今回、遺伝子検査を受けることになりました。


なぜ遺伝子検査を受けるに至ったのか

そもそも、なんで息子は遺伝子検査を受けることになったのか。
まずはそこからお話したいと思います。

発達障害の子はたくさんいれど、「遺伝子検査やりましたー」なんて子は、そうそういませんよね。
私も、別に自分から「遺伝子検査 病院」などと検索して、積極的に遺伝子検査について調べていたわけではありません。

ただ、息子は1歳の頃から、ある大きな病院に通院していました。
その病院は、名前は伏せさせてもらいますが、その地域では抜群に大きな病院で、医学的な最先端の研究も行っているような巨大病院です。

息子は特に身体的な疾患はありませんが、1歳半検診で明らかな発達遅滞があり、何より頭位(頭の大きさ)がとても大きかったのです。

頭が大きくても特に問題ないことが多いですが、稀に水頭症などの病気が隠れていることもあります。
という事で、地元の小児科の先生の紹介で、脳のMRIを撮るためにその大きな病院に行くことになったのが、今思えば全てのはじまりでした。

当時とったMRIでは、前述の通り、息子の脳に異常はありませんでした。
MRI以外にも、聞こえの検査や代謝の検査もやりましたが、息子の体のどこにも異常はありませんでした。

でも、目の前に明らかな発達の遅れがある、そして、頭位がけっこう大きい事実はそのままです。
今後何らかの異常が出てこないかの経過観察も含めてなのか、なんとなくそのまま3.4か月に一度くらいを4年くらい通い続けています。

と、前置きが長くなりましたが、コロナ騒動に入る少し前に主治医から、「遺伝子検査を受けてみませんか?」と打診されたのです。

何の検査をしても何の異常もなく、よくわからないことが多かった息子の障害ですが、「遺伝子検査をしたらもしかしたら何かわかるかもしれませんよ」というお話でした。

通常やるような検査ではない、研究分野に近い検査だという事ですが、「なんとかうまいことこじつけたら受けられる可能性があります」ということでした。

私もあんまり深く考えず、「じゃあよろしくお願いします」と二つ返事でお願いてみた、という流れです。

ちなみにお金のことは何も言われなかったのですが、いつもの診察と同じく、医療証を出したら支払いは0円でした。


息子が受けた「遺伝子検査」 いったいどういうものだったのか

検査を受けてから1か月ほど経って、最近結果を聞きに行ってきました。

そこで今更ながら、「そういえば遺伝子検査って色々種類があるみたいですけど、今回息子がやった検査ってどういうものなんですか?」と主治医に聞いてみたわけです。

よくよく考えると(考えなくても)、順序が逆。

主治医からは、「お母さん詳しいですね!そうです!いろんな種類があるんですよ!」って言われたんですが、全てTwitterで教えてもらっただけなので全然詳しくない私です。

そこから、主治医の先生は生き生きと興奮気味に、遺伝子検査について話してくれました。

ただ、医学的専門用語が多かったのと、もともと文系でそっち系の話に疎い私は、正直半分くらいしかよくわかりません。
でも、それでもかいくぐって頭に入ってきた半分を、なんとか脳内でがんばってかみ砕き、理解したのは以下のことです。

・今回やったのは、2つの遺伝子検査
・一つは一番オーソドックスな、遺伝子検査の入り口みたいな大きな検査で、23個の染色体の異常を調べる「染色体検査」(ダウン症や〇〇トリソミーなどの大きな染色体異常はこれで発見できる)
・息子の場合、ここで異常がある可能性はとても低いと思われたが、もっと細かい検査をする前にまず受けておくのが順序だからとりあえず受けた
・もっと細かい検査だと、染色体異常などの大きな疾患は発見できないため、異常は無いと思っても受けておく必要があった
・もう一つの検査は、「ソトス症候群」の判別をする検査
(こっちが本命の検査)
・ただ、この検査はソトス症候群かどうかしかわからない

つまり、今回の遺伝子検査のメインの趣旨は、息子が「ソトス症候群」かどうかを調べることだったようです。

ちなみに、息子は自閉症で知的障害だということは知っていましたが、「ソトス症候群」という言葉は初めて知りました。

ただ、強調しておきたいのは、別に主治医が説明不足だったとかそういうわけでは全くありません。

というのも、息子が非常に高い確率でソトス症候群の可能性があるとか、そういうわけでもなかったからです。

遺伝子検査というのは種類もたくさんありますが、研究分野に近い検査なので、検査できる場所や人がすごく限られるそうです。

だからよっぽど「この症例、症候群の可能性が高い、似た症状が出ている」場合でないと、そもそも検査を受けてくれないらしいです。

とりあえず色々受けてみる、はできない検査なのです。

つまり、遺伝子検査の入口に立つとしたら、「何かそれっぽい疾患」がないと受けることはできないので、主治医から見て息子になんかそういう特徴があるかな・・・と目星をつけたのが、ソトス症候群だったようです。

ちなみに、ソトス症候群の特徴としては、頭が大きい、自閉傾向、過成長というものがあり、確かに息子にあてはまります。
症状はかなり個人差があるようですが、息子は今の所、身体上の異常などは無いので、もしそうであってもすぐに治療が必要とか、そういうわけでもないようでした。

ただ、腫瘍ができやすいなどのリスクもあるそうなので、もしそうであれば、今後別の検査も必要だよね、とはなります。

そういうわけで、順序は逆になりましたが、私は息子が受けた検査の詳細を知ることになったのでした。


そして、結果は・・・

単刀直入に言います。
結局、今回の検査でも、息子は異常なしでした。

染色体異常は無いですし、疑われていたソトス症候群でもありませんでした。

これだけ長くひっぱっておいて「違うんかーい!!」とずっこけてしまいそうですが、違いました。

やはり、息子は知的障害を伴う自閉症であるけど、何の検査をしても異常がなく、よくわかんないけど明らかに普通の子とは違う、そこから何も変わることはありません。

ただ、病気でないことは喜ばしい事なので、異常が無い事は、単純に良い結果だったと喜ぶべきことです。


遺伝子検査って具体的にどうやるの?子供への負担は?

次に、気になっている方もいると思うのですが、「遺伝子検査って具体的に何をやるの?」っていうことです。

これについてはもう一言しか言う事がありません。

血を取ります。

それだけです。

その後、研究機関で色々やられているんだと思いますが、私と息子が立ち会うこととしては、息子の採血をする、ただそれだけで終わりでした。

通常のよくある採血なので、子どもは泣きます。
でも、採血の負担がある、それ以上でもそれ以下でもないです。


ちなみに、場合によっては親も採血する検査もあるそうです。

なんで親も採血するかというと、例えば子供にあった遺伝子異常が親にもあったとします。
でも、親の方がその異常で特に何も困っていなかったとしたら、その異常は気にしなくていい異常だということになりますよね。

遺伝子の異常というのは、実はものすごくたくさんあって、そのすべてが問題があって注視しなければいけないものではないのです。

だって、よくよく考えてみてください。

私たちは、みんなそれぞれ違う遺伝子を持っているから、みんな違う特徴を持っているじゃないですか。
髪の色も、肌の色も、体の特徴はすべて、遺伝子の違いですよね。
その中には、非常に珍しい特徴もあるかもしれません。
でもそれを「異常」というかというと、どうなんだろう・・・?となるじゃないですか。

そういう、問題ない異常を除外していって、本当に困る異常を判別することができるから、親の採血を求められることもあるそうです。

もしくは、何か家族性の遺伝を調べたり、親子間のつながりで調べたい検査だったら、親も採血が必要になるかもしれません。

ただ、話が戻りますが、今回の息子の検査ではそれは必要なかったので、私も夫も採血していません。


未来につなぐ思い~遺伝子検査を受ける意義~

今回の遺伝子検査は、よく言えば「染色体異常もなく、ソトス症候群でもないからよかった」ですが、悪く言えば、「結局何も新たにわかったことはない」でした。

でも、小一時間くらいの主治医との会話の中で、非常に印象的なお話がありました。

息子の障害は、発達障害、自閉症、知的障害と言われていますが、それは広い意味での区切りであって、実はその中に、前述したソトス症候群のような、「○○症候群」という疾患名がいっぱいあるそうです。

でも、その細かい症候群は、未だに名前しかわかっていないようなものもあるし、研究が進んでいても、特に治療法もなければ予後もわからないものもあります。
解明されていることが多い症候群もあれば、ほとんど何もわからない症候群もあるのです。

だから、それを知ったところでどうしようもないし、患者にとって大きなメリットがあるわけでもないので、多くの人はそこまで調べません。

病院で積極的に調べられるのは、治療法や予後がはっきりわかっている、もしくはそれがあることで、将来的に高確率で健康的なリスクがある、もしくは既にその症状が出てしまっている、そういう症候群の可能性が高い人だけだと思います。

でも、特に治療もできないし、今後なりやすい病気があるかなどの情報もほとんど解明されていない、とにかくなんだかよくわからない、そういう症候群を見つけてしまったとしても、患者にとってメリットってあんまり無いじゃないですか。

だから、その患者さんに特になんのメリットもない遺伝子検査をやる必要ってあるのかと思う・・・という話を、主治医の先生がしていました。

ただ、そういう一見何のメリットもない遺伝子検査には、「今後同じような症例の子が生まれてきたときに、その子の治療や対処法に貢献できる」という大きな意義があります。

自分の子には間に合わなくても、その疾患の前例を示すことで、ひとつの症例を作ることができます。
症例が0人なのと、10人いるのとでは、全然できること、わかることが違ってきます。

だから、いわば社会貢献に近い話になってきます。


考えてみれば、発達障害だって自閉症だって、数年前、数十年前には、今よりずっと色んな事がわかっていませんでした。

今でも治療法は無いけれど、それでも、昔に比べたら多くのことがわかってきて、薬で抑えられる症状があったり、療育のノウハウもたまってきたり、該当する子の将来の選択肢や社会的な認知も進んできました。

こんな「今」があるのは、まさにこれまで、たくさんの同じようなお子さんたちが、前例を残してくれて来たからです。

だから私も、別に息子には何のメリットがなかったとしても、今後生まれてくる息子と同じような症例の子たちのために何か役に立てるなら、喜んで前例をうちたてていきたいと思います。

とはいえ、私のような一般人にできることは特に無いですし、忙しい医療関係者の方々の手を積極的に煩わせたいわけでもありません。
ただ、今後も何か受けられるような検査があったら、ぜひぜひ受けていきたいので教えてくださいと、主治医にはお伝えしました。

実際、遺伝子検査は他にもめちゃくちゃたくさんあるようなので、受けられそうなものがあったらまた打診しますね、ということで、今回の話は終わりました。


予想以上に長くなってしまいましたが、これが、今回の遺伝子検査の顛末です。

私も医学の専門家ではなく、聞いた話を自身の備忘録もかねて記事にしただけなので、細かく質問頂いたり、そこ違うぞ!と指摘されても対応できません。
どうか、ひとりの障害児の母の体験談として、お読みいただければ幸いです。

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