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#全文公開チャレンジ
全文公開を終えて。夢の見方を忘れた人へ
先週の金曜日、ついに『空をゆく巨人』の最終章(15章)とエピローグが公開され、私の全文公開チャレンジが終わった。これは、私と集英社出版チームの共同の試みだった。
果たしてどれくらいの人が読んでいたのか。どんな感想を持ってくれたのか。またそれについてはゆっくり解析・報告してみたい。その前に。
先日、この全文公開についての週刊誌の方から取材依頼があった。その依頼メールには、「作家が受賞作を発売前に
全文公開『空をゆく巨人』 第七章 キノコ雲のある風景
第16回 開高健ノンフィクション賞受賞作『空をゆく巨人』(集英社)をnoteで全文公開中。今回は第七章です。
第七章 キノコ雲のある風景(ニューヨーク・一九九五年)眠らない街の小さな家族
生い立ちも国籍も職業も異なりながら、お互いに惹かれあい、一緒に宇宙へと光を放った志賀と蔡。もし彼らが宇宙に浮かぶ星だとしたら、志賀はどっしりとした木星、蔡は輝く尾をたなびかせ飛翔するハレー彗星(すいせい)のよ
全文公開『空をゆく巨人』 第六章 時代の物語が始まった
第16回 開高健ノンフィクション賞受賞作『空をゆく巨人』(集英社)をnoteで全文公開中。今回は第六章です。
第六章 時代の物語が始まった(いわき・一九九三年)海に火を走らせる
「志賀さん、藤田さん、せっかくだから、しばらくいわきに住んで作品をつくりたいと思います」
「それ、いいですね。では、家を探しましょう。どんな家に住みたいんですか?」
「山の上にあって、海が見える家がいいです。庭では菊の花
全文公開『空をゆく巨人』 第五章 ふたつの星が出会うとき
第16回 開高健ノンフィクション賞受賞作『空をゆく巨人』(集英社)をnoteで全文公開中。今回は第五章です。
第五章 ふたつの星が出会うとき(東京・一九八六年)ゴムの香りがする国で
「きついゴムと香水の匂いに驚いた」
一九八六年、成田空港に初めて降り立ったときのことを、蔡は三〇年後の雑誌インタビューでそう思い出している。
ゴムと香水か、なるほどなあと感じた。当時の日本といえばゼネコンが日本
全文公開『空をゆく巨人』 第四章 爆発する夢
第16回 開高健ノンフィクション賞受賞作『空をゆく巨人』(集英社)をnoteで全文公開中。今回は第四章です。
第四章 爆発する夢(泉州・一九七八年)自分だけの表現を探して
二〇代となった蔡もまた、ひとつの転機を迎えていた。荒波をゆく人生という船に同乗してくれる女性に出会ったのだ。名は呉紅虹(ウホンホン)。五〇代後半になったいまでも驚くほど美しい人だが、当時の美しさは群を抜いていたらしい。
「ど
全文公開『空をゆく巨人』 第三章 空を飛んで、山小屋で暮らす
第16回 開高健ノンフィクション賞受賞作『空をゆく巨人』(集英社)をnoteで全文公開中。今回は第三章です。
第三章 空を飛んで、山小屋で暮らす(サンフランシスコ・一九七六年)アメリカの空を飛びたい
「おーい、忠平!」
アパートの玄関で満面の笑みを浮かべる友人・志賀の姿を見つけた藤田忠平は、嬉しさで胸がいっぱいになった。「よく来たなあ!」
藤田は、横浜の大学を卒業したあと、一度は外国で生活を
全文公開『空をゆく巨人』 第二章 風水を信じる町に生まれて
第16回 開高健ノンフィクション賞受賞作『空をゆく巨人』(集英社)をnoteで全文公開中。今回は第二章です。
第二章 風水を信じる町に生まれて(泉州・一九五七年)マッチ箱の故郷
物語のもうひとりの主人公、蔡國強が中国福建省で産声(うぶごえ)をあげたのは、志賀の誕生から七年後の一九五七年のことである。志賀が生まれながらの商売人だとしたら、蔡は生まれながらのアーティストだった。
その原点は、小さ
全文公開『空をゆく巨人』 第一章 生まれながらの商売人
第16回 開高健ノンフィクション賞受賞作『空をゆく巨人』(集英社)をnoteで全文公開中。今回は第一章 です。
第一章 生まれながらの商売人(いわき・一九五〇年)ドジョウと手裏剣
子どものころ志賀は、眠りにつく前に父の話を聞くのが楽しみだった。父、忠之の話のバリエーションは多くなく、毎回三つの物語を繰り返し話したそうだ。なかでも、好んでリクエストしたのは、「わらしべ長者」に似た話だ。
「あれは