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恋せよ乙女、さもなくば死ね

 命を賭けた恋、これは比喩ではない。
 この恋を成就させなければ、私は死ぬことになる、らしい。

 きっかけは軽い気持ちだった。詳細は省く。縁結びの神社にお祈りをして、呪われた。

 縁を結ぶ代償らしい。タイムリミットは3ヶ月。その間に想い人と恋仲になれなかったら、私は命を奪われる。

 そうなれば行動する以外ない。翌日、
「青山先輩!」
「ん、どうしたの?」
「今日の帰り、フルーツサンドが美味しいって評判の喫茶店があるんですけど、一緒に寄りませんか!」
「ん、いいよ」
 こうして放課後デートの約束を取り付けた。
 唐突な誘い方だけど、すんなりOKしてくれたのは縁結びの御利益が効いたのだろうか。そうなるといよいよ死の呪いの方も信じなくちゃいけないのだけど。

 西日傾く頃、先輩と私二人肩を並べて校門を出た。
 さて、先輩をデートに誘ったのはいいが、先輩とは部活が同じであること以外繋がりが無い。いっつも同級生と話してるし。
 何から話したらいいのかな。そもそも、女の子同士の恋愛ってアリの人なのだろうか、先輩って。
 結局先輩の方が「一年生の部員たちは仲良くやってる?」とか「もうすぐ夏休みだね」とか話題を振ってくれた。情けない。

 先輩のスマホが鳴った。
「ちょっとごめんね」
 そう言うと先輩は立ち止まって電話に出た。
 この間に話題の準備を。無難なのはファッションの話題? 「その服可愛いですね」いや、今お互いに制服じゃん。じゃあ、突っ込んで恋バナ、「先輩って好きな人とか居ます?」って。いや、いきなりすぎるし。

「ごめん、おまたせ」
 決まらないまま電話は終わってしまった。
 どうしよう、えーと、そうだ。
「誰からですか?」
 そう訊かれると先輩は少し口ごもった。
 そして、「まだ誰にも話してないんだけどね」と前置きしつつ照れくさそうに打ち明けた。

「彼氏から」

 
――なにが縁結びの神様だよ。いきなり手詰まりじゃん。

【続く】

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