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マイナーリーガーの1日(ドミニカ共和国)

MLB、野球において世界最高峰のメジャーから一番遠い場所で、プロ契約して汗を流している若い選手たちの1日を紹介します。なんのことなの?と思われてる方は、以前書いた記事を読んでいただければ理解が深まると思います。

https://note.com/arima6005/n/n76b0bfaf97ae

-5:00-

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起床 。外はまだ真っ暗の中、選手達の一日が始まります。たまに停電で本当に真っ暗の中で準備をすることもあります。各々シャワーを浴びたり、朝食を食堂で取ります。ほとんどの選手はクラブハウスで音楽を聞いてリラックスしています。甘党なドミニカ人は、大量の砂糖が入ったコーヒー片手に、マイペースに1日の準備を始めます。

-6:00 -
この時間帯は選手によってリハビリ、早朝練習、コンディションの確認などを行います。私はここでどの選手が試合に出れるかを見極め、スタッフミーティングでコーチ陣に話をします。意識が高い選手は率先して身体のケアを行います。後々、上のレベルで活躍できる選手はこの時間の重要性を理解しています。

-8:00 -
チームミーティング。アカデミーに関わるすべてのスタッフ、選手が参加します。ここでは主に一日のスケジュールを確認します。他には注意事項やチームの方針などを全体でシェアし、簡単なディスカッションを行う時間でもあります。アカデミー内で問題が起これば、ここでとことん話をします。16歳から22歳の若い選手たちなので、共同生活をしていれば当然問題が起こります。最低限のルールやマナーを守ることの大切さを学び、プロ野球選手としてのメンタルを植え付ける時間でもあります。コーチの喜怒哀楽がもっともみれる時間帯です。1日の目標設定、意識づけがしっかり行われています。

-8:30-

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練習開始。各々のポジションに分かれて練習を行います。シーズン中の場合は軽めの調整で試合に備えます。アウェーの試合がある場合は短めの練習後にバスで移動をします。ほとんどのチームが車で一時間以内の距離にアカデミーを持っているので、移動はそれほど大変ではありません。スクールバスに乗り、みんなで音楽を聴きながら試合先に向かいます。たまにバスが故障したり、悪路でタイヤがパンクして試合に遅れることもあります。何があってもみんな焦らず、その状況を楽しむ臨機応変さには驚かされます。

-10:30-

試合開始 。選手達が最も輝き、真剣になる時間です。エネルギーに満ち溢れた選手たち。試合中の表現豊かな喜怒哀楽は、ラテンの国ならではだと思います。常に全力です。カリブに浮かぶ常夏の島で、アメリカでプレーする日を夢見て熱戦が繰り広げられます。彼らの真剣な目を見る度に若い選手達ですが、色々背負っているプロ野球選手なのだなと実感します。私が一日の中で一番好きな時間です。

-13:00-

試合後のトリートメント。トリートメント後はほとんどの選手が昼食を取り、2時間ほど仮眠を取ります。 一日のほとんどの時間、どこにいても音楽が聞こえてくるのですが、この時間帯のアカデミーは本当に静かです。陽気なラテンの選手達もさすがに試合後は疲れているようです?ある日、ある選手が目をキラキラさせて話をしてくれました。"夢の中で初ホームラン打ったんだ!"って。寝てても野球してるんですね。さすがプロフェッショナル。

-16:00 -

英語の授業。一日の中で選手達が最も苦手な時間です。教室に向かう足取りは重く、頭痛を訴える選手が続出します。頭が痛いから、英語の先生に話をしてくれと私に言ってくる選手たち。けれどもアメリカで成功するためには英語は必要だよねと話をすると、急に頭痛がなくなり、やる気を出す選手が沢山います。英語の先生曰く、そのやる気も15分ほどしか続かないそうですが…。苦手で興味のないことを学ぶのは大変なことですが、選手達は語学力と同時に忍耐力、そして学ぶ姿勢も日々鍛えています。これぞ教育です。

-18:00-

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夕食。そして夕食後、選手達は自由な時間を過ごしています。相変わらず音楽聴いたり、寮の裏でマンゴーを採ったり、中には自主練習を行う選手もいます。ほとんどの選手はアメリカで行われているMLBの試合をテレビ観戦しています。試合が終わると各々の部屋に戻り、家族や友人と電話しているみたいですね。

-21:00 -

就寝。いびきはうるさいですが、さすがに静かです。



このアカデミーで生活を送る上でルールがあります。まず外出する際は施設のマネージャーに許可をもらわないと外出することは出来ません。基本的に日曜日がオフなので、土曜日の夕方から家に帰るドミニカの選手もいます。シーズン中はドミニカ出身の選手以外はほとんど外出することはありません。若い選手たちなので、やりたいことはたくさんあると思います。しかし、そのことに関して愚痴をこぼす選手はいません。それだけ野球にかけている選手が多いのだと思います。そして、怪我をしている選手の外出は、基本的に禁止されています。若い選手達はリハビリ中ストレスが溜まり、外で息抜きをさせても良いのでは?と思われる方がいるかも知れませんが、外で問題が起こり怪我の悪化につながれば、選手生命を奪う可能性があるので、選手を守るためにもこのような決まりになっています。

最後に

ドミニカではプロボクサーかプロ野球選手になれば、生活に困らないという話を良く聞きます。生まれた環境が貧しいため、教育を受けることが出来ない若者が沢山います。そんな彼らにとって”野球”は大きな可能性を秘めたものなのです。特にここのアカデミーで暮らすドミニカ出身の選手のほとんどが恵まれていない地域出身です。若いながらも、プロ野球選手として得た収入で家族を養っています。 日本では16歳の若者が両親や家族のために働くって考えられませんよね。あるドミニカの選手に聞いたことがありました。"家がアカデミーから離れていないのになんで週末に帰らないの?" そしたらその選手はこう答えてくれました。"家で食事を満足に取れないからここに残った方が自分のためになる"と。彼の両親は仕事をしておらず、彼が家庭を支えています。アメリカで野球をするため、そして家族のため、彼らは野球漬けの生活をアカデミーで送っています。ハングリーでありながら、ここで野球を楽しんでいる選手達ばかりです。彼らの底なしの陽気さには驚かされます。いつか海を渡りメジャーリーグで活躍する事を夢見て。

日々の積み重ねが、大きいことを成し遂げる近道なんだなと思います。

では。

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