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【読書メモ・感想】津川 友介 『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事 』

 人間は食べたものでできている。何を食べ、何を食べないかは全ての人が日々実行している小さな「選択」である。今日のお昼何を食べようかと考えているとき、夕ごはんの献立を考えているとき、何を判断材料にしているだろうか。私たちは、それこそ数時間ごとに、何を口にするのか、選択を迫られ続けている。

 わたしは一般的に見れば健康に気を使っているだと思う。タバコは吸わないし、最近は週末にランニングを始めた。少しだが筋トレも毎日やっていたりする。

 一方で酒は飲むときは結構飲むし、ラーメンは大好き。コンビニの甘い甘い菓子パンをお供に熱いブラックコーヒーを飲むのなんか至福の時だ。なので、食の健康に関しては割とガバガバだったりする。詰まるところ「ナンチャッテ健康志向」に過ぎない。

 ただそれでも食の健康に全く興味がないわけではなく、マーガリンは身体に悪いとか、豆苗はほうれん草とかに比べて栄養価が高いとか、むしろそういう知識には敏感なので、この本はなかなか興味深かった。

本の概要

 本書は科学的根拠(エビデンス)を重視した食に関する健康本である。世界中の実験や分析結果をベースに「何を食べたら体に良いのか」、「何は体に悪いのか」を具体的に教えてくれる。

 ちなみに本書では「脳卒中、心筋梗塞、がんなどの病気を減らし健康を維持したまま長生きできる確率を上げることができる食事」を体に良い食事と定義している。

著者の紹介

 著者は津川友介さん。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)助教授で
医療政策学者、医師でもあるらしい。2017年に出版した『「原因と結果」の経済学』という本がベストセラーになっていて、この本を見かけたことがある人は多いのではないだろうか。

 わたしは『「原因と結果」の経済学』を読んでないのだが、因果推論というものについて説明しているらしく、評判もかなりよい。機会がぜひあれば読んでみたいところ。

本書を一言でまとめると 

 今回は本書の冒頭で結論をまとめてくれているので、それをそのまま引用したいと思う。乱暴な言い方だが本書の主張はこの一文に詰まっている。他の部分は各章それぞれの食品について、より詳しく掘り下げられいるわけだ。

 多くの信頼できる研究によって本当に健康に良い(=脳卒中、心筋梗塞、がんなどのリスクを下げる)と現在考えられている食品は、 ① 魚、 ② 野菜と果物(フルーツジュース、じゃがいもは含まない)、 ③ 茶色い炭水化物 、④ オリーブオイル、 ⑤ ナッツ類の 5 つである。逆に、健康に悪いと考えられているのは、 ① 赤い肉(牛肉や豚肉のこと。鶏肉は含まない。ハムやソーセージなどの加工肉は特に体に悪い)、 ② 白い炭水化物、 ③ バターなどの飽和脂肪酸の 3 つである。

読書メモ

 以下は引用を交えつつ、気になった箇所をメモ。

食品に含まれる「成分」に惑わされるな

 これらの知見からわかることは、緑黄色野菜の摂取は病気のリスクを下げるものの、そこから抽出された β カロテンという成分を摂取すると健康になるどころか、むしろ病気のリスクを上げてしまう可能性があるということである。

 緑黄色野菜は体に良いが、含まれているβ カロテンだけ摂取しても意味がない。(というか体に悪い)これはβ カロテンに限らず、トマトに含まれているリコピンとかもそうらしく、リコピン単体が体に良いというエビデンスはない。

 この話は本書の中でも結構印象的だった。結局のところ、テレビや本などで成分が強調されるのは、消費者の興味関心を引くためのマーケティングによるところが大きいそうだ。

 成分単体に固執するのではなく、食品丸ごと食べることが重要、というのは頭に留めておきたいですな。

 日本食も体に良いというわけではない

 日本食が体に良いと思っている人は多いだろう。しかし、 実は日本食が健康に良いというエビデンスは弱い。確かに、日本食は赤い肉やバターなどの体に悪い油をあまり含まないという点では健康的かもしれないが、一方で、塩分と白い炭水化物の量は欧米の食事よりもかなり多い。

 これもなかなか衝撃だった。日本人って日本食のおかげで長寿の国であるイメージが強かったが、そうではないらしい。事実、塩分摂取量でいうとアメリカを抑えて韓国についで世界2位。結構塩食べてる。

グルテンフリーが体に良いというエビデンスはない

 結論から先に言うと、 グルテンフリーで健康になれるというエビデンスはない。セリアック病という珍しい病気を持っていないのなら、グルテンフリーにする健康上のメリットはないと今のところ考えられている。

 これもエビデンスに基づくとわかる驚きの事実。グルテンフリーはグルテンを摂取すると体調を崩すセリアック病という病気の人向けに開発されたものらしく、一般的な人への効用はないそうだ。ちなみに日本人のセリアック病の罹患率は0.05%とかなり低い。

 にもかかわらず、なんとなく「グルテンフリーって健康に良さそう」というイメージだけで一時期すごい流行っていた気がする。いかに我々が曖昧なイメージだけで動いているのか改めてハッとさせられた。

感想

 健康は個人の経験談で語られることが多いテーマなので、エビデンスに基づくというのは安心して読めるし、好感が持てる。そして、自分たちが日頃いかに根拠薄弱な情報に踊らされ、ボーっと生きてたかを思い知った。

 ただ、いくら体に良くないというエビデンスがあるからと言って、わたしは赤い肉を食べることを止めないだろうし、白いご飯も食べるだろう。実際今日もふるさと納税のお返し品で届いた黒毛和牛を、熱々の白米とともにペロリといただいてしまった。

 科学的に悪いとわかっていても、食べたいものは食べたいし、旨いものは旨いのだ。健康も大事であるが、そもそもの人生の幸せとなる要素を減らしては本末転倒だしね。

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