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【都市の経済構造を考えてみる!】(第26回)「4つの力でみえてきたこと!(盛岡経済圏)」

前回は、産業連関表から総固定資本形成と資本減耗引当の部分について、産業部門別に眺めてみまして、産業連関表を一通り眺めてみることを終えました。

・(第25回)「総固定資本形成と資本減耗引当もみてみた!(盛岡経済圏)」
https://note.com/areaia/n/nd6ed0bca49b7

今回からは、何回かにわけまして、これまでのところで、わかったこと、わからないことなど、一旦、まとめてみたいと思っております。

      

◯ 域際収支 

ここまでのところ、大きな論点としまして、域際収支を念頭においておりました。産業連関表から、「稼ぐ力」としての「移輸出」と、「外の力」としての「移輸入」の差額がでます。域際収支の大きな要素ですよね。盛岡経済圏の場合、0.6兆円ほどの移輸入超過となっていました。

4つの力

そして、「支える力」をみていきますと、健康保険・介護保険・年金保険といった社会保険における給付と負担の差額や、税金の国税負担と地方交付税給付の差額についてもある程度みえてきました。盛岡経済圏の場合、1.7兆円ほどの給付超過という数字がでてきました。個人的には、この部分が、今回の一番の発見でした。

支える力の源泉

産業部門の移輸入超過を遥かに上回る規模で、「支える力」の源泉が域外から給付されており、これで、1.0兆円ほどの域際収入超過の状態です。もちろん、「稼ぐ力」は2.2兆円ありますから、この「稼ぐ力」と「支える力」は域際収入の両輪といった規模感です。

なお、ここまでのところ、統計では確認できておりませんが、この域際収入超過1.0兆円分も、域内で溜め込んでいるというよりは、産業連関表にでてこない項目で、全額ではないにしても、相当分が域外に流出している可能性があるかな、と思っています。このあたりは、今後の宿題テーマのひとつとしておきます。

    

◯ 都市圏需要

都市圏内の需要(8.4兆円)においては、内生部門取引(3.5兆円)、民間支出(3.3兆円)、政府支出(1.6兆円)の3つで構成されていました。この都市圏需要に対して、「回す力」(4.0兆円)、「外の力」(2.8兆円)、「支える力」(1.6兆円)が財やサービスを供給していました。

個人的には、都市圏需要の3分の1くらいが、「外の力」に供給されている、というのが、想像よりも大きく驚きでもありました。

      

◯ 雇用

雇用者所得や従業者総数というあたりも確認してみました。産業部門別では、「支える力」や「回す力」の存在感が大きいところでした。そして、「支える力」は、域際収支での存在感に加えて、雇用者所得総額や従業者総数といった面においては、「稼ぐ力」を遥かにしのぐ規模となっていました。

付加価値

       

◯ 投資 → 事業 → 回収 → 再投資 の循環

固定資産形成の部分や資本減耗引当について、みてみましたが、これまでみてきた情報だけでは、投資して事業して回収して再投資する、という循環については、産業連関表からはわかりにくい、ことだけがわかりました。

投資

もしかしたら、産業部門別の固定資産形成と資本減耗引当だけでも、時系列で長期的にみてみるとなにか感じられることやわかることがあるかもしれません。

とはいえ、総固定資本形成の半分弱は政府によるもので、また、その6割強を建設業が受けているというあたりは、都市における投資主体としての政府の存在感と、都市の投資は建設部門が大きな役割を果たしている、というあたりを数字で感じることができました。

この建設部門が創り上げていくものが、どうすればもっと「稼ぐ力」、「回す力」、「支える力」の増強につながるのか、といったあたりも、今後の宿題としたいと思います。

     

◯ 「稼ぐ力」 と 「外の力」

域際収支を考える上で、「稼ぐ力」を強くして、「外の力」を少なくする、はひとつの理想です。が、「稼ぐ力」と「外の力」は、それぞれを構成する産業部門も大きく異なり、直接的な競争関係にはありませんでした。なので、「稼ぐ力」を強くしても、「外の力」は必ずしも少なくなりませんし、逆に、「外の力」を少なくしても、「稼ぐ力」は強くなりません。

今後、他都市の統計でも確認していきたいと思っておりますが、一般的には、「稼ぐ力」が大きければ「外の力」も増えていくと思われます。

現代都市において、「外の力」をゼロにすることは不可能であり、また、誰も望んでいないところかと思います。ある都市圏内だけで、あらゆる財やサービスを生産することは不可能です。気候的に、温かい地域で、りんごは作れませんし、寒い地域で、バナナも取れません。海のない都市で、カニは採れませんし、大都市でお米を大量に生産することも大変です。りんごもバナナもカニもお米も、食べたいですよね。他の都市に旅行にも行きたいですし、車も必要ですし、スマホも使いたいです。

だとしますと、「稼ぐ力」と「外の力」の関係性においては、「稼ぐ力」を強くし、「外の力」を減らして、域外収支を改善していこー!というよりも、「外の力」を存分に活用していくために、それに見合う規模の「稼ぐ力」を保持しなくてはならない、という考え方も成り立つように思いました。個人的には、この「外の力」から考えてみれたことが、もうひとつの大きな発見でした。

「稼ぐ力」「回す力」「支える力」といった都市圏内のそれぞれの産業部門においても、「外の力」が必要なことは多いでしょう。病院も、世界中から、医療機器や薬品を仕入れてくる必要がありますし、工場も、世界中から、原料や部品を仕入れてくる必要がありますし、レストランも、世界中から、肉や野菜や厨房機器を調達してくる必要があります。

古より、豊かな都市、というのは、総じて、交易が盛んな都市でもありました。都市を豊かにする大きな要素として、交易からの「外の力」の活用にあったのではないかな、とも思っております。このあたりは、また後日、考えてみたいと思っております。

     

◯ 「外の力」 と 「回す力」

そして、その「外の力」は、都市圏内の需要に対しているという点で、「回す力」(と「支える力」)と競争しています。おやつを買う場合、昔ながらの駄菓子屋さんで買うのか、全国チェーンのコンビニで買うのか、病院で手術してもらうのに、地元の病院でするのか、別の都市の病院でやるのか、といった競争です。もちろん、他の都市圏の野菜と地元の野菜も、地元での消費という面で競争しています。

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