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一級建築士設計製図試験対策!まずは自己の問題点を切り分ける

1.試験を通して試されること

一級建築士設計製図試験の合格基準等によれば、一級建築士として備えるべき「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」を有する、と判断されることが合格の条件になります。

また、空間構成、建築計画、構造計画、設備計画などが採点のポイントに掲げられ、この中で「図面、計画の要点等の表現・伝達」も評価の対象であると明示されています。

『大学入試改革の状況について』(令和2年1月文部科学省)においても、学力の3要素として、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」の3つが記されています。

学校教育法第30条第2項には、「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力判断力表現力その他の能力をはぐくみ」とあり、小学校教育においても、同じキーワードが掲げられています。

すでに述べた通り、一級建築士設計製図試験の合格基準等の中にも、「知識・技能」「表現力」というキーワードは見て取れますし、当然……、試験ですから「思考力・判断力」は試されることになります。

2.不合格を自己分析すること

一級建築士設計製図試験において、合格に至らなかったということは、試験で試された部分のうち、「足りていない何か」があったはずで、その「何か」を明らかにした上で、補う努力をしていかないと、適切な対策に結びついていかないと言えます。

現状の自己分析ができていない状態で、図面と計画の要点等の答案を6時間30分でひたすら仕上げる自分の姿を想像してみて下さい。これを漠然と繰り返していくことで、「足りていない何か」にスポットライトを当て、ここを補う対策に繋がっていくのか?……よくよく考えてみる必要があると思います。

「不合格」といっても、一括りにしていいものではありません。下図の通り、合格レベルに「足りている部分」「足りていない部分」とがあり、ここは人によって違いが出てくるところだと思います。

すでに「足りている部分」に磨きをかける努力をすることは無駄とは言えません……が、しかし、無自覚のままこれに偏り過ぎて、「足りていない部分」を補うことができなければ、不合格を繰り返す可能性は高いと考えます。課題の数をこなすことだけを目標に、ひたすら取り組むことに走ってしまうと、陥りやすい偏りではないでしょうか。

試験対策を有効なものにするためには、知識や技能、意識や考え方など……「足りていない部分」を、はじめに明らかにする必要があります。そして、ここを補う目的で、課題に取り組んでいくことが、実のある努力と言えるのではないかと考えます。

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3.自己の問題点を切り分けること

「足りていない部分」を明らかにしていくためには、自己の問題点の分析が必要です。問題点の切り分けをすることによって、それぞれに必要な「補うこと」が、より把握しやすくなるものと考えます。

そこで、「知ること」の中にある問題点「伝えること」の中にある問題点「考えること」の中にある問題点の3つに切り分けて、考察してみます。

①「知ること」の中にある問題点
端的な言い方をするなら、知識不足ということになると思います。
建築計画、構造計画、設備計画などを進めていく場合、要求室の機能や法令に関すること、耐震、空調設備などの技術的なことについて、基本的なことを正しく知っておくことが重要になってきます。
基本的な知識に足りていない部分があるのなら、読むこと、聴くこと、調べることなどから、「知ること」を補っていかなければなりません。
丸暗記に留まることなく、基本をしっかり理解する、……これが「知ること」です。
空調方式など、自分で説明がつけられないまま、何となく図面に、PS、DS、設備スペースを書き込んでいるとしたら、こういったことが、「知ること」の足りていない部分だと言えるでしょう。

②「伝えること」の中にある問題点
図面や計画の要点等の答案の表現に、不備や稚拙さ・粗雑さがあっては、採点者に誤解を与えず真意を伝えることが難しくなります。
解答していくプロセスにおいて、自分の行った思考判断を、採点者に伝える手段が答案ということになります。
「伝えること」の中にある問題点は、読むこと、聴くこと、調べることなどによって補えるものではなく、ここは「知ること」と分けて、問題点を把握しておく必要があると思っています。
自分の行った思考判断を、自分本位に吐き出すのではなく、相手にわかりやすいように工夫して差し出す、……これが「伝えること」になるのだろうと考えます。
相手のある「伝えること」を評価する場合には、客観性が重要になります。そして、客観性を磨くためには、やはり相手側の視点が必要になってきます。答案の添削など他者からの指摘を通して、「伝えること」の中に潜む問題点を明らかにしていくやり方も有効です。
自分本位に陥ることなく、伝える相手のあることとして、足りていない部分を補う工夫をしていくことが大切です。

③「考えること」の中にある問題点
学力の3要素の中に、思考力・判断力が含まれていますが、思考し判断することが、「考えること」になると思っています。
解答していくプロセスにおいて、習得した知識・技能のうち、何を活用するかの取捨選択の判断、何と何を組み合わせることがベターな選択になるのかの判断など、……こうしてケースバイケースに応じた対応をしていくことが「考えること」になります。
採点のポイントとなる空間構成の一つにある、ゾーニング・動線計画の基本を理解しておくことは、「知ること」に当たると思います。どんな課題でも、常に理想的な基本形に持ち込んでエスキースが展開できればいいのですが、そう甘くはないのが設計製図の試験です。
課題の難易度が高く、ゾーニング・動線計画の基本が崩れそうになったとき、許容できる範囲の見極め、……すなわち課題建築物の用途に必要な機能が成立しているのか、いないのか?の判断は、「考えること」に当たると言えます。
また、許容できる範囲の見極めを、明確な根拠をもってしているなら、そのことを、答案中に補足して採点者に伝える必要もあり、こうした補足は「伝えること」として大切なことになります。
「知ること」から「伝えること」まで、これらを繋ぐ総括的な要素が「考えること」であると言えます。
解答していくプロセスにおける取捨選択の判断、ゾーニング・動線計画などの許容範囲の判断、補足して「伝えること」の判断など、……「考えること」もいくつかに分類できるはずです。
それぞれの中にある足りていない部分を明らかにして、そこを補う目的意識をもちながら、課題に取り組むことが、実のある努力に繋がっていくものと考えます。

*以下の記事も参考にしてみて下さい。


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