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令和3年一級建築士設計製図試験|建築基準法が求める採光が試される集合住宅の敷地の周辺条件

今回の課題名公表時の唯一の(注)書きは以下になり、昨年はなかったのに、今年はあるのが「採光」ということになります。

(注)建築基準法令等に適合した建築物の計画(採光、建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)とする。

1.窓の採光に有効な部分の面積

住宅の居室の場合、窓の採光に有効な部分の面積を、居室の床面積に対し1/7以上確保して、建築基準法第28条第1項に適合させる義務が生じます。

採光に有効な部分の面積は、窓の面積に採光補正係数を乗じて算定しますので、施行令第20条第1項、第2項をよく理解し、注意しながら計画を進める習慣が重要になってきます。

2.採光補正係数を左右する敷地の周辺条件

採光補正係数については、当塾ホームページで公開の下記『webサポート資料』に示す通り、敷地の周辺が、道路であるのか、隣地であるのか、または公園であるのかによって、水平距離Dのとり方が異なり、算定結果が違ってきます。

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建築基準法が求める採光は、上の算定式によって採光補正係数を求めますので、隣地境界線等からの水平距離に左右されるものであり、東西南北、方位によって違ってくるものではありません。

直射日光による日照条件は、北側と南側とでは大きく異なりますが、天空光による採光は方位にかかわらずとなりますので、この点を混同せず、よく整理しておく必要があります。

3.試される敷地の周辺条件:ケースH18

平成18年『市街地に建つ診療所等のある集合住宅(地下1階、地上5階建)』の設計条件において、「住戸については、採光日照、通風等に配慮した計画とする。」とあります。

敷地の周辺条件は下記のようになっており、商業施設側が敷地の長辺、道路(幅員15m)側が短辺になります。短辺側に配置できる住戸数は限られますので、南側からの日照を確保しようとすれば、住戸のバルコニー面を商業施設が建つ南東側にも配置せざるを得ないケースも出てくることになります。

・北東側-道路(幅員12m)を挟んで緑豊かな公園がある。
・南東側-商業施設(地上3階建)がある。
・南西側-道路(幅員15m)を挟んで商業施設がある。
・北西側-集合住宅(地上5階建)がある。

日照が求められていますので、建築基準法が求める採光に有利な道路や公園に向けて住戸のバルコニー面を設ければいいという、単純なことにはなりません。

注意しなければならないのが、建築基準法が求める採光に適合させるために、商業施設が建つ南東側隣地境界線からの水平距離を確保することになります。

4.試される敷地の周辺条件:ケースR2

令和2年『高齢者介護施設』の敷地の周辺条件のようなケースになる可能性もあると考えます。居住施設でありながら、南側が公園であるといった好条件にしなかったのは特徴的なところでした。公園に隣接する敷地は、そうざらにあるものではありませんので、ある意味、現実的な周辺条件であったとも言えます。

・北側-道路(幅員8m)を挟んで、住宅地がある。
・東側-住宅地がある。
・南側-住宅地がある。
・⻄側-道路(幅員4m)を挟んで、認定こども園がある。

上記の敷地に、集合住宅を計画する想定で考えてみます。
敷地の東西方向が長辺、南北方向が短辺になりますが、設計条件に「日照」という言葉があると、北向き住戸を選択することにはブレーキがかかると思います。

住戸のバルコニー面を東側と西側に配置するのがいいのか?、南側に配置して採光上必要な水平距離が確保できても隣地の住宅によって生じる日影は日照に問題を生じさせないか?、プライバシーの干渉は生じないか?……など
南側が公園であったら迷うことのないところで悩まされます。
こうして悩まされるところも、試験の難易度を左右する要素の一つになってくると言えます。

5.試される敷地の周辺条件:ケースH13

平成13年『集合住宅と店舗からなる複合施設(3階建)』の敷地の周辺条件は下記の通りで、設計条件において日照に配慮することを求めつつ、「住戸は必ずしも南向きとしなくてもよい。」とあります。

・北側-道路(幅員15m)を挟んで、商店街及び駅前商店街がある。
・東側-集合住宅(4階建)がある。
・南側-道路(幅員8m)を挟んで、コミュニティセンターがある。
・西側-集合住宅(4階建)がある。

全住戸を南向きに配置できないとなったとき、東向き、西向きを視野におき計画を進めていく必要が出てきます。

平成18年と同様、隣地に建つ集合住宅に向けて、住戸を配置することになったとき、建築基準法令への不適合が生じないように、まず採光上必要な水平距離を確保し、その上で日照やプライバシーの干渉に配慮する必要があると思います。

日照については、敷地の周辺条件上、建築基準法が求める採光に有利な北向き住戸と安易にせず、東向き又は西向き住戸として、建築基準法令に適合させる採光への配慮が見られれば、これをもって評価されていいのではないかと思います。


以下の記事にある「3.採光補正係数が0になる採光関係⽐率に注意」は、今回の集合住宅にも当てはまりますので、参考にしてみて下さい。


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