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一級建築士設計製図試験フォルダ

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出題のあり方や問題文の読み取り方、課題建築物の考察など
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#一級建築士製図試験

令和5年一級建築士設計製図試験|「図書館」本試験の講評と解答例の閲覧

令和5年一級建築士設計製図試験|「図書館」本試験の講評と解答例の閲覧


1.計「自習室」の「計100㎡以上」と「ワークルーム」の「100㎡以上」、違いは「計」にありますが、そもそも「計」が意図することは何なのでしょうか?……

令和元年「美術館の分館」では、「創作アトリエ」に専用の「準備室」及び「倉庫」を設けるとし「計150㎡以上」と要求しています。平成29年「小規模なリゾートホテル」でも、「大浴場」について、男性用、女性用として、それぞれ下足箱、脱衣室(洗面コーナ

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令和5年一級建築士設計製図試験|身近なようで距離を感じる『図書館』という課題名

令和5年一級建築士設計製図試験|身近なようで距離を感じる『図書館』という課題名


やはり今年も、ざっくり用途だけを示し、含みを持たせる課題名の公表となりました。

平成24年「地域図書館(段床形式の小ホールのある施設である。)」以来、11年ぶりの図書館の出題です。
平成元年以降の35年間を見てみますと、他に、平成4年「アトリウムと小ホールをもつ地域図書館」と平成9年「緑豊かな吹抜け空間のある地域図書館」があり、今年が4回目の「図書館」ということになります。
ちなみに、令和元年

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一級建築士設計製図試験における要求室の床面積の不適合……「以上」は「異常」にあらず

一級建築士設計製図試験における要求室の床面積の不適合……「以上」は「異常」にあらず

令和元年以降、合格発表時に「受験者の答案の解答状況」が公表されてきています。この中にある「設計条件に関する基礎的な不適合」のうち、「要求している主要な室等の床面積の不適合」に着目してみようと思います。

「不適合」という以上、採点する際に「適合」と判断するための基準があるはずですので、標準解答例からそれを探ってみます。ただし、標準解答例は全てが模範的であるという前提のものではないと思われますので、

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一級建築士設計製図試験|エスキース等のやり方・考え方の違いとAIの学習方法

一級建築士設計製図試験|エスキース等のやり方・考え方の違いとAIの学習方法

チャットGPTの勢いにあやかるわけではありませんが、一級建築士設計製図試験対策における学習のあり方を、AIの学習方法に照らして考察してみようと思います。AI用語の用法の的確性については、多少ご容赦下さい。

1.AIの教師あり学習と教師なし学習エスキース等の「やり方」(問題と解答方法)を覚えていくことはAIの「教師あり学習」に、エスキース等における「考え方」を確立していくことは「教師なし学習」に、

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一級建築士学科試験と設計製図試験から見た2方向避難における家具の配置と歩行距離の測り方

一級建築士学科試験と設計製図試験から見た2方向避難における家具の配置と歩行距離の測り方

合格発表時に公表されている通り、設計製図試験において「法令への重大な不適合」と判断されかねないのが、「直通階段に至る重複区間の長さ」や「避難経路」になりますので、歩行距離に関する考え方をよく理解しておくことは重要です。
勿論、令和3年に出題されていますので、学科試験においてもです。

まず、令和3年一級建築士学科試験での出題になりますが、以下の記述を「最も不適当なもの」としています。

次に、「見

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一級建築士設計製図試験で求める「延焼ライン」記入の変遷と基礎的な不適合

一級建築士設計製図試験で求める「延焼ライン」記入の変遷と基礎的な不適合

建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の位置(延焼ライン)と防火設備の記入を求めるようになったのは、平成30年の本試験からになります。

5年目となる令和4年、「延焼ライン」の記入に対する記載内容を、言葉を濁すことなく改めてきましたので、与条件で求めてきたことの変遷を整理しておきます。

また、延焼ラインが未記入であれば、明らかに与条件に反することになりますので、採点上、どう扱われるのか考察

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令和4年一級建築士設計製図試験|「事務所ビル」本試験の講評と解答例の閲覧

令和4年一級建築士設計製図試験|「事務所ビル」本試験の講評と解答例の閲覧

1.設計の自由度を高める出題⎯ 試験内容の見直し時の言葉その①⎯平成21年試験内容の見直し時の公表内容にあった「設計の自由度を高める出題」という言葉に、改めて注目してみます。昨年は例外になりますが、平成23年以降、構造種別は全て「自由」として出題されてきています。「自由」とは言いつつ、無柱空間が求められた平成22年の標準解答例①の構造種別が「鉄筋コンクリート造(一部プレストレストコンクリート梁)」

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令和4年一級建築士設計製図試験|事務所ビルの計画で、法令への不適合を炙り出す用途地域の指定は?

令和4年一級建築士設計製図試験|事務所ビルの計画で、法令への不適合を炙り出す用途地域の指定は?

設計条件における用途地域の指定により、建築できる用途が制限され、道路斜線の勾配や指定建蔽率などが決まってきます。
試験問題とはいえ、建築基準法上、事務所ビルが建築できない用途地域を指定してくることはありえないはずです。(仮にあったとしたら、計画すること自体が法第48条への不適合となりますので、白紙の答案のみが正解などということになりかねません。)

第一種住居地域の指定が、平成30年の試験以降、4

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令和4年一級建築士設計製図試験|掴みどころがないようでありそうな『事務所ビル』

令和4年一級建築士設計製図試験|掴みどころがないようでありそうな『事務所ビル』

ポンっと単純に用途だけを示す課題名の公表の仕方は、今年が3年目になりますが、今しばらく続くものと予想します。
「今しばらく」というのは、設計課題になり得る用途が無限にあるわけではないので、今の用途だけを示す路線が続けられる限りはという意味で使っています。

平成21年『貸事務所ビル(1階に展示用の貸スペース、基準階に一般事務用の貸スペースを計画する。 )』は、公表時、階数こそ不明でしたが、要求図書

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令和3年一級建築士設計製図試験|建築基準法が求める採光が試される集合住宅の敷地の周辺条件

令和3年一級建築士設計製図試験|建築基準法が求める採光が試される集合住宅の敷地の周辺条件

今回の課題名公表時の唯一の(注)書きは以下になり、昨年はなかったのに、今年はあるのが「採光」ということになります。

(注)建築基準法令等に適合した建築物の計画(採光、建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)とする。

1.窓の採光に有効な部分の面積住宅の居室の場合、窓の採光に有効な部分の面積を、居室の床面積に対し1/7以上確保して、建築基準法第28条第1項に適

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令和3年一級建築士設計製図試験|ざっくり感ありの『集合住宅』という課題名

令和3年一級建築士設計製図試験|ざっくり感ありの『集合住宅』という課題名

令和3年一級建築士設計製図試験の課題名が『集合住宅』……とだけ、公表されました。

これまで課題名の公表時には、(注)書きにおいて、「温水プールのある」だとか「屋上庭園のある」だとか……、課題の用途に対して付加する条件が事前に明示されていました。これによって課題の想定が絞りやすくなり、受験生にとっても対策の負担が軽減される面もあったと思います。

しかし……昨年から、対策の的を絞りにくくしている傾

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一級建築士設計製図試験|設計の自由度と重大な不適合との関係

一級建築士設計製図試験|設計の自由度と重大な不適合との関係

平成21年試験内容の見直しから、ちょうど10年が経過しようとしたところで、問題用紙の大きさや紙面構成に試行錯誤が見られるようになりました。出題の仕方だけにとどまらず、採点の仕方にまで及んだ見直しが、再び行われている感があります。

「故きをたずねて新しきを知る」--(令和2年の設備の設計条件に見られるように)--平成20年以前の旧試験ではどう出題していたか?……そんな点にも注目しながら、再び見直し

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一級建築士設計製図試験の問題文を頑なに直訳し過ぎると、どこかぎこちない空間構成になる件

一級建築士設計製図試験の問題文を頑なに直訳し過ぎると、どこかぎこちない空間構成になる件

英文を頑なに直訳し過ぎると、どこかぎこちない日本語の文章表現になりがちです。

設計製図試験のプラン全体が、どこかぎこちない空間構成になるのは、問題文を頑なに直訳し過ぎた結果ではないのか……との観点から以下考察してみます。

1.設計製図試験における問題文の翻訳英文などを日本語に翻訳する場合、直訳と意訳とがあり、『広辞苑』によれば、それぞれ以下の意味とされています。

・翻訳
 ある言語で表現され

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一級建築士設計製図試験|防火設備の記入と延焼ラインの図示に求めること

一級建築士設計製図試験|防火設備の記入と延焼ラインの図示に求めること

令和2年10月15日公開の下記『⼀級建築⼠設計製図試験において延焼ラインを図⽰すべき場合を読解』を追補する記事になります。

1.標準解答例で示された二つの考え方標準解答例において、今後の学習の参考として、令和元年には《「延焼のおそれのある部分」等の一つの考え方》、令和2年には《法令に関する内容の一部》が示されており、「延焼のおそれのある部分」については、以下のような記載があります。

<令和元年

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