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一級建築士設計製図試験フォルダ

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出題のあり方や問題文の読み取り方、課題建築物の考察など
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#キャリア教育

令和5年一級建築士設計製図試験|「図書館」本試験の講評と解答例の閲覧

令和5年一級建築士設計製図試験|「図書館」本試験の講評と解答例の閲覧


1.計「自習室」の「計100㎡以上」と「ワークルーム」の「100㎡以上」、違いは「計」にありますが、そもそも「計」が意図することは何なのでしょうか?……

令和元年「美術館の分館」では、「創作アトリエ」に専用の「準備室」及び「倉庫」を設けるとし「計150㎡以上」と要求しています。平成29年「小規模なリゾートホテル」でも、「大浴場」について、男性用、女性用として、それぞれ下足箱、脱衣室(洗面コーナ

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一級建築士設計製図試験における要求室の床面積の不適合……「以上」は「異常」にあらず

一級建築士設計製図試験における要求室の床面積の不適合……「以上」は「異常」にあらず

令和元年以降、合格発表時に「受験者の答案の解答状況」が公表されてきています。この中にある「設計条件に関する基礎的な不適合」のうち、「要求している主要な室等の床面積の不適合」に着目してみようと思います。

「不適合」という以上、採点する際に「適合」と判断するための基準があるはずですので、標準解答例からそれを探ってみます。ただし、標準解答例は全てが模範的であるという前提のものではないと思われますので、

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一級建築士設計製図試験|エスキース等のやり方・考え方の違いとAIの学習方法

一級建築士設計製図試験|エスキース等のやり方・考え方の違いとAIの学習方法

チャットGPTの勢いにあやかるわけではありませんが、一級建築士設計製図試験対策における学習のあり方を、AIの学習方法に照らして考察してみようと思います。AI用語の用法の的確性については、多少ご容赦下さい。

1.AIの教師あり学習と教師なし学習エスキース等の「やり方」(問題と解答方法)を覚えていくことはAIの「教師あり学習」に、エスキース等における「考え方」を確立していくことは「教師なし学習」に、

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一級建築士設計製図試験で求める「延焼ライン」記入の変遷と基礎的な不適合

一級建築士設計製図試験で求める「延焼ライン」記入の変遷と基礎的な不適合

建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の位置(延焼ライン)と防火設備の記入を求めるようになったのは、平成30年の本試験からになります。

5年目となる令和4年、「延焼ライン」の記入に対する記載内容を、言葉を濁すことなく改めてきましたので、与条件で求めてきたことの変遷を整理しておきます。

また、延焼ラインが未記入であれば、明らかに与条件に反することになりますので、採点上、どう扱われるのか考察

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令和4年一級建築士設計製図試験|「事務所ビル」本試験の講評と解答例の閲覧

令和4年一級建築士設計製図試験|「事務所ビル」本試験の講評と解答例の閲覧

1.設計の自由度を高める出題⎯ 試験内容の見直し時の言葉その①⎯平成21年試験内容の見直し時の公表内容にあった「設計の自由度を高める出題」という言葉に、改めて注目してみます。昨年は例外になりますが、平成23年以降、構造種別は全て「自由」として出題されてきています。「自由」とは言いつつ、無柱空間が求められた平成22年の標準解答例①の構造種別が「鉄筋コンクリート造(一部プレストレストコンクリート梁)」

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一級建築士学科試験で学ぶ「涼」をもたらす「潜熱」

一級建築士学科試験で学ぶ「涼」をもたらす「潜熱」

1.温度が変化しない潜熱の働き ヤカンに水を入れてお湯を沸かすとき、コンロの炎によって熱が加えられると、段々水の温度が上がっていくことは、想像しやすいと思います。温度計をさしておけば、熱の供給に比例して、温度計の値が上がっていくことになります。
 水、お湯とも温度が違うだけで「液体」です。このように、「液体」から「気体」へと状態変化することなく物質の温度を上げたり下げたりする熱を「顕熱」といいます

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令和3年一級建築士設計製図試験|建築基準法が求める採光が試される集合住宅の敷地の周辺条件

令和3年一級建築士設計製図試験|建築基準法が求める採光が試される集合住宅の敷地の周辺条件

今回の課題名公表時の唯一の(注)書きは以下になり、昨年はなかったのに、今年はあるのが「採光」ということになります。

(注)建築基準法令等に適合した建築物の計画(採光、建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)とする。

1.窓の採光に有効な部分の面積住宅の居室の場合、窓の採光に有効な部分の面積を、居室の床面積に対し1/7以上確保して、建築基準法第28条第1項に適

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令和3年一級建築士設計製図試験|ざっくり感ありの『集合住宅』という課題名

令和3年一級建築士設計製図試験|ざっくり感ありの『集合住宅』という課題名

令和3年一級建築士設計製図試験の課題名が『集合住宅』……とだけ、公表されました。

これまで課題名の公表時には、(注)書きにおいて、「温水プールのある」だとか「屋上庭園のある」だとか……、課題の用途に対して付加する条件が事前に明示されていました。これによって課題の想定が絞りやすくなり、受験生にとっても対策の負担が軽減される面もあったと思います。

しかし……昨年から、対策の的を絞りにくくしている傾

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一級建築士設計製図試験|設計の自由度と重大な不適合との関係

一級建築士設計製図試験|設計の自由度と重大な不適合との関係

平成21年試験内容の見直しから、ちょうど10年が経過しようとしたところで、問題用紙の大きさや紙面構成に試行錯誤が見られるようになりました。出題の仕方だけにとどまらず、採点の仕方にまで及んだ見直しが、再び行われている感があります。

「故きをたずねて新しきを知る」--(令和2年の設備の設計条件に見られるように)--平成20年以前の旧試験ではどう出題していたか?……そんな点にも注目しながら、再び見直し

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一級建築士設計製図試験の床面積の算定におけるピロティを屋内的用途に供する部分

一級建築士設計製図試験の床面積の算定におけるピロティを屋内的用途に供する部分

1.床面積算定の原則S61.4.30建設省住指発第115号「床面積の算定方法について」によれば、ピロティに関しては『十分に外気に開放され、かつ、屋内的用途に供しない部分は、床面積に算入しない。』とされています。加えて屋内的用途の判断として、『床面積に算入するかどうかは、当該部分が居住、執務、作業、集会、娯楽、物品の保管又は格納その他の屋内的用途に供する部分であるかどうかにより判断するものとする。』

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一級建築士設計製図試験におけるエレベーターの要求とその捉え方

一級建築士設計製図試験におけるエレベーターの要求とその捉え方

平成21年~令和元年までの新試験を見てみますと、令和元年を例外としますが、エレベーターの欠落は『設計条件・要求図面等に対する重大な不適合』と判断され、ランクⅣに該当することになるとされています。

設計与条件におけるエレベーターの要求のされ方に着目し、そこから読み取れることを考察してみます。

1.エレベーターの用途による分類はじめに、エレベーターの用途による分類を整理しておきます。
・乗用エレベ

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一級建築士設計製図試験において床面積を記入すべき要求室

一級建築士設計製図試験において床面積を記入すべき要求室

要求図面の特記事項にある「要求室の床面積の記入」について、旧試験から平成21年・22年の新試験までと、平成23年以降とでは、要求内容に違いがあります。そして受験資格等試験制度が改められた令和2年の試験では、再び平成22年以前のような要求内容に戻しています。

こうした変遷に基づき、要求図面の特記事項の記載内容と標準解答例とを照らして、床面積を記入すべき要求室について整理しておきます。

1.平成2

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一級建築士設計製図試験における敷地の周辺状況を踏まえた自然光の取り込み

一級建築士設計製図試験における敷地の周辺状況を踏まえた自然光の取り込み

1.高齢者介護施設の敷地の周辺状況令和2年本試験「高齢者介護施設」の敷地の周辺状況について、平成20年までの旧試験に見られた記載の仕方をすれば、以下のようになります。

 ①北側-道路(幅員8m)を挟んで、住宅地がある。
 ②東側-住宅地がある。
 ③南側-住宅地がある。
 ④西側-道路(幅員4m)を挟んで、認定こども園がある。

「見出し画像」は、東京都世田谷区内の空中写真(出典:国土地理院

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令和2年一級建築士設計製図試験|「高齢者介護施設」本試験の講評と解答例の閲覧

令和2年一級建築士設計製図試験|「高齢者介護施設」本試験の講評と解答例の閲覧

1.A2の紙面構成の試行錯誤は今後も続くのか!A2サイズの問題用紙になって3年目の試験となりますが、A2の紙面をどう使うかの試行錯誤は続いているようです。昨年と違った紙面構成を試験開始直後に先制して示すことで、受験者を動揺させようという意図はないとは思います。しかしながら、受験者からしたら見慣れぬものを見せられれば、心穏やかにというわけにはいかなくなることを想像します。

A2の紙面を4列で構成し

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