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相手の名前を大切にしよう。

どちらかと言えば新社会人の方、または社会人になって数年の若手の方に向けたものですが、皆さん
「相手の名前を大事に扱っていますか?」

もし悪気がなくともそれが出来ていない場合、ほんの少し気を付けるだけで会社にいる居心地はぐっと変わってくるんですよ。今日はそんなお話をしてみましょう。

あれから10年はゆうに立ったと思いますが、今でも忘れられない出来事があります。昔、勤務中に取引先から電話がかかってきました。こちらからある製品について新規の取引先にメールで見積り依頼をしていて、その件で連絡があったのです。もちろん営業担当者も初めての人です。
営業担当者であるその男性は、話し方と声から、若く少々強気な態度がにじみ出ている事が感じられました。そもそもこちらが客の立場であるのに向こうから先に名乗ってこない事がビジネスマナーに反すると思い気になりました。納期についてなど二、三言葉を交わし、最後に尋ねました。「失礼ですが、お名前は」。明らかにぶすっとした声で、しかし相手は大きくゆっくりとした発音で苗字を言いました。
「〇〇です」。
私は苗字を聞いた後即座にトーンを落とし「〇〇様ですね、わかりました」と落ち着いて答えた所、あきらかに彼が電話口で虚を突かれた様子が伝わったのです。彼の方が、「は、はい」と先ほどまでの威勢はどこへやら、声のとげが全くなくなり大人しい口調になる始末。驚いた事に二度目以降の電話の彼は態度が一変して柔らかく、こちらにビジネスパートナーとしての好感までが伝わってきて非常に仕事がしやすくなりました。

何故電話口のみですが初対面ではあんなにトゲトゲしかった彼がころりと態度を変えたのか。本人に直接聞いたわけではないので、推測しか書けません。ただ絶対こうだっただからだろうと断言できます。
それは、彼の名前に敬意を払ったからです。

実は、彼の苗字は非常に珍しかったのです。今まで生きてきて初めて聞いた苗字であり、現在も実生活はもちろんTVでもネットでも聞いた事がないくらいのレベルです。日本人の苗字検索専用サイトで調べた所ちゃんと出てきたので実在されているのですが、全国的にも非常に数少ないお名前でした。

彼が電話口で大きく、ゆっくりくっきりはっきり発音してくれた為一回で聞き取れました。ですが外国語のような非常に珍しい読み方でした。聞いた直後の私の頭の中は大パニックです。「は?」「実は外国人?」「いや落ち着け日本語流暢すぎるだろ」「外国語か?」
同時に頭の中でめまぐるしく推理します。
・大きくゆっくりはっきり発音してくれたのは、過去何度も聞き返されたためだろう
・ブスっとしながら自分の名前を言ったのは、「ほら、お前もどーせ戸惑うか、驚くか、聞き返すか、笑うかするんだろ」
という彼の気持ちの表れと見た。
彼が名乗ってからここまで私の推理コンマ1秒。
それで私は彼が「〇〇です」と言った直後に「〇〇様ですね」と、わざと淡々と落ち着いた声で復唱したのです。

自分の名前を間違わられると、正直ムっとしませんか。誰にでもあると思います。それは、自分の名前に大なり小なり愛着を持っているからです。
会社では電話のやり取りで相手の名前(苗字)を聞くことがしょっちゅうです。自分の名前を相手に伝えた後、相手が復唱する会社も多いと思いますが、間違わられると少々ストレスがたまります。相手の聞き方が誠意のない態度ならなおさらです。逆に一回できちんと正確に答えてくれると「この人はしっかり聞いてくれる」、つまり仕事も信用できるなと好感度がアップします。同じ事を相手も感じると思うので、自分が聞く時、特に電話口では聞こえにくいので集中して聞き間違いがないよう努めます。ありふれていて聞き間違われる事の少ない苗字の私ですらこうなんですから、非常に珍しい苗字の彼はどうだったのでしょう。過去に何度も聞き返されたり、は?と言われたり、もしかしたら発音も非常に珍しいので笑われると言った失礼な態度を取られた事もあったのかもしれません。
名前はたとえ苗字だけでもその人を構成する上で非常に大きなものです。顔、身体と言った見た目以外、学歴仕事内容と言ったステータス以外でその人の存在を世に知らしめるその人本体にがっちりくっついている、文字通りその人を表す上での大きな一部分なのです。
毎日仕事をしていると相手の名前を聞く作業をつい軽く考えてしまう人もいるとは思いますが、「相手の名前に敬意を払う」という事は先に述べた理由からそれがすなわち「相手自身を尊重している」事になるのです。以上を踏まえて相手の名前は間違えないようにしっかり聞く事をお勧めします。真摯で誠実な態度は電話口だけでも結構相手に伝わるものです。その結果電話上だけでも相手の態度が柔らかくなる事はままあります。それだけで仕事が随分やりやすくなったりします。電話の受け答え時の態度は周りも結構見ているので社内でのあなたの評判も上がり良い事づくめです。

ここまでお話したら、聞き間違えてしまった場合の態度はもうわかるかと思います。
慌てるならまだ可愛げがありますが、気まずい気持ちをごまかそうとしただけで悪意はないつもりでも絶対笑ってはいけません。あなたにとってはごまかし笑いでも、相手は自分の名前について嗤っているのだと馬鹿にされた感覚を持つ人が多いと思います。「申し訳ございません」だと仰々しくなるので、落ち着いた、しかし真摯な態度で「大変失礼いたしました」と謝罪をまずします。それから再確認を含めて相手の名前を「〇〇様ですね」と言いなおします。正確な名前を聞きそびれていた場合は「失礼ですが、もう一度お名前をお聞きして宜しいでしょうか」と言って次こそしっかり聞きましょう。

電話対応で良い事は何回もたくさんやっていけば慣れるという事です。相手の名前を尊重すると良い事しかありませんのでぜひ相手の名前を聞く時は「ちょっと気を付けて」みてください。


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