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「エンタメ・ビジネス化」するオリンピック。アスリートに求められるのは?

コロナウィルスで延期が決定した東京オリンピック2020。

残念と言えば残念ですが、改めて来年2021、コロナウィルス撲滅の象徴となってほしいと願っています。

オリンピックは平和の祭典とも呼ばれていますが、一方、オリンピックの商業化の方向性も顕著になってきているのもまた事実です。

今回はオリンピックの変遷において、アスリートたちはどう考えて競技に向かい合うべきなのか、探ってみたいと思います。



「幻の東京オリンピック」


「幻の東京オリンピック」はご存知でしょうか。

日本で初めて開催された1964年東京オリンピック。


それ以前に東京オリンピック招致に成功していたことがあります。

実際には開催されなかったのですが、1940年に東京オリンピックが招致されていました。


その立役者が嘉納治五郎。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、柔道の父と言われる人物です。


少しご紹介いたします。

嘉納治五郎は1938年(昭和13年)生まれ、講道館柔道の創始者。


いじめられっ子だった嘉納治五郎は強くなりたいと思い、柔術を習い始めたのがきっかけでした。

東大卒業後、1882年(明治15年)、講道館を設立。


嘉納治五郎の教え子としては、廣田弘毅(第32代内閣総理大臣)、夏目漱石、五島慶太(東急電鉄創業者)などがおり、弟子の西郷四郎は「姿三四郎」のモデルだといわれています。


嘉納治五郎は功労が認められ、アジアで初めて国際オリンピック委員に任命されます。

1912年ストックホルム大会には、日本人を初めてオリンピック参加を実現。


しかし、世界的な戦争機運の中、1932年満州事変をへて日本が国際的に孤立していきます。

この事態を憂えていた嘉納治五郎は、世界平和を胸に、国際関係の構築を目指し、日本でのオリンピック開催を目指します。


1936年にIOCオリンピック招致の演説を行い、なんと、1940年のオリンピックを日本招致に成功します!

しかし残念ながら、日本は戦争へ。。。招致は返上されます。


2年後の1938年嘉納治五郎はオリンピック招致の最中に亡くなり、結局日本でのオリンピック開催実現はなくなりました。


これが「幻の東京オリンピック」。


その後、20年以上経過して、ようやく1964年、日本で初めての東京オリンピックが実現しました。

柔道の父、嘉納治五郎は平和を胸に、日本でのオリンピック開催を願っていました。


オリンピックは平和の祭典?


嘉納治五郎が平和を胸に、オリンピック招致活動を行ったように、オリンピックは平和の祭典とも呼ばれています。


しかし、昨今、平和の祭典、オリンピックが大きく変貌しています。

それが「商業化」「ビジネス化」するオリンピック。


この転換点となったのが、1976年、モントリオール大会。

日本女子バレーボールの金メダルと女子体操のナディア・コマネチの大活躍が印象的でした。


しかし、この大会ではおよそ10億ドルの赤字が出たと言われています。

前回のミュンヘン大会で過激派による史上最悪のテロ事件が起き、警備コストが跳ね上がったという背景もあったようです。


巨額の赤字。

多くの国がオリンピック招致に消極的になりました。


いくら平和の祭典であるにしても、これだけの赤字を抱えてのオリンピック開催に疑問がでてきました。

再建?!大改革したオリンピックとは?

こういった巨額赤字のオリンピックを払拭させた大会が1984年のロサンゼルスオリンピックです。

いわゆる資本主義を明確に導入した大会となりました。


大会組織委員長を務め、この難しい課題をクリアしたのは、全米でも第2位の旅行代理店を一代で築き上げたやり手のビジネスマン、ピーター・ユベロス。


1979年に委員長に選任されたユベロスは会社を売却し、オリンピックに専念します。


まずは支出削減。


極力既存の施設を使い、選手村として大学の寮を使うなどのコスト抑制を実施、ボランティアも徹底的に活用します。

モントリオール大会で14億ドル以上の運営費は5億ドル強に抑制されます。


そして収入面。


特にテレビの放映料とスポンサー料。


テレビの放映料は、入札制度を導入し、アメリカABCは2億2500万ドルを支払い、合計2億8700万ドルの放映料を得ることに成功します。

そして、公式スポンサーを1業種1社に絞ります。


業界内の競争意識をあおることで、1億2000万ドルを超える協賛金を得ることに成功しました。

モントリオール大会の協賛金が数百万ドルと言われ、飛躍的な増収となりました。


結局、ロサンゼルス大会は、最終的に2億ドルを超える黒字を計上。

凄いですね。


まさに会社の再建に似ています。

見事収支面でも成功に導きました。

ビジネス化、エンタメ化するオリンピック!

オリンピックはロサンゼルス大会の黒字化で、メディアも、各種スポーツメーカーも、オリンピックで巨額の利益を上げることができるようになりました。


収入を得られることが分かった一流のプロ選手も、業界団体もオリンピック参加に積極的に転換。

アマチュア主体のオリンピックからプロ選手も含めた大会へと変貌します。


このようにオリンピックは平和の祭典から、ビジネスの祭典へ変貌しつつあります。

利益を生み出す大会、そしてエンターテイメント化する大会に変化しつつあります。


スポーツの抱える矛盾


オリンピック憲章では、以下、「オリンピズムの根本原則」(条文1と2抜粋)に、その目的を定義しています。


1. オリンピズムは人生哲学であり、肉体と意志と知性の資質を高めて融合させた、均衡のとれた総体としての人間を目指すものである。スポーツを文化と教育と融合させることで、オリンピズムが求めるものは、努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価値、社会的責任、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重に基づいた生き方の創造である。

2. オリンピズムの目標は、スポーツを人類の調和のとれた発達に役立てることにあり、その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進することにある。

※JOC(日本オリンピック委員会)ホームページより抜粋


このように平和の祭典オリンピックは、現状の商業化の潮流と矛盾を抱えて進んでいます。

これが、アスリート個人にも影響してきます。


世論として、スポーツに税金を投入すべきかどうか。

特に選手強化費など、様々論議されています。


このような背景から、実際のところ、スポーツを専業とする人にとって、資金的に大きなハードルがあります。


税金で賄う「強化選手」になれる人、そしてなれない人。

例え、強化選手となっても海外遠征費や生活費。


強化選手でさえ、資金困難なのに、強化選手ではないマイナー競技はどうすればよいのでしょうか。


「平和」だけでは、世界レベルの競技に太刀打ちできません。


サラリーマンが世界トップアスリートと戦う?!


そういえば、以前、人材紹介会社の方に聞いたことがあります。

アスリートが収入を得るために、会社に就業する方法が大きく分けて3つあるそうです。


【アスリート就業形態】

1、競技専業型
2、競技兼業型
3、通常社員型



【アスリート就業形態】


1、競技専業型

主にメダル候補者。
競技に専念し、メダル獲得がほぼ確実な人は主に広報部、経営企画や社長室などに配置され、メディア露出や自社ブランディングを中心に活躍する方法。


2、競技兼業型

まだメダルには届かないが入賞や海外大会レベル候補者。
半分競技練習しながら、半分仕事に携わる形です。
例えば、午前中会社に出社し、午後から競技練習を行うような形態です。


3、通常社員型

大半のアスリートはこの形態。
通常の社員と同様に、通常の業務内容、時間帯で職務を遂行し、業務後や休日に競技練習する形。


ご存知の通り、上記「1、競技専業型」と「2、競技兼業型」はごくわずかな有名選手だけです。

多くは「3、通常社員型」。


通常の社員と同じく、業務内容も一般社員と遜色ないレベルが求められ、残業なども発生します。

アスリートにとって、一日の大半を通常業務に追われていては、世界レベルには及ぶことはできません。


生活に困窮するだけではなく、海外遠征費、自信の能力アップの為の科学的分析、一流のコーチ招致など、普通の生活以上の資金が必要なものではないでしょうか。


サラリーマンが、貧困の中、合間を縫って世界トップアスリートと戦う。

マイナー競技であればあるほど、国と民間支援は集まりません。


では、マイナーアスリートは、何を、どうすればよいのでしょうか。


ベンチャー企業からの突破口とは!


昨今、アスリート支援の形は多様化しています。

特にベンチャー企業から多くのアスリート支援の形が見えてきています。

2008年にIPOしたサニーサイドアップ(http://www.ssu.co.jp/)はその先駆けです。


1991年(平成3年)に始めたマネジメント業務では、元サッカー日本代表の中田英寿や、水泳の北島康介、陸上の為末大、テニスの杉山愛、ゴルフの上田桃子をはじめとしたスポーツ界の大物のマネジメントを手がけるベンチャー企業です。


主にアスリートのプロモーション部分を専属に担っています。


また、Find-FC(http://find-fc.com/)は、プロ・アマ問わず、アスリートを応援するサイトです。


サニーサイドアップが有名アスリート中心に、大手企業のスポンサーをマッチングするのに対し、「Find-FC」はアマチュアも含めて、まだ有名ではないアスリートと、中小企業を含めたマッチングができる仕組みでもあります。


それだけではありません。

クラウドファインディングもアスリートにとって大きなツールとなってきています。


READYFOR(https://readyfor.jp/)、athlete yell(http://www.athleteyell.jp/)などが成長してきています。


クラウドファインディングとは、不特定多数の人がネット経由などで、他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことのできるプラットフォームです。


一般個人の投資家が少額から支援できる仕組みです。

新しいベンチャー企業はマイナー競技の無名なアスリートを支援する方向性を広げつつあります。


日本のスポーツビジネス市場!


日本はそもそも、スポーツは「教育」であり、「体育」の延長と考えられてきた背景があります。


しかし、徐々にスポーツをビジネスとして考える傾向が広がってきています。

日本のスポーツ市場の規模は、2012年の試算で、5兆5000億円と想定されています(日本政策投資銀行調べ)。


これは、対GDP比率で約1.0%を占める規模です。

しかし、アメリカのスポーツ市場は、2014年度実績で、日本の9倍となる49兆8000億円、GDPの約2.9%。


また、中国では18兆1000億円、GDPの約2.2%、韓国では3兆7000億円、GDPの約2.8%を占めます。

各国のスポーツビジネスの市場規模を、GDP比率で比較すれば、日本には、今後、3倍の市場に拡大する余地があります。


スポーツ庁では、スポーツビジネスの規模を、2020年には10兆9000億円へ、2025年には15兆2000億円にまで拡大する計画を打ち出しています。


このように「体育」「教育」という軸から「スポーツビジネス」に大きく潮流は変化しつつあります。


とはいいつつも、この市場拡大はやはり、メジャースポーツがけん引することとなり、マイナースポーツにとっては、何かしらの知恵が必要かもしれません。


「百獣の王」からのヒント!


アスリートの取り巻く環境、状況は大きく変わりつつあります。


この流れをアスリートととして、どう捉えられるのか、個人個人の意識改革が重要になってきていると思います。


国からの強化費、スポンサーからの支援金、それだけではないのかもしれません。


ではどうすればよいのでしょうか。

そのヒントが、自称「百獣の王」武井壮のコメントにありました。


武井壮と言えば、ご存知、陸上競技・十種競技元日本チャンピオンで、2015年 第21回世界マスターズ陸上競技選手権大会 4×100mリレー(40 - 44歳クラス)で優勝もしています。


武井壮は幼い頃に両親が離婚し、小さいころから実兄と2人だけで育ち、極貧生活から猛勉強し、中学から大学まですべて奨学金だけで卒業したという知的経歴も持っています。


心の支えの実兄が24歳の若さで他界し、どん底を味わった苦労人でもあります。

以下、武井壮のFacebook内容です。

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アスリートに相談を受けた。スポンサーを探しているという。
オレはアスリート大好きだからよ、頑張って欲しいし応援したい。

しかしな、アスリート達が勘違いしてる事があると思う。
スポンサーってのはお小遣いをくれる都合いいものじゃないよ。

スポンサーを辞書で引いてみな。広告主って書いてあるから。
スポンサーを受けたら受けた相手の広告塔として出された金額以上の広告効果を出さなければならない。

でも多くのアスリートは金額以下の露出でほとんど広告効果もないと思う。
こんな話をすると『アスリートの仕事は競技力を上げて成績を出す事で、タレントじゃないですよ!』と怒る輩もいる。

決してそうじゃない。

アスリートが記録を伸ばしたりトレーニングして結果を出すのは当たり前の作業。会社員が会社に行くのと同じ、やらなければならない最低限の行動。
それを仕事に、経済効果のあるものにするにはたくさんの人に見てもらう事が必要だと思う。

物作りだってそう。いいものを作っても、誰も買わなきゃ仕事にならない。
アスリートだって世界記録出したって誰も見てなきゃ仕事にならない。

<中略>

『練習頑張ります!優勝しますからスポンサーお願いします!』じゃない。

本来は『あの人にとっては少ないかも知れないがお金を出してでも我が社の名前を背負って欲しい!』と思われて得るものがスポンサーだと思う。

いつまでも援助を欲しがるアスリートばかりじゃなくて『日本一有名になって、日本一多くの人を楽しませる選手に、エンターテイナーになりたい!』そう言えるアスリートに出会いたいもんだ。

オレはアスリートを愛してる。だからこそ。そんな仲間を増やしたい。そう願います。

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アートもスポーツも文化であり人の喜びを産むけれど、もともとは道楽だし遊びなんだよ。
一部の優良コンテンツが作った文化に全部が乗れる訳じゃない。。

人がまだ楽しめてないマイナーなものを愛したなら、人がそれを楽しめる文化に育てないといけないんだよ。。
あそこに行けばスターになれる、そんな夢のような業界にしないとダメなんだよ。。

それが文化だし『遊びが遊びじゃなくなる』ライン。。
ただの『道楽』が『我々が人生を楽しめる道になる』ってことだと思う。

<中略>

『お小遣いください』っていつまでも子供みてえに国やスポンサーに頼って居場所を作ってもらうのか。。
『僕達にはこんな価値がある!』

と胸張って言えるスポーツ界を自分達で創り上げるのか。。
立ち上がろうぜ日本最高のアスリート諸君。。

オレ達の時代を創るか、人の時代に乗っかるだけか。。
勝負の時はオリンピックだけじゃねえんだぜ。。

掴み取ろうぜ。。

まずは自分自身をメジャーにして観客席を埋めてみろよ

メダルのかかった4年に1回だけの大会だけしか注目されねえなんて寂しいだろ
そのメダルでしかそれを作れねえなんてことねえだろ

スポーツにはその力がある
みんなにはその魅力がある

進もうぜ

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マイナースポーツの未来

私は子どもの頃、テレビでプロ野球を見ていた時にふとした疑問が浮かびました。

人はなぜ、ボールを棒で打つ、そんなスポーツをするのだろう?と思ったことがあります。


そこに何の意味があって、野球をやっているのだろうか。

野球自体に、意味があるのか?

そう考えていた頃がありました。


野球だけではありません。

サッカーは?

プロレスは?

相撲は?


スポーツそのものに意味があるのか、そう考えていた頃があります。


スポーツの意義は多くあります。

健康、楽しさ、教育、平和、スポーツマンシップ、友情などなど。


でも、ある意味、スポーツはビジネスであり、エンターテイメントである、という側面もあります。


そこから生計を立てる、プロフェッショナルだとしたら、なおさら。

仮に、そう割り切ってみた場合、目的が明確となります。


多くの人に見て楽しんでもらうこと。

そう、エンターテイメント。


マイナーなスポーツであればあるほど、そう割り切って考えてみることで、「今、何をすべきか」見えてくるのかもしれません。


名もないベンチャー企業が、ブランド力のある大企業に挑むように。

マイナースポーツからメジャースポーツへの可能性が見えてくるかもしれません。


資本主義に大きく傾いたスポーツ業界。


だからこそ、どんなマイナーなスポーツでも、大きな可能性を秘めている、そう言えるのかもしれません。



最後に


武井壮の名言を贈ります。



オレは鍛えるのが好きなんじゃなくて成長するのが好きなんだ



不可能を可能にし、可能を楽勝にする



実力も能力も何もないなんて1番楽しい時期じゃねえかよ、何したって成長すんだから



敬語は相手が偉い人だから使うんじゃねえ。自分を律するために使うんだ



『それは無理だね』って言う人が多い程チャンスがある。。だって無理だと思ってみんなやらねえんだからガラ空きだからな、やるしかねえだろう。。



誰かが言った「それは難しいよ」は一切気にしねえ。だってそいつは俺じゃねえ



世の中分かってきた大人が夢持って進めねえんじゃ、大人になった意味がねえ


武井壮

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