組織拡大によって顕在化する課題と今後の挑戦
この記事は、GENDA Advent Calendar 2024 の16日目の記事です。
これまで取り組んできた組織開発を振り返りつつ、組織拡大に伴い起こりうる課題についてお話しします。
※あくまで私個人が考える一般的なことを書いていきます。
組織拡大の振り返り
私が所属する開発組織の立ち上げ経緯については、当時のこちらの記事をご参照ください。立ち上げから3年が経過した現在、組織は順調に拡大しています。当初設定していた中期の採用計画を無事に達成し、プロダクトに関わる正社員は70名を超えました。業務委託やインターン生を含めると100人以上となり、3年間としては非常に順調な成長を遂げています。
拡大で浮かび上がる課題
組織拡大が進むと新たに見えてくる課題もあります。今回はその中でもダンバー数の観点からの影響を挙げたいと思います。
ダンバー数とは、「人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限」を指します。この数は約150人とされており、これを超えると信頼関係や親密さが薄れ、関係性を維持するための追加の工夫が必要になると言われています。
組織規模が拡大すると、「顔や名前は知っているが、実際には話したことがない」メンバーが増えがちです。特に複数のプロダクトを扱う場合は、「誰が何を担当しているのか分からない」あるいは「スキルや役割が見えづらい」といった課題が顕在化しやすくなります。その結果、全体的な一体感や情報共有が希薄になる兆候が現れることもあり、これはダンバー数の観点から見れば、組織拡大に伴って生じる自然な現象と言えると思います。さらに「複数のプロダクト」「複雑な組織構造」「リモートワーク」などの要因が、こうした課題を一層顕著にすることも少なくありません。
こうした課題が顕在化する中で、建設的な組織課題と個人の課題や不満が混在するケースもでてきます。個人の課題が組織全体の課題として扱われると、本来の優先順位が見えにくくなり、解決策の実行が難しくなることもあります。このため、個人の課題と組織の課題を切り分け、適切に対応する仕組みを整える必要があります。
組織が成長する中で職能別やプロダクト別のサブグループの形成が進むのは自然な現象です。システムのサイロ化と並行して、職能型のサイロ化が顕在化する組織も多いのではないでしょうか。このような状況では、個人の課題がグループ間の連携に影響を及ぼすこともあり、横断的な連携や一体感をどう保つかが、組織拡大を続ける上で重要なテーマになっています。
解決と今後の挑戦
このような課題に対して、「コミュニケーションの量を増やす」というアプローチを取ることもあるかもしれません。しかし、単純に量や頻度を増やすだけでは、逆に負担が増え、効果が得られないこともあります。重要なのは、適切なインターフェースの設計です。
ダンバー数の観点から見ても、組織が成長する中で、全員が密接な関係を保つことは現実的ではありません。そのため、チーム間の役割や責任範囲を明確にし、必要最小限のコミュニケーションで円滑に連携できる仕組みを整えることが求められます。
近年、チームトポロジーの観点から組織がデザインされるケースが増えており、拡大を続ける組織においては改めてその重要性を感じています。具体的には以下のような取り組みが重要になると考えています。
チーム間での明確な責任範囲や役割分担を定義する
情報共有の仕組みの整備する
コミュニケーションプロトコルを明確化する
チーム間の過剰な依存関係を排除する
不必要なコミュニケーションの制限する
ただし、全てを愚直に適用することが最適解でもないと思います。例えば、役割分担においても、敢えてファジーに設計することで、互いに補完し合いながら動き、変化するニーズに素早く対応できることもあります。イノベーションの促進やリソースの最適化の観点からも同じことが言えるかもしれません。重要なのは、「明確にすべき領域」と「曖昧にしてもよい補完領域」を分けることかなと思います。
ダンバー数が示す通り、150人を超える規模では、自然とサブグループが形成され、横断的な連携を意識する必要が高まります。私が所属する組織においても、未来に向けて、組織としての一体感と効率性を両立させながら、改善を進めていきたいと思います。来年はこの辺りをもう少し深掘りして、施策の効果や新たな課題も共有できたらいいなと思っています。