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『地球の静止する日』(1951)

 NHK-BSPでつい先日オンエア。これをたまたま母親が観て、たいそう感心していた。自分は視聴済だったので映画と共に母親の反応を見ていた。話の進行とともに他人のリアクションを見られると映画はより楽しめる。

 ざっくり話を説明すると、ある日ワシントンに突如として円盤が着陸する。現れたヒューマノイド型の宇宙人は、全世界の指導者らに平和的交渉を求めるがその声に耳を貸す者たちはいなかった。そこで宇宙人は一民間人に成りすまし、科学界の権威たる人物との接触を試みる。と同時に、自らの力を人類に示すべく、30分間だけ地球上のあらゆる機械を止めてしまう……

 宇宙人が平和的交渉というと『シン・ウルトラマン』のザラブやメフィラスを思い出す。あちらは平和を謳いつつも不平等な条約を結ばせたり、人類に強大な力を供与ししつつその上位として自らの存在を認めさせようとしていた。
 一方で本作の宇宙人は「純然たる使者」である。地球上で起こる全ての争いを止めよ、その力は他の星への脅威になりうるぞと訴えた。
「我々の仲間となるか、それともここまま破滅するか。回答を待っている」
 そう告げて去っていく。ここにウチの母は溜飲を下げたようで「世界中の指導者に見せてやりたいよ」と満足げに語っていた。

 さて改めて「平和」への方法を聞いてみると、法で秩序を守るのと同様に、惑星間で中立的な組織を作りあげてルールを設け、その監視をロボットに委ねたのだ。惑星内で何をしようと自由だが、仮に他惑星への暴力が認められた時は察しが付くだろう、と。
 決して完全な方法ではないが平和は保たれている、と宇宙人は語る。宇宙の誰かが代表として平和のために戦うわけでもなく、神にもならない代わりに、至って中立的な「罰を下す」存在を作り上げた。そのもとで上手くやっていこう……てのが宇宙人同士の紳士協定らしい。この仲間に加われるかどうかは貴方達次第だ、という一方で

「同じことが貴方たち、人類にも出来るかね?」

 と問われているようで、何とも意味深でもある。昨今の世界情勢からして、母親が溜飲を下げるのも当然だろう。
 NHKも粋な映画を流すねぇ。

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