炎の男の実録檄白手記!~俺の備忘録~Vol.11

出会い系を未練なく卒業してスカウトマンになったのはいいけれど、最初はそれなりに戸惑った。
 絶対になりたいと思ってスカウトになったわけじゃ無かったしね。

 何をやるにしても俺の場合たいがい成り行きなんだよ。
 本気じゃない。
 だからだろうと思うけど、事を成し遂げたことなんて1度も無かった。
 当然、達成感とか感じたことも無い。

 早稲田大学でサークルに入って政治の現場に触れたけど、それだけで終わり。結局ものにならなかった。

 司法試験なんかもそうだった。弁護士にでもなろうかと挑戦したのはいいけど、本気でやんないから結果が出ない。
 司法試験なんて死ぬ気でやっても受からない世界だよ。
 中途半端な気持ちで挑戦したって結果なんか出るわけないんだよね。

 出会い系にはまって女の子の尻ばかり追いかけて勉強なんかやる暇無かったんだから仕方ないと、自分で自分に言い聞かせてたけど落ちこぼれであることは確かだった。

 そういう意味ではどんどんやさぐれていった時期でもあったね。

 一緒にサークルやってた奴が政治の世界や社会で活躍してるのを見て嫉妬するのが関の山だったわけよ、落ちこぼれの俺からしたら。
 ほんとダサかったと思う。

 スカウトマンになったのもそう言う意味では成り行きだったっていうか。

 結果として新宿でナンバーワンのスカウト会社になるとこに入るんだけど、それも「たまたま」なんだよね。

 知り合いのキャバ嬢から言われたんだ。
 「アラケンさんはスカウトに向いてるよ」
 って。
 それでその気になった。

 出会い系で頑張ってる時、空いてる時間を利用してキャバ嬢の送り迎えのバイトをしてた。年に1日くらいしか休まずに続けてた。
 送り迎えの最中、助手席に乗ってるキャバ嬢と会話するよね。
 その経験がスカウトに活かせるとキャバ嬢は思ってくれたんだよ、たぶん。
 
 スカウトマンになろうとした時、バイト情報で調べて、まずは六本木の会社に面接に行ってるんだ。
 すごくきれいなオフィスだったし、スタッフの応対もスマートだったけどそこは見事に不採用だったね。

 26歳っていうのが理由だった。スカウトっていうのは20歳そこそこから始めるものなんだって。
 
 仕方なく新宿のスカウト会社に面接に行ったんだ。
 伊勢丹の裏側辺りの雑居ビルの中に事務所があった。
 アポをとって、約束の時間にそこに向かった。

 スナックみたいなドアを開けて中に入ったら、若い男が寝ててね。
 その子、俺を見ても無関心なまま。約束の時間なのにと思ってると、1人の男性が現れた。その男性がボスだったんだけど、やたら熱く語る人だったね。
 これからのスカウトはこうあらねばみたいな話をするわけよ。
 俺も若かったから意気投合したって言うか。
 一緒にやろうよって言われてオッケーしたんだよね。

 そしたらさ、それが食わせものだったって言うか。

 後日、新宿区役所前の広場に呼び出された。
 事務所でなくて何故区役所前なの?と思いながら行くと、そこにボスと見知らぬ人がいる。
 なんでもその人は別のスカウト会社にいた人で、その人とボスが新しいスカウト会社を作るって話になって。
 俺、聞いてないよって思いながらもまあ仕方ないかと。

 そうこうしてるうちに何人ものスカウトマンが集結してきた。
 チャラい奴ばっかだった。
 13人くらい。
 俺はリクルートスーツだったけど、他の奴らは黒いロングコートとかでチャラいなりにピシッと決めてきてた。
 ノンフレームの眼鏡とかを小粋にかけてさ。

 ボスが煽るだよね。
 とにかくこのメンバーで新しいスカウト会社を始める。
 やる限りは新宿でナンバーワンのスカウト集団になるぞってね。
 
 なんにしろ、その日から俺は新宿を舞台とするスカウトマンの道を歩み始めたわけだ。
 スカウトとしてはなんのスキルもない素人同然の俺。
 バーバリーでもなく、黒いロングコートでもなく、ましてや縁なしのオシャレな眼鏡でもない俺。
 
 そんな俺が後に「アラケン軍団」と呼ばれる最強のスカウト集団を結成することは、当の俺にも想像すら出来なかったのだが……。

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