炎の男の実録檄白手記!~俺の備忘録~Vol.17
アラケン軍団は思う以上にポンコツだった。
無理はない。
もともと業績をあげられずクビになろうとしていた野郎ばかりを集めたわけだからね。
みんなはさ、
よりによってなんでそんな連中を?
って思ったはずだ。
しかもだよ、押し付けられたんじゃない。自らの意思で奴らを囲ったんだからさ。
さすがのアラケンもやきがまわったって言われたよ。
まあ、言われるだけのことはあるなって。
朝、集合した軍団の連中の顔を見ていると、
「なんでこんな奴らを?」 とため息が出てしまうんだから。
二枚目でもないしおしゃれでもない。だからと言って社交的ではないときている。
スカウトだって言うのに女の子に声をかけるのが苦手なんだから。
ほんとそんな連中ばっかなんだよ。
こんなダメ人間を預かってどうするつもりなの?
そう思われても仕方ない。 反論は出来なかった。
何故好き好んでそんなことをしたんだって直接聞かれたこともあったよ。
答えに窮したね。
唯我独尊の俺が何をとち狂ったんだと。順調にスカウトの実績をあげてた俺なんだからさ。
自分の心配だけをしていたらよかったんだ。マジでよりによってだよな。
自己分析をしたよ。
何故、軍団を作ったのか?
でた答えが……。
なんと「俺らしい」ってことだった。
俺ってかなり変わってて、昔から苦行を苦行と思わないとこがあるんだよ。
プレッシャーがある方が燃えると言うか。苦労するのが嬉しいんじゃないかってね。
体質は完璧にMだよ。
でも真相を言うとそうじゃない。俺なりの「もくろみ」があってアラケン軍団を結成したんだ。
狙いはズバリ、Kだった!
我流のスカウト術でのしあがってきた俺にイジワルをしてきたあいつ。
卑怯な手を使って俺を追い込もうとしたあいつ。
自分こそスカウトの王道と思い込んでいるあいつ。
そう、あのKに一泡ふかせようと考えてアラケン軍団を組織したんだ。
スカウト業界には「ポイント制」というのがあって、何ヵ月かに1回公表される。
個人部門では俺とKはいつも激戦だった。勝っても負けてもポイントは僅差なんだ。
でも、団体戦になるとKの独断場と言ってよかった。
優秀なスカウトマンは大概Kの子飼いになっていたからさ。K軍団の合計ポイントは天井知らずだった。
子分を持たず孤独にスカウトをしてきた俺。こと団体戦に関してはスタートラインにも立ててなかったんだ。
ことあるごとにKは言ってた。
本物のスカウトは後進を育ててナンボだって。
つまり団体での実績こそがスカウトの真の実力だと。
孤軍奮闘の俺に当て付けてたわけよ。
よしわかった。
俺は決意したんだ。
軍団を作ろうじゃないか。
団体戦でKをまくってやろうじゃないかって。
アラケン軍団は確かにスカウトとしては劣等生の集団だった。ポンコツのお荷物だった。
だけど、一人一人を見てみると強烈なキャラの持ち主だったんだ。
アニメに詳しい奴、年がら年中アイドルの追っかけをしてる奴、やたら哲学にはまってる奴……。
オタクばかりだよ。
俺はこの個性を活かせると直感したんだ。
かつての俺もそうだった。
スカウトのことなんてまったくわかってなかったけど、自分なりのやり方でここまできた。人一倍女性が好きで出会い系に没頭していたスキルがたまたまスカウトに活かすことが出来た。
だとしたら、この連中も充分にやれるはずだ。
奴らのオタクのスキルがスカウトでも活きてくる。
要はその活かし方を実践出来るかどうかなんだ。
俺は「俺流」のスカウトの基本を奴らに教えた。
○女性の気持ちを最優先させる
○無理強いをしない
○店に対しても誠意をみせる
○スカウト後のケアは欠かさない
この基本を守りながら、それぞれの個性を発揮していく。それが出来れば自ずと実績はついてくる。
この俺がそうだったように……。
俺はしかるべきポイント発表に備えこうしてアラケン軍団を立ち上げ、その第一歩を踏み出した。
狙いはひとつ。
K軍団をトップの座から引きずり落とすために!
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