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イスラエルは如何にしてテクノロジー・スタートアップ・ネーションになったのか?

2月21日のForbsの記事Adrian Bridgwaterというジャーナリストの書いた掲題の記事を見つけた。論考は既に広く指摘されていることで、特段内容的に目新しいわけではないが、本文(英文)には工夫された表現が多用され、自分自身の勉強にもなるため、拙い翻訳だが日本語にしてみた。


 イスラエルはテクノロジー・スタートアップ・ネーションと自称する機会を歓迎してきた。スコットランドはシリコン峡谷(Silicon Glen)という言葉を作り、エジンバラのすぐ外側とその一帯を技術成長ゾーンであると示し、ユタにはシリコン坂(Silicon Slopes)、ドバイにはシリコンオアシス(Silicon Oasis)がある。イスラエルはハイテクビジネスのハブがある場所を象徴する言葉としてシリコンワディ(Silicon Wadi)という言葉を用いた。これは極めて論理的で、Wadiとはアラビア語及び口語的なヘブライ語で「乾燥した砂漠の川床」を意味している。

 しかし、なぜイスラエルはハイテクマーケットで気概を示すべきだったのだろうか?何がこの地域を、世界のハイテク地図上の場所を争う若い企業が集まる、ソフトウエアを核にしたスタートアップネーションへと駆り立てたのか?

 その答えの一部は彼らのマインドセット、メンタリティ及びモラルに帰着する。結局のところイスラエルという国はその場所のために戦うことに慣れているのだ。そしてより広い答えとしては、リソース(ほぼ人的資源であり、自然の資源ではない)、高等教育、英語の普及、そして地元の文化を象徴する「進んで困難に立ち向かう」姿勢、の組み合わせなのである。

困難を祝福へ(Curses into blessings)

 エルサレムに拠点を置くグローバルベンチャー投資プラットフォームであるOurCrowdのCEO、Jon Medvedは次のように述べている、「私達には悩みの元を祝福に買えてゆく長い伝統があります。私達には大きな天然資源はなく、従って自分たちの技術を持つことに一生懸命努力してきました。私はユダヤ人のレトリックを過剰に使いたくはありませんが、ここには、リスクの受容に傾倒するメンタリティが確かにあります。そして、人々は若いときからそのメンタリティを養っているのです。私の考えですが、人生でも、テクノロジーでも、多くのリスクを冒すことによって偉大な成果が得られるのです。もちろん、多様なアプローチで十分に計算された方法で、ですが。」

 メドベドは、イスラエルが次のTwitter、次のAmazonあるいは次のUberを生み出せると考えているだろうか? 彼は楽観的だが、そのスコアではバランスが取れている。「ユダヤ人の古い言葉に、『予言の時代は預言者で終わった』というものがあります。」と彼は行った。あらゆることは可能であり、次に何が来るか、は誰も知らないことを示唆しているのだ。
メドベドは、ソフトウエアアプリケーションの開発をできる限り民主的に幅広く広げる必要性を認識している。
「人々は、ソフトウエアビジネスに神経学的多様性(neuro-divers)のあるスキルセットを含める必要性について話します。従って、コードを作りデータを管理するための世界的ミッションに、文化的多様性(culturally-diverse)のあるスキルを注入する必要があることを示唆することは、行き過ぎという訳ではありません。世界のある地域は、情報技術の運用管理を実行することが得意であり、他の地域はスペクトラムの“思考”の側のほうが得意であると考えています。そして私はイスラエルは後者のカテゴリに入ると考えています。」とメドベドは語る。
 2013年の創業以来、OurCrowdは200を超えるスタートアップと20のファンドに、約14億ドルのコミットメントファンドを提供してきた。OurCrowdの傘下で開発された技術は、AIが可能にする自動運転のセンサからメドテック、ヘルステック、スポーツテックまであらゆる分野に渡っている。

軍からアプリまで(From the army to apps)

 メドベドのイスラエルのテクノロジー産業に対する洞察は、約40年前に聖地イスラエルに移住したアメリカ生まれのユダヤ人としての彼の立場から来ている。 彼の感情は、イスラエルイノベーションソサエティの会長兼主任科学者であるアミ・アップルバウム博士によって反映されている。

 「兵役の長所についての考え方は、すべての市民に子供の頃から浸透しています」と、アップルバウム博士は言う。 「あなたは(個人として)あなたが自分の能力の極限にまで引き伸ばされることを分かっています。その原動力の大部分は、青年期を通して、そして貴方が仕事を始めるとき、貴方と共にあらねばなりません。 軍隊はあなたにチームワークと、生死の決定を下すスキルを教えます。 [ミッションクリティカルな]ソフトウェアへの世界的な依存度を考えると、私たちが毎日触れている多くの技術は、同じレベルで私達個人の福祉にも責任を負っているのです。」と、アップルバウム博士は最近の記者会見で述べた。

 したがって、ここでの傾向は十分に明らかであり、イスラエルは、新しい産業基盤を構築したい場合、(メーカーズムーブメント(ディジタル技術を用いたものづくり)のように)(作りたいものを)創造し、製造する必要があった。周辺の石油が豊富な他の国では、必ずしもそのカードのプレイ(原動力)によってドライブされているわけではないため、国は、取引された手を最大限に活用しようとした。

 「すでに多くのイスラエルのハイテク産業は、Unit 8200 Intelligence部門などの国内のエリート軍事諜報部隊でドラフト(素案)を完成させた卒業生たちから生まれています。殆どの西欧のソフトウエア開発者が、世界のあちこちの軍隊とそんなに類似点はないだろうと考えている一方で、実は多くの共通するスキルがあるのです。」と、TEAM8のパートナー兼共同創立者であるリラン・グリンバーグ(Liran Grinberg)氏は述べている。
 グリンバーグは、優れたソフトウェアは実験、問題解決、そしてできるだけ早く変化に適応できる能力に起因することを指摘している。そのため、おそらく(ソフトウエア産業との)関係を作ることはそれほど難しくない。「開発者が早く失敗し、(その経験を活かして)より良く開発できるようになる段階へ進むことができるようになれば、ソフトウエアは繁栄するのです。」と彼は補足した。

大学への入学状況(Matriculation situation)

 ベビー・ブーマーとGeneration-Xの大半は、コンピューターサイエンスクラスを早い段階で経験するという考え方にはまったく縁もゆかりもない(彼らに子供がいるかどうかによって異なるが)が、.NETデバッグ会社OzCodeのCTOで共同創業者のオマー・ラビブ(Omer Raviv)は、イスラエルの学生は(西欧や他の先進国の学生同様)、学生の早い時期からソフトウエアに携わることを奨励されている、と指摘する。
 「中学校(13〜14歳)から大学入学までの期間を通して、かなり進んだコンピューター教育が行われています。」とラビブは述べている。 「イスラエルではソフトウェアは巨大な産業であり、優れたソフトウェア人材には常に大きな需要があります。その結果、エンジニアリング、製品管理、セールス、或いは、人事などの非技術的な業務、であるかどうかに関わらず、ソフトウェアに関連するポジションは、優秀な人材を引き付けるために、人材市場で最高の報酬パッケージを提供するのです。このことは、イスラエルの伝統的な職業の比較的低い給料を打ち負かしています。ほとんどのイスラエル人の母親に、子供たちが医者、弁護士、またはソフトウェアの専門家になることを望んでいるかどうかを尋ねてみてください...それは彼らにとって頭を悩ます必要のない問題なのです。」


スタートアップ・ネーション

スタートアップ・ネーションという用語は、ダン・セナー(Dan Senor)とサウル・シンガー( Saul Singer)によって2009年に書かれたイスラエルの経済に関するの本のタイトルだった。スコットランドのジョン・ロジ・ベアード(John Logie Baird)がテレビの発明で有名だということを多くの人が覚えていないように、多くの人は、イスラエルのソフトウェアエンジニアがGoogle Suggest(オートコンプリートとも呼ばれる)を開発したことを知らないかもしれない。Google Suggestは、あなたがGoogleホームページで検索リクエストを入力したときに、その推薦する結果一覧をリストで示す。

次に何が起こるかは興味深いだろう。 イスラエルは自らをスタートアップテクノロジーの国家と呼ぶことはできない。つまり、これらの技術イノベーターのより多くが、「成熟した経営上の関心事」になるために卒業する必要がある。しばしば起こることは、小規模な技術破壊者がグローバルな技術の巨人に買収されることだが、AOL(イスラエルの会社Mirabilisが開発)によるICQメッセージングシステムの買収は、これらの中で最も有名である。また、マイクロソフトなどの大手企業がこの地域に生産拠点や研究センターを設立しているのを見ることができるため、イスラエルはその才能が外部に流出するのを見ることはない。

いずれにせよ、イスラエルのテクノロジーゾーンは、(少なくとも外部の目には)昔は見えなかったものから、この千年紀の変わり目に(ハイテク)地図上に見えるようになった。ソフトウェア開発はメルティング・ポット(多様性のなか)でうまく機能する。あとはホットソースが必要なだけだが、彼らはそれも持っている

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イスラエルとのビジネス経験13年をもとに、イスラエルのイノベーション及び様々な情報を発信。元研究者。MIT Sloan School卒業。 『世界のエリートはなぜ「イスラエル」に注目するのか』東洋経済より発売中。
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