見出し画像

AI時代のキャリアと組織をデザインする〜新たな価値を提供し続けるには

AQUENTでは、様々な業界や職種における最新トレンドや課題、その解決につながるヒントの提供や啓発を行うべく、グローバルで「DIGITALKS」と呼ばれるウェビナーを行っています。

今回、日本では初めての開催となり、第1回目のゲストとして株式会社コンセントの代表であり、インフォメーションアーキテクチャ分野の第一人者でもある長谷川敦士氏を迎え、AI時代の組織とデザインのあり方や、これからのデザイナーに求められるスキル・マインドセットについてのお話しいただきました。

この記事では、今回の講演の内容についてご紹介いたします。

【DIGITALKS Contents】
・グローバル人材エージェンシーから見た、生成AIがもたらす業務とキャリアのシフト
(エイクエント・エルエルシー 杉本 隆一郎)
・新たな価値を創出し続けるために:AI時代の組織とデザインのあり方
(株式会社コンセント 長谷川 敦士 氏)
・これからのデザイナーに求められるマインドセットとスキル
(株式会社コンセント 長谷川 敦士 氏)

グローバル人材エージェンシーから見た、生成AIがもたらす業務とキャリアのシフト

セッション第1部では、エイクエント・エルエルシーの代表 杉本が、AI導入にあたり企業が抱えている現状課題について触れ、エイクエントが専門としているクリエイティブ・マーケティングの領域において、どのような業務のトランスフォーメーションが発生しているのか、実例をもとに解説しました。

***************************************

生成AI活用の現状

生成AIの認知度は上昇傾向に

87%の日本企業が社内・外向けの生成AI活用を実施・検討している中で、多くの企業が人材・ノウハウ不足に苦しんでいるというPwCの調査結果も見られます。

そのような状況下で、企業・組織として、社内または社外向けのサービスでどのようにAIを活用できるのか。デザインやマーケティング領域へどのような変化や可能性をもたらしているのか。どう変化に順応し、プロフェッショナルは新たなスキルとして身につけていくべきなのか。これらの点について、ウェビナーでは掘り下げていきました。

コンテンツ制作やデザイン組織に革命を起こす生成AI

エイクエントでは、生成AIをはじめとする新たなテクノロジーを積極的に取り入れ、様々なツールを統合することによりマーケティング戦略を向上させ、業務効率を高めています。いくつか現在取り組んでいる実例や、将来的に見据えている活用について、ご紹介しました。

アイデア創出

ChatGPTやGeminiなどを活用し、オーディエンスのエンゲージメントデータを分析し、ターゲット市場に響くコンテンツのアイデアを生み出すことが可能に

コンテンツのアウトラインと原稿作成

AIがコンテンツのアウトラインと初稿を作成し、人間がブラッシュアップすることにより、AIの効率性と人間の創造性の融合を実現

画像生成

MidjourneyやPhotoshopなどを活用して、指定したテーマやコンセプトに基づいて視覚的に魅力的なグラフィックを作成

クリエイティブデザインの推進

マーケティングキャンペーンやコンテンツ制作のための画像生成を支援:デザイン案を生成し、異なるフォーマットにデザインを適応させることが可能に

パーソナライゼーションの向上

AIを駆使したチャットボットと自動応答を通じて、24時間365日に渡る顧客エンゲージメント、瞬時のサポート提供、永続的な関係構築の可能性

データ分析の効率化

大規模なデータセットを人間よりも速いスピードで分析するAIの能力の可能性

なおこちらのブログでは、マーケティング戦略にAIを活用する方法について、エイクエントの事例を踏まえて詳しく解説していますのでご覧ください。

新たな価値を創出し続けるために:AI時代の組織とデザインのあり方(株式会社コンセント 長谷川 敦士 氏)

セッション第2部では、株式会社コンセント代表 長谷川氏より、UXデザインや情報設計を専門にしている立場から、AIによってデザイン業務がどのように変わってきているのか、そしてこのような時代に組織がどうあるべきかについて、お話しいただきました。

講演の中で長谷川氏は、組織に求められることとして、ベストプラクティスはAIによって一般化されるため、組織は反脆弱性を確保することを目的として一点集中型の行動を避け、分散と行動スピードを重視し、短いサイクルでフィードバックや改善を繰り返す必要があることを述べています。

また、デザイナーがアウトプット(制作)だけでなく、考えの多様性の確保や、新たな仮説の生成に貢献できるところを、組織としてどう活かしていくかを考えなければいけなくなってくることや、問題解決が一般化する中で、組織固有の課題に取り組むことが重要であり、組織内での暗黙知や他者が気づかない情報を活用し、革新的なアイディアを生み出すことが求められていると述べていました。

これからのデザイナーに求められるマインドセットとスキル(株式会社コンセント 長谷川 敦士 氏)

これからのデザイナーに求められるマインドセットについて、長谷川氏が座長を務めた、高度デザイン人材育成研究会の報告資料を基にわかりやすく解説していただきました。

高度デザイン人材育成の在り方に関する調査研究 報告書 【詳細版

(出典:経済産業省)

これからのデザイン人材には、デザインのスキルや哲学、アートだけでなく、リーダーシップやビジネスといったものが求められます。

また、デザインを学ぶことにより「デザイン態度」が習得でき、これまでのデザイナーもそうですが、これからのデザイナーにもこうした「デザイン態度」や「デザインリーダーシップ」が求められ、組織の中では、そうした人材を作っていくことが求められると述べていました。

*********************************

デザイン態度

・不確実性、曖昧性を受け入れる

・深い共感に従事することで、人々の理解のしかたを理解する

・五感をフル活用する

・遊び心を持ってものごとに息を吹き込む

・複雑なことから新たな意味を創造する

出典:安藤拓生、八重樫 文(2017) 論文「デザイン態度(Design Attitude)の概念の検討とその理論的考察

*********************************

デザインリーダーシップ

・デザイン態度の実践

・役割としてのリーダーシップ:意思決定者の明確化

・デザイン専門家としてのリーダーシップ発揮の意義

・価値観の多様性の取り込み方

・プロジェクト主体性獲得としてのリーダーシップ

*********************************

また、ウェビナーの最後に、生成AIを用いることによって生じる課題についても触れています。個々の組織・デザイナーならではの着想やトライアンドエラーの重要性や、そこからの学びの機会の創出などが挙げられています。今後、生成AIを用いた次のフェーズへ進むことは未知で、これからの社会全体の課題であるとのことを伝えていました。

まとめ

今回行ったセッションのまとめとして、AIを日常のツールとして活用し、反復的な作業をAIに任せつつ、人間的な感性を活かして自らの価値を示す分野を見つけることが重要であり、様々なキャリアがある中で、AIに限らず新たなテクノロジーを取り入れ、明るい未来を築くことが望ましいという意見が述べられました。

【登壇者】

長谷川 敦士 氏 株式会社コンセント 代表取締役社長/インフォメーションアーキテクト 武蔵野美術大学造形構想学部 教授 「わかりやすさのデザイン」であるインフォメーションアーキテクチャ分野の第一人者。デザインの社会活用や可能性の探索とともに、企業や行政でのデザイン教育の研究と実践を行う。近年ではサービスデザインの推進、デザイン倫理の研究、デザインの民主化に取り組んでいる。副理事長を務める人間中心設計推進機構において2022年にHCD専門家倫理規範の策定を推進。サービスデザインネットワーク日本支部共同代表、学術博士。