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「コンビニ人間」を自分と重ねた(つらかった話)

最近、アップしたnoteをすぐ下書きに戻すことが増えた。
言葉が溢れてくるのに、「正しく書く」ことにとらわれすぎてるのかもしれない。
何度も見返したのちの「公開」ボタンなのに、数分で「まずい気がする!」と引っ込める。

今日は自分のメンタル不調の頃の話でも。

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3、4年前くらいがメンタル低下のピーク。
「波」がとにかく押し寄せる。
不安の波、自己否定の波、反省会の波、恥という波。

私はずいぶん早い段階で心療内科に行き、薬を数ヶ月飲んでいました。
もう薬不要かも!という時が訪れるものの、また半年後に「ダメだ〜」となる。
きっかけはいろいろ。
仕事の人間関係が主で、母の介護(その始まり)、仲の悪いきょうだいとのいさかい、恋愛、そして「コンビニ人間」。

すごく面白い。
そう感じていたのに、読み終わって起き上がれなくなった。
主人公の女性は36歳、未婚、コンビニ勤務(バイト)
バイトとはいえまるで天職のような働きぶりで、勤務外でもコンビニのことが頭を占める。
いささか機械的な働き方の彼女には、心の通じ合う人間関係はほぼない。

低所得者・非正規を取り巻く偏見や社会問題が浮き彫りになるところは痛烈な批判が込められているようで、すっきりする。
と思っていたのは、主人公の恵子をどこか下に見ながら読んでる間だけだった。
彼女のことを激しく罵る男が出てきてから、私は自分と恵子を同化させてしまった。

この本を読んだとき、私は45歳ごろ。
自分より10近く年下の恵子が、未婚・非正規・コンビニ勤務という生き方を周りにとても見下されているところを読んで、自分自身の世界が反転したように感じたのです。
「これでいい」と満足していた生活が、誰かたちには嘲笑されてたのかもしれない。ずっと。


なんとなく大学の友人たちとの集まりに居心地悪さを感じ始めたあのころ。
私以外みんな既婚・子持ちだから話がだんだん合わなくなって…という自分の内側の理由と思っていた。
だけど、考えてみれば大学の友人との生活水準があまりにも違っていた。
親の職業や出身私立高から「お金持ちだな〜」と学生時代感じていたものの、友人の結婚・出産イベントの前は、自分たちに差があるなんて意識してなかったんですよね。

でももしかしたら、大学時代の友人たちから見える自分はずっと「恵子」だったんじゃないか。
そう思ったら、もう会えないと思った。


そういえば友人の家に招かれたり、子育てプランの話題になったとき(習い事や受験など)、「自分がもし子どもを産んでも、彼女たちと同レベルのものを用意することはできないだろう」と思ったことはあった。
それを決定的に感じたのは親や祖父母の介護の話。
「おすすめの施設」で盛り上がってたある日、帰って調べてみたらすごい豪華施設だった。
やすらぎの郷?みたいな。
子育てだけじゃなくて、介護の話まで合わないとなったら、自分がこの場所にいる意味はないような気がした。
何より恥ずかしくて。

それでも友達でいてくれたんだね。
そりゃ恵子的な自分を、あちらから切るわけにいかないだろう。
どんどん卑屈さが膨れ上がる。
「コンビニ人間」に怒りが込み上げた。

村田さんの他の本も読んだことがあるけど、偏見されやすい人のされやすいゆえんを書き連ねて、「差別する人の醜悪さ」、その批判を一見描いてるように見えるけど、「偏見側の言い分」に「一理ある」と思わせる説得力も与えてしまってるように感じた。
だって気持ち悪いじゃん、生理的になんか、みたいなこと。
36歳・未婚・非正規をそう見る人が実際にいるんだから、みたいなことを浮き上がらせて何になるんだと、怒りながらひどく落ち込んだ。

職場に行くのにスーツもオフィスカジュアルも着ない自分は、「非正規臭」を放ってたんじゃないか?
恵子が36歳でそんな言われ方をするのなら、10近く年上の自分は生きてていいんだろうか。
動悸が激しくなり、慌てて薬を飲んだ。

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非正規というと心配されがちです。
けど、非正規になったばかりのころは働き方改革の波が押し寄せる前で、多忙だった分、給料はもらえていた。
心配する友人にそう話すと、「でも年金がさ」と言う。
いつもそう。
老後に人生勝ち負けの結果が現れるみたいな心配。
結婚をしてないことも、「老後どうするの?孤独じゃない?」と。
今が満たされているんだと話しても、相手の心配で未来に照準を合わされてしまう。

なんか、賃貸の家賃ずっと払ってるのを嘲笑される感じとも似ている。
買っちゃえばいいじゃん、売ればいいんだよと言う側のほうがいかにも正しいというような。
私の考えは浅いかもしれない。
でも自分なりにフレキシブルな環境で生きたいという強い思いがある。
結婚にまつわるフィックス感も、どこか恐れていた。
(とか言うと、単に選ばれなかっただけでしょという雰囲気になる)

そんな自分がメンタルの不調を明かしたら、「ほらやっぱり未婚で非正規ゆえの不安感…」とかなるんだろうか。
友人にはほとんど打ち明けていない。

「かわいそう」と思われることのつらさ。
「満たされている」と思っている自己認識すら間違いなんじゃないかと、読後に脳みそが揺れた。
とかいってメンタルが弱ってたときに読んだ話なので、今読み返したら爽やかな読後感に変わってるかもしれません。
もう開けないけど。

今は、あのころみたいに波に襲われることがなくなった。
嘲笑&アドバイスされる…と感じた人ととことん距離を置いたことは大きかったです。
ひそやかで温かい人間関係だけが今はそばにある。
(それでも寂しく思うことはあるけど、みんなそうでしょう?)

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