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村と怪談 Howling Ghost Viliage/前編

最初に、、、、

はじめまして、Apsu Shusei(アプスー・シュウセイ)です。
文様作家、アートディレクターをしています。

十代の事に四国八十八ヶ所(お遍路さん)をしていたのですが、そこでの体験が元で、
"怖さ"というより"不思議"な怪談を追い求めて、怪談を集め、語るようになりました。

私が企画する怪談のイベントは、音楽やアートなど自分が得意なジャンルと怪談を合わせるミックスカルチャー的なイベントが多く、その一連のプロジェクトを「Howling Ghostシリーズ」と名付けて様々な形で開催してきました。
例えば、
"アートと怪談 Howling Ghost Exhb"
"音楽と怪談"
"マーケットと怪談"
"廃墟と怪談"
"デジタルコンテンツと怪談"
"海外の旅行者向け怪談"
など、、、。

今回、noteで紹介するのは、2019年12月14日に
石川県白峰で開催された"村と怪談 Howling Ghost Village"について書きます。

開催に至った経緯や過程を読者の皆様と追体験出来たらな、、、と思います。


白峰について、

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金沢駅から車で70分、いくつもの山を越えた先、川と山に囲まれた小さな集落、そこに白峰はある。
冬の時期は日本有数の豪雪地帯となる白峰は
昔からの町並みを残し、懐かしさと憧れ、
そして未知を求める探究心を刺激してくれる村だ。
霊山白山の登山口として知られる白峰の起源は縄文時代まで遡る。

そして、"養老元年(717)に泰澄大師によって
牛首と呼ばれる現在の白峰集落の中心となる村が開かれたとされる"

白峰=牛首村、その由来は?

怪談好きとしては"牛首"という名前に惹かれるのは当然である。
アプスー、大興奮。
特に怪談めいた理由で"牛首"と名付けられた訳ではなく泰澄大師が白山を開山した折、守護神として牛頭天王・十二神将などを祀った事が由来で「牛首」の名はこの「牛頭」を語源としているそうだが、村の看板には「村の形が牛の頭の形に似ていた」と書かれている。
この2つの説に隠された第3の説を探り当てたくなるのが怪談好きだ。

その話もいつか纏めてみようと思う。

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白峰の文化とは? 

白峰は地理的・歴史的に他の加賀地域と隔絶されてきたために白峰弁(ジゲ弁)という特殊な方言が発達しているが、村の人と話した印象では聞き取り辛い事は無く、むしろ、その暖かな人柄が印象的で居心地の良い地域。
白峰の中心部を通る100mほどの長さの道に3軒も酒屋がある程に酒好きが多い地域でもある。

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"Howling Ghost Camp"での挫折

少し時間を遡ること2018年10月某日、
Apsuは約50回目くらいの自主企画イベントにして初の野外での怪談イベント"Howling Ghost Camp"の準備の為、和歌山に居た。
急な台風発生で"中止"か"会場変更"を余儀無くされ、その判断を迫られていた。
プレッシャーが自分にのし掛かっている状態で、それはまさに台風の夜みたいに不安定な気分だった。

「前日に会場変更なんか無理でしょう?」
と諦めかけていたが、Apsuの旧知の仲である和歌山のイベンター中谷君に会場変更の案を頼ったところ「Apsuならそう言うと思ったから、
場所は用意しといた」
と準備をしてくれており、会場を変更して開催が出来る事になった。
格好良すぎるだろ!
Howling Ghost Campは野外から室内に移動し、台風の心配も無く開催が出来た。

ただ、このイベントで主催者としての責任の重さを改めて理解したと同時にめちゃくちゃ疲れた、、、
というかプレッシャーがトラウマになった。

自主企画からオファーの出演が増える。

それからはホテルのアートディレクション、
文様の仕事が忙しくなり、
怪談のイベントは自主企画より、
共同企画のアートイベント(アシタノホラー展など)やオファーを受けての出演が多くなった。

自身が率先して動く大変さを考えると、
日々の文様仕事に皺寄せがいくのが目に見えているし、嬉しい事に作品の依頼は日に日に増えていったので、自主企画を立ち上げる余裕は無い日々が続く。

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↑「アシタノホラー展」の様子。

それでも怪談会がしたい!!!

企画の構想はいくつもあった。
いつでも動けるように準備はしていた。

チビル松村との出会い。

2019年5月25日、
「〜 okowa~胎動Ⅱ TAIDOⅡ~」にて、
チビル松村と出会う事により、
今回のHowling Ghost Villageは動き出した。
okowaの会場楽屋で明らかに浮いた雰囲気(緊張の為、他を寄せ付けないオーラ)を漂わせていたチビル松村、その気配に"あの頃の田中俊行"を垣間見たApsuは意を決して話しかけてみると、
実はチビル松村はApsuの怪談会にも来てくれていて、Apsuの友人の後輩という事が判り、意気投合する。

その後、交友を深める中でチビル松村が金沢出身という事もあり「金沢で怪談会、Howling Ghostのシリーズが出来ないか?」という話になったのはとても自然な事。
というのも、チビル松村の本職が
"イベント"や"企画"に特化している為、
道筋は見えやすく、お互いのアイディアを出し合う作業はとても心地良かった。
そこからのチビル松村は早かった。
気持ちの良いスピードでレスポンスを返してくれるチビル松村にはとても助けられた。
イベントを企画する楽しさがゆっくりと蘇る。

チビル松村「金沢の山奥に面白い村があります」

「Howling Ghostを開催するに相応しい
"面白い場所"が見つかったった」
とチビル松村から連絡があったのは8月後半。

それが今回の"村と怪談 Howling Ghost Viliage"の会場である
【山和荘(やまわそう)別館】だった。

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急ぎ、会場視察の準備をする我々。

2019年9月某日。夜23時。
Apsu、チビル松村、Apsuの友人であるHさんは銀座で、山和荘の女将の孫でありチビルの親友Y君を待っていた。
東京から車で約8時間、金沢は白山市白峰にY君の車で向かう為だ。
車中にて改めてイベント趣旨を説明する、、、
実はこの時はとても緊張していた。
怪談に良くないイメージを持つ人もいるし、どうしても暗さを感じてしまうから、「うちではやってほしくない」と言われる可能性もあるからだ。
しかし、Y君は快く了承をしてくれた。
新たな仲間を得た瞬間。

「素敵なイベントになるな」と確信した。

白峰へ向かう車の中、我々は松原タニシの足取りを追う。

車は一度、福井県へ。
東尋坊付近にて彷徨う松原タニシさんを車で拾い、近隣の心霊スポットなどを散策。

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回り道をしつつ約10時間以上の長旅だったが車内は明るく楽しかった。
みんなで何処かに行けるのが嬉しかった。

白峰に到着したのは昼前。

はじめまして、白峰!!!

初めて訪れた白峰、
心地良い肌寒さが村の静寂と重なり、
どこか懐かしさを感じる。
耳をすませば、至る所から“水の音"が聞こえてきて、この村の豊かな水源を想起させるには充分であったし、水の豊富な地はお酒や料理が美味しいからね!!

あと温泉!!!
温泉大好き!!
サウナも!!!

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怪談+温泉、それってきっと奇跡なんだよ

白峰で怪談会を開催したかった理由に“温泉"がある。
白峰、その中心に位置する場所に、
地元木材を活用して建てられた
温泉施設「白峰温泉総湯」があり、
この温泉に入ってみたかったし、
温泉上がりに怪談を楽しめる贅沢さをお客さんと共有したかった。
「白峰温泉総湯」は天然温泉100%!!!
源泉の泉質はナトリウム炭酸水素塩温泉で、入った瞬間に肌がツルツルになるのが判る。
湯上がりの肌が絹のようにスベスベになることから「美人を生む絹肌の湯」とも言われているだけあって、めちゃくちゃ気持ち良かった。

サウナも素晴らしく、露天風呂から見れる白山山峰の風景は外気浴との相性が良く、速攻で整う。

整った頭と至った心が、
白峰が「この地で怪談会を開け」と囁いた。

白峰の郷土料理「堅豆腐」

入浴後、お腹が減った我々は地元食材を
使った料理を提供してくれる食堂へ向かう。
白峰の名産として知られる大きな"なめこ"を使った蕎麦や、堅豆腐を食べる。
"堅豆腐"とは白峰で昔から食べられている、しっかり重石を乗せ、ぎゅっと固めた旨味が詰まった豆腐。
地元の人は、この堅豆腐が当たり前で、
麻婆豆腐などにも堅豆腐を使うそです。
あと堅豆腐カレーも美味しかった!

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山和荘へ挨拶!

温泉も入って、ご飯も食べて、、、
昼寝がしたくなったが我慢。
次は会場予定地の「山和荘別館」に挨拶だ。

いくら、山和荘の孫であるY君が会場利用を快諾してくれているいる状況ではあるが、
山和荘の持ち主である"女将"さんから会場を使用する許可を得れないと開催は出来ない。
緊張の瞬間ではあるが、
Apsuはこういった交渉の駆け引きはめちゃくちゃ得意!!
お客さんから怪談を聞き出す為に培った技術だ。

しかし、駆け引き等は必要は無かった。。。。

Apsu、、、大人の世界に慣れすぎてしまったんだろね、笑顔から始まるコミュニケーションを忘れてたのかも、反省。

女将は温かい笑顔で、長旅を経てきた我々を労ってくれた。
最近、忙しくて笑顔を忘れていたタニシさんも女将の笑顔のおかげで、随分と柔らかい顔になっていた気がする。

女将、快諾!!!!!!!

女将が山和荘を使用する事に快諾してくれた事により、村と怪談"Howling Ghost Village"の
開催が決定した瞬間、みんなも笑顔になったし、訪れたお客さん達が笑顔になるイベントになる事を確信。

山和荘の幽霊

山和荘の歴史などを女将から伺う中で、
「山和荘別館には幽霊が出るよ」と女将が嬉しそうに語り出した。
山和荘別館の一階には来訪者に挨拶する霊や押し入れの中にスゥーと入っていく霊が居るそうだ。
「怪談会を開催するにはぴったりな施設ですね!」と一同が笑い合う。

この幽霊は目撃者も多数居るようで、『イベント当日にも出てきてくれるんじゃないか?』と期待が高まる。

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そしてイベントは動きだす。

会場が決まったら、
一気に動き出すのがイベント。
出演者、日程、機材などなど。

今回はチビル松村が居るので、
【出演者交渉、宣伝、日程、機材、スケジュール】などはApsuが担当。
【デザイン、時間、山和荘との交渉】はチビル松村が担当。
と、分担が出来るので助かった。

「怪談師達の慰安旅行」

初期構想にあった通り、
出演はApsu Shuseiチビル松村松原タニシ田中俊行が決定。
そこにフライヤーデザインを担当してくれた深津さくらが出演者でも参加、そしてHowling Ghostシリーズではお馴染みの建築家であり怪談蒐集家でもあるワダ君が参加と早い段階で出演者が決まったのは、やはり"白峰で怪談会"という魅力的なイベントに興味を持ってくれたからだろう。
この辺りから、Howling Ghost Villageの
サブタイトルは「怪談師達の慰安旅行」となった。

フライヤーデザインは深津さくら。

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深津さくらさんのフライヤーも仕上がり、宣伝を開始。
県外からもお客さんが来てほしかったので、山和荘の魅力も伝える事を頑張った。
その結果、早い段階で満席を予想出来る集客率となり、つまりは安心してイベントの中身にお金をかけて更に補強していける事になる。

旅の思い出。Howling Ghost Villageのお土産

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ある程度の収益化が見込める為、機材の購入を決めるとともに、"旅の思い出"になる物の制作を決定。
深津さくらさんがデザインしてくれたフライヤーの絵を使ったポストカードとステッカー。
そしてチビル松村がデザインしたHowling Ghostお札ポストカードと金沢と白峰をモチーフにしたステッカーの制作をする事に。
ポストカードやステッカーは売れてもあまり収益にはならないが、お土産としては抜群なので"赤字にならない程度"なら作るべき。
結果的に素晴らしいデザインのおかげで"赤字にならない程度"に売れた。

旅の思い出にちょうど良かったでしょ?
まだ少し残ってるけどね!!

そのうち、Howling Ghostのweb shopでも作って販売しようかな。

ありがとう、ありがとう、満席!!!

予約も順調に入り、イベント開催1週間前には満席となり、ひとまずは安心してイベントが行える事になり、あとは当日、来場者の満足度をいかに上げて、安全に楽しんでもらえるかだ。。。
それは同時に参加してくれる怪談師達をいかに楽しませるかと同義であり、主催者がいかにして楽しみながら周りを見れるかという事なんだけど、今回はチビル松村を始め、様々な協力者が居るおかげで、あまり心配はしていなかった。
むしろ、ワクワクが止まらない!

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さぁ、次は"Howling Ghost Village/中編"
https://note.com/apsushusei/n/nefacbddcd5eb

カバー写真=秀