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小説家たちの日課 vol.1 日常の風景に登場人物を落としこむ(吉川英梨さん)

 新しい物語を生み出す「小説家」という仕事。その仕事をしている人たちは、どのような日々を送っているのでしょうか。どのようなことに目をとめて思考や創作のヒントとし、また何に癒しを見出したり活力を得たりしているのでしょうか。

 本連載では、小説家のみなさんたちに「創作に役立っている(かもしれない)日課」についてお尋ねしていきます。小説家の興味深い日常のワンシーンのなかに、あなたにも参考になる創作のヒントを見つけてください。

 第1回は、警察小説を中心にミステリやハードボイルドなど「読み始めると止まらない」エンターテインメント小説を書き続ける小説家の吉川英梨さんです。

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 新聞を読みニュースを見て、ツイッターで流れてくるトレンドを見る中で、常に「小説のネタになりそうなこと」は探しています。また、登場人物については、日々の生活の中で「こういうとき彼(彼女)ならどうするか」ということを常に想像しながら生活しています。

 例えば、夏休み明けの小学校近くで、朝顔の大きな鉢を抱えて校門に入っていく親御さんをたくさん見かけました。古池慎一(十三階シリーズ)ならどうするか。絶対持っていかないですよね。原麻希(原麻希シリーズ)なら、夫に押し付けるでしょう。碇拓真(新東京水上警察シリーズ)なら渋々、面倒くさがりながら持っていくでしょう。五味京介(53教場シリーズ)なら、積極的に持っていく。
 こうやって、日常の風景の中に登場人物を落とし込む作業を自然とやっています。これが、リアルで魅力的な登場人物を作る上で大切な「日課」です。

著者略歴
吉川英梨(よしかわ・えり)
1977年、埼玉県生まれ。2008年に『私の結婚に関する予言38』で第3回日本ラブストーリー大賞エンタテインメント特別賞を受賞し作家デビュー。著書には、「十三階」シリーズ、「女性秘匿捜査官・原麻希」シリーズ、「新東京水上警察」シリーズ、「警視庁53教場」シリーズ、『雨に消えた向日葵』や『ブラッド・ロンダリング』などがある。

*吉川さんの最新刊は、人気作家4人が競演する警察小説アンソロジー『刑事の灯』です。

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