見出し画像

【書評】リーダーの戦い方(内田和成著)

戦略コンサルタントのアップルです。

先日、スラムダンクの登場人物である深津一成(山王工業主将)と楽天創業者の三木谷氏を対比する記事を書きました。同じリーダーでも二人は真逆といっていいほどタイプが違う、敷衍すると、リーダー像というのはとても多様であり、だからこそ面白いということをいいました。

そんな中、ふと最近出版されたリーダーについて論じた本をみつけました。タイトルにある「リーダーの戦い方」(内田和成著)です。今年の6月に出版されています。著者の内田氏は、元ボストンコンサルティンググループの日本代表で、「仮説思考」に代表される数々の著作がある方です。内田氏の最新作が本書になります。

早速手にとって読んでみたところ、アップルの主張と通ずる部分があると同時に、リーダーの分類についても面白い考察をしているのでご紹介します。

リーダーシップに正解はない

本書の第一章の見出しです。リーダーはこうあるべきと一つに決めつけようとすること時代がまず間違っている、リーダーというのは様々なタイプがあってしかるべきであるということが最初に宣言されます。

分かりやすい例として、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の比較をしています。いずれも戦国時代を代表するリーダーですが、タイプは全然異なります(ほととぎすへの対応でも3人のタイプの違いはよく語られます)。織田信長は革命を起こした人、豊臣秀吉は革命を成就させた人、徳川家康は永続的に続く仕組みをつくり上げた人で、その性格もマネジメントスタイルも大きく異なりました。それぞれの特徴や強み・弱みがあり、どれがいい悪いという話ではありません。

また、求められるリーダーは、おかれた状況や環境によっても変わってくるということが強調されています。BCGダイヤモンドというフレームワーク(企業の発展を創造→成長→優位性構築→効率化の4段階のステージで表現したもの)を引用しつつ、各ステージで求められるリーダー像は全然変わってくるということが書かれています。

画像1

例えば、事業を最初に創る創造のステージでは、アントレプレナーのようなタイプのリーダーが求められます。また、優位性構築ステージでは、差別化などの競争戦略が肝になるため、戦略的思考に長けたストラテジストのリーダーが求められるというわけです。

このように、完璧な人間が存在しない以上、リーダーには強み弱みとそれに応じた多様なリーダー像があること、求められるリーダーシップはおかれた状況や直面する課題によっても変わってくる、というややもすると忘れられがちなことがしっかりと書かれています。

リーダーの4分類

第三章でコンサルが良くやる分類論が語られます。本書の一番面白い内容がここです。

いわゆる田の字が出てきます。横軸が右脳型か左脳型か、縦軸が戦略で引っ張るか実行で引っ張るかで、4象限に切っています。

右脳×戦略:ビジョナリー
左脳×戦略:軍師型
右脳×実行:率先垂範型
左脳×実行:堅実派

note貼り付け用

この4タイプで分類しきれているのかという疑問は若干ありますが、単純化して分類する場合にはなかなか面白い分類だと感じました。

ビジョナリーは、スティーブジョブズや孫正義や坂本竜馬のようなリーダーで、でっかいビジョンを描きそれに対する共感を喚起しながら組織をぴっぱっていきます。

軍師型は、まさに戦略コンサルタントのようなタイプで、ロジカルに思考を重ねる中で納得感ある戦略を導き出し、それに基づき組織を引っ張っていくタイプです。楽天の三木谷さんや富士フイルムの古森さんがこのタイプに当てはまるとされています。

率先垂範型は元ローソン社長の新浪さんや本田宗一郎、堅実派はセブンイレブンの鈴木敏文さんが代表例として挙げられています。

このように実名とともに4タイプが語られており、説得力があります。リーダー的な立場にある人は、「はて、自分はこの4タイプのどれに近いだろうか?」と考えてみるのも面白いと思います!

リーダーの力を発揮するための方策

本書の後半では、「完璧なリーダーなどいない。では、その中で、どうやってリーダーとしての力を発揮するか?」という話に入っていきます。

まずは、自分の得意なリーダーシップスタイルを理解するのが出発点になります。先ほどの4象限の中でどれに当たるのか?その特徴を生かすために、何を心がければよいか?こういうことをしっかり自省するということです。

その上で、3つの「強化策」を解説しています。

①得意技の幅を広げる
②他人の力で補完する(違う強みを持ったパートナーを見つける)
③得意技が生きる場所を求めて飛び出す

特に②の視点がすごく大事だとアップルは思いました。人間は自分と近いタイプの人に親近感を覚え、仲良くなる傾向がありますが、経営などにおいては自分と真逆なタイプの人を側近に置くことが相互補完の観点で重要ということです。

例えば、社長がビジョナリーのタイプであれば、左脳に強い軍師型の人材を参謀に据えたり、地味だけど愚直に実行してくれる堅実派の人材で脇を固めておくことが重要になります。

これと同じようなことは、戦略コンサルティングの仕事でも言えます。戦略コンサルタントと一口に言っても様々なタイプがいます。右脳(発想力)でバリューを出していくタイプもいれば、ロジカルシンキングが異常に強くて最適解を見出していくタイプもいますし、空中戦が得意なタイプもいれば愚直な地上戦(顧客密着)が得意なタイプもいます。

アップルの経験上も、真逆のタイプがタッグを組んだ方が、コンサルティングプロジェクトは円滑に進みますし、最終的なバリューもたくさん出る感覚があります。

他人の力で補完するというのは、当たり前のことではありますが組織やチームで価値を発揮していく上ではとても大事なことだと改めて感じました。


今回はここまでです。

「リーダーの戦い方」、サクッと読めて面白い本なので、本記事を読んで興味を持たれた方はぜひ読んでみてください!

最後までご覧いただきありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?