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事業開発で不安がよぎったら ~競争優位性は自らコントロールできる~

戦略コンサルタントのアップルです。

事業開発に携わっている方も、アップルのnoteの読者の中には一定数いらっしゃることと思います。アップル自身も、戦略コンサルティングの中でクライアントの事業開発に携わることがあります。

事業開発というのは難しいです。意思、知恵、リソースをフルで投下しないと大概はうまくいきません。これらをフル投下しても失敗することもあります。

このように難しいので、当事者はそのプロセスにおいて不安が常に付きまといます。不安に向き合いながら、不安を自ら払拭しながら、推進していかなければなりません。

今回は、こんな不安がよぎったとき、ひょっとしたら精神安定剤になるんじゃないかというお話をしたいと思います。

はじめに

日本経済の成熟化(悪くいくと、成長の頭打ち)が続いている中、既存事業だけだと成長が頭打ちになる企業もかつてより増えてきているかと思います。コンサルティングで接する大企業の多くも、既存事業の成長の陰りに少なからず危機感を抱いています。

そうした中で力を入れないといけないのが事業開発です。次の成長の種(事業機会)を探し、それを新たな事業として具現化していく。簡単なことではありませんが、これにいよいよ本腰を据えて取り組まないといけない企業が増えています。

事業開発というのは、一般にとても難しいですし、必ず成功するものでもありません。立上げまでに一苦労するのはもちろんのこと、晴れて事業を立ち上げたとしてもその後息詰まることも往々にしてあるでしょう。事業を仕込んでいるうちに、競合に先にやられてしまうこともあり得ます。

このように、事業開発は一寸先は闇。不確実性がある中、手さぐりで、試行錯誤を繰り返しながらやっていくものであり、当事者としてはしばしば不安になるものです(我々コンサルタントは厳密には当事者ではありませんが、プロジェクトでは当事者と同じ気持ちで事業開発に臨みます)。

そのため、不安をどうマネージするかがポイントになります。

事業開発に取り組むレベル

事業開発に取り組むにあたっては、その踏み込み方に数段階のレベルがあるということを認識する必要があります。

ビジネスチャンスは皆に平等です。情報がクローズになっていない限りは、誰でもそのチャンスを認識することはできます。情報化社会になる一昔前までは情報にアクセスできる人・できない人という情報格差があったのかもしれませんが、現代ではそういうことはほとんどないと思います。

一方、目の前に転がっているビジネスチャンスを「いかにモノにするか」はその企業・人次第です。つまりビジネスチャンスに対してどこまで踏み込むかという観点で、取り組むレベルが決まってきます。具体的には、ざっくりとわけると6つのレベルに分けられると思います。

レベル0:事業機会を認識する
ビジネスチャンスを認識して、「ふーん、そうか」で終わる

レベル1:事業機会を検討する
そのビジネスチャンスを多少なりともモノにしようとアクションを起こす。大企業だと、経企や事業開発部の担当が、調査や分析に着手する。

レベル2:体制をしっかり組む
担当レベルで属人的に検討するのではなく、しっかりと検討チームやタスクフォースを組んで、相応のリソースを投下して検討する。コンサルティングファームを起用するのもこのレベル。

レベル3:検討の過程で粘る
事業開発は、先述のとおり試行錯誤の連続。検討の過程で何度も壁にぶちあたるのが一般的だが、そこで心折れずに粘って壁を乗り越えていく。

レベル4:事業立ち上げまでもっていく
幾多の壁を乗り越えて事業の立ち上げまでもっていく。ビジネスモデルを詳細に詰め、営業・開発などの実行体制を整え、事業計画をつくる。ここまでもっていくには意思と粘りが必須。

レベル5:適切な戦略で成長させる(=成功)
事業立ち上げの後、事業がすくすくと成長していくには、正しい戦略が不可欠。正しい戦略を描き、それを着実に実行していく中で、事業を軌道に乗せていくのがこのレベル。

各レベルに到達する企業の割合

このように6つのレベルに分けたとき、あるレベルで足踏みしたり頓挫してしまう企業も多くあります。レベルを駆け上がるにつれてどんどん大変になっていくからです。

その数値イメージが下図です(アップルのラフな感覚に基づく数値なので、実態とはズレている可能性がある点、ご容赦ください)。

事業開発

事業機会を認識する企業の数を便宜上100としたとき、レベルを1段上がるにつれてどれくらい企業が減っていくかのイメージを示したものです。

事業機会を認識しても、実際に検討する企業は一部です。ここで3割くらいに減ります。さらにそこからしっかりと体制を組み、粘りに粘って、立上げまで持っていける企業は6%くらいでしょう。その後事業を軌道に乗せられるのは2%程度とごくわずかなはずです。

事業化に成功して陽の目をみる企業の裏側には、これだけたくさんの表に出ない死屍累々があるということです。実際、戦略コンサルティングで様々な大企業と接していても、検討が途中で頓挫したり、お蔵入りになってしまうテーマはたくさん見かけます。

この図をご覧いただくと、「あー、やっぱり事業開発ってのは相当大変で難しいんだな。下手に手を出すもんじゃないな」と思われる方もいらっしゃることと思います。

いや必ずしもそうじゃないんだ、ということをここからお話していきたいと思います

信じる者は救われる

先ほどのグラフを脚色してみたのが次図です。

事業開発2

青字でハイライトした部分が、事業開発の当事者が認識しておくべきとても大事なことだとアップルは考えています。

【意思とリソースでのコントロール】
まず、レベル2や3は、会社の意思や投下リソースで乗り越えうるものであるということを書いています。つまりコントロールできます。ある事業機会に対して「本気」で取り組むことを腹決めすれば、しっかりとした検討体制も組むし、壁にぶちあたっても粘って乗り越えようとするでしょう。

【知恵でのコントロール】
また、事業を適切に立ち上げて適切に成長させるには「知恵」が必要です。逆に言うと、思いっきり知恵を絞れば、レベル4や5に到達する確度は高まります。戦略ファームの知恵を借りるのもその一つのやり方でしょう。


このように、どのレベルまで駆け上がるかは、意思、リソース投下、知恵の絞りだしである程度コントロールできるわけです。

逆に言えば、こうしたことを腹決めした時点で、レベル2には到達したことになり、実質的な競争相手は100社ではなく15社まで絞られます。100社が同じ市場を狙っていると考えると勝てる気がしませんが、15社まで競争相手が絞られていると考えれば勝てる気もしてくるのではないでしょうか?

意思をもち、信じて邁進する者は、それ自体が競争優位性になる。

こういうことだと思います。事業開発を進める過程で不安がよぎったときには、このように自らを勇気づけることも大事なのではないかと思います。


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!

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