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戦略コンサルタントの人材育成の在り方の変化

戦略コンサルタントのアップルです。

戦略コンサル業界の構造変化の第三弾です。第一弾ではクライアントのニーズの変化を、第二弾ではコンサルタントの価値の源泉の変化をお話しました。両記事ともそこそこ多くの方にご覧いただいています。第三弾ではこれらを踏まえた人材育成の在り方の変化について書きます。

事業会社の事業企画、事業開発、マーケ・営業の人材育成にも示唆があるのではないかと思いますので、ぜひコンサル業界以外の方もご覧になってください!

<想定読者>
・コンサル業界の方(マネージャー層、若手)
・事業会社で育成をミッションに負うマネジャー
・人事・人材開発に従事する方

前回までの振り返り

簡単に前回までの2つの記事のポイントをおさらいします(※詳しくは記事をご覧ください)。

第一弾:戦略ファームの提供価値進化の系譜
第二弾:戦略コンサルタントの価値の源泉の変化

・戦略コンサルティングのサービスは、クライアントのニーズの変化を踏まえ、戦略策定→実行支援→イネーブラーと進化を遂げている(現在は実行支援からイネーブラーへの移行期)

・サービス内容の進化に伴い、戦略コンサルタントの価値の源泉も変化しつつある

・具体的には、情報のサヤが抜きづらくなってきたこともあり、インタビュースキルや情報の咀嚼力が肝になりつつある。加えて顧客と協働する機会が増えてきていることから、ファシリテーションスキルの重要度も増している

・これは、未経験者としては価値を付けづらい構造になってきていることを意味するため、戦略コンサルティング業界に飛び込む若手はそれを理解した上で覚悟をもって飛び込む必要

このようなお話をさせていただきました。一見外部からはそんなに変化していないようにみえる戦略コンサルティング業界も、内部ではこうした地殻変動が起きつつあります。

特に、若手に求められるケイパビリティが変わりつつあることが大きな変化ポイントです。アップルのようなファームのシニア層は、そういう中でどうやって人材育成をしていくかが課題になります。

人材育成の考え方というのは人それぞれなので、あくまで私見にはなりますが、アップルが実際に意識していることも含めて何点か書きます。

インタビューの場数をとにかく踏ませる

単なる情報のさや抜きが難しくなった中で、インタビュースキルが重要になるという話をしました。生身の人間から深い情報、クライアントに示唆ある情報をいかに聞き出せるかというスキルです。

戦略コンサルタントに求められるスキルというのは大体場数や経験が必要になるのですが、このインタビュースキルも同様です。数をこなす中で質問の仕方のテクニックやディスカッションのやり方を学んでいきます。

なので、場数を踏ませることがまず大切です。インタビューというのはちょっと面倒で、指示しないと腰が重くやらない人もいるので、マネジャーが意識的に場数を踏ませるよう働きかけることが大事です。

加えて、インタビューの「準備」を徹底させることも大事です。

一般的に、戦略コンサルタントのインタビューは、10枚程度のパワポのスライド(インタビュー資料と言います)を準備した上で臨みます。それをこちらからプレゼンした上で、インタビューに入っていくのです。インタビュー資料に入れ込む内容は、概ね以下です。

①インタビューの目的や背景
②市場や業界をこう見ているという見立て
③その中で我々が持っている事業機会仮説やビジネス仮説
④インタビューで聞きたいこと

この資料のクオリティによって、インタビューの質は左右されます。特に大事なのが「仮説」と「聞きたいこと」です。筋の良い仮説をぶつけ、的確な質問をすることでぐっと深いところまでディスカッションできるので、ここの準備を怠らないように働きかけることがポイントになります。

スモールミーティングは思い切って任せる

イネーブラーへとサービスが進化しつつある中、顧客と協働するプロジェクトも増えてきています。こういうプロジェクトだと、クライアントのメンバーと毎週のようにディスカッションしながらアウトプットを二人三脚で一緒に作っていくことになります。必然的にミーティングの数は多くなります。

そういうスモールミーティングは、思い切って任せることが大事だとアップルは考えています。まだ経験の浅いコンサルタントに任せることは少し勇気がいる部分もありますが、現場に放り込んで任せてみる。一人で放り込まれたら自分で何とかやらないといけなくなるので成長を促せます。

これは、ファシリテーションスキルが肝になってきていることとも関係します。従来のように戦略ファームがアウトプットを作って顧客に提言するというスタイルだと、若手にファシリテーションスキルはあまり求められませんでした。ですが、顧客と協働でアウトプットを作っていくスタイルでは、議論のファシリテーションが肝になります。

これも「場数」と「自分で回さないといけないというプレッシャー」が肝になるので、そういう育成機会を能動的に与えることがとても大切だと考えています。

論点でコミュニケーションする

これは従来から大事なことではありますが、その重要性は高まってきている印象です。

コンサルティングファームでも事業会社でも同じですが、上司が部下に対して日々指示を出しながら仕事を進めていきます。論点でコミュニケーションするというのは、その指示の出し方の話です。

「こういうことを調べといて」というように、作業やタスクで指示することをよくやりがちですが、これは育成上あまりよくありません。指示を受けた部下は言われた作業だけをする作業マシーンになりがちです。これだと育成効果は弱いです(作業指示の狙いや背景をくみ取って、指示されたこと以上にストレッチしてやろうとする人材はもちろんいますが)。

そのため論点で指示を出すことが大事です。「こういう論点に答えを出したいから、そのための調査や分析をしてみて」。こういう投げ方です。こういう投げ方をすると、論点に答えを出すために必要なことは試行錯誤してやらなければならなくなります。

・どういう情報が必要なのか?
・その情報をどういう手段でとってこればいいか?
・誰にインタビューをすればよいか?
・集めた情報をどう加工・分析すれば、論点に対する仮説が作れそうか?

こういうことを考えながら仕事に向き合うことになります。論点に答えを出そうとする中でコンサルタントに必要なスキルが総合的に磨かれていくので、論点でコミュニケーションをとるのはすごく大事だと思います。

ちなみに、これを上司の側が意識することは、「無駄な作業を抑制する」上でも大事だと思います。思い付きで作業ベースで指示をすると、結果的にそれがあまり意味がない(価値につながらない)リスクが高まり、部下のリソースを無駄に使うことになるからです。

この論点でコミュニケーションをとるというやり方、コンサルティング業界以外ではあまり意識されていないように感じるので、事業会社のマネジャーの方にはお勧めです。

即戦力採用やアウトソーシングも進む(はず)

以上で話したことは、あくまで「内部育成」を念頭に置いた育成のポイントです。こういう工夫をしながら育成するにしても、育成には結構な時間がかかります。

人的資本の蓄積の時間をさらに早めるための手段は「外部から調達する」ということになります。競合のファームから経験者を採用したり(育成コストを買う)、最近だとフリーランスのコンサルタントも増えてきているのでそういう人材にアウトソーシングをして進めていくというやり方があります。人材育成が昔より難しくなってきたことを踏まえ、こういうトレンドは今後ますます強まっていくように思います。


今回はここまでです。
最後までご覧頂きありがとうございました!

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