見出し画像

勝ちパターンの重要性と確立のための3つのプロセス

こんにちは。
戦略コンサルタントのアップルです。

今回は「勝ちパターン」というものがとても大事であるということを、私自身のエピソードや論拠とともにお話をしたいと思います。アップルがこれからもっと研究を深めていきたい、最も関心あるテーマの一つです。

この勝ちパターンという言葉。よく聞く言葉だし、当たり前に聞こえるかもしれませんが、ビジネスにおいて勝ちパターンを認識し、それを磨いていくことは、どの企業においてもとても重要だと戦略コンサルティングの仕事を通じて感じています。

まずは、私が最初に勝ちパターンの重要性を実感したエピソードをお話しましょう。時は数年前にさかのぼります。

アップルが一兵卒の頃のエピソード

現在の戦略ファームで今でこそシニアのポジションにおさまっていますが、入社して2~3年間は一兵卒として試行錯誤の中コンサルティングワークに取り組んでいました。

いろんな業界、テーマのプロジェクトを経験しましたが、その中で何度かビジネスデューデリジェンス(以下、ビジネスDD)のプロジェクトを経験しました。その中のひとつで、勝ちパターンが共通認識になるとブレイクスルーになると実感する経験をしました。

ビジネスDDとは、事業会社やPEファンドなどが買収を検討している企業の経営・ビジネスモデル・戦略を精査するプロセスです。これを短期間で深くやる必要があるため、戦略ファームが起用されることがあります。当時私がアサインされたプロジェクトも、とあるPEファンドの買収案件のビジネスDDでした(クライアントはそのPEファンド)。

ビジネスDDでは、買収対象の企業(対象会社と呼ばれます)の強みや成長性を徹底的に分析します。対象会社から膨大な資料やデータをもらって分析するのに加え、経営陣へのインタビューを通じて対象会社の強みや特徴が何なのか、逆に弱点はないか、ということを掘り下げます。

そのプロジェクトでも、プロジェクトの初期に社長はじめ経営幹部に対するインタビューを行いました。私ひとりではなく、パートナーやマネージャーのシニアメンバーも含めチームでインタビューを行ったのですが、そのときにパートナーがいくつかのキークエッションを投げかけ、対象会社の勝ちパターンを見事に浮き彫りにしたのです。

どういう会社かはここでは言えませんが、BtoBの事業で急成長している会社でした。その成長ドライバーが何か、それを支える強みは何か、大口化した成功事例は何かということをインタビューで掘り下げた結果、

「ああ、それはつまり、御社の勝ちパターンはこの3つのステップで構築されているということですね」

とパートナーが言語化したのです。それに対し対象会社の経営陣は、

「うまく言語化できていなかったが、言われてみるとそのとおりだ!
 それこそまさにうちの勝ちパターンです。」
「この短時間の会話で見抜くなんてすごい・・・」

と目からうろこが落ちたような反応をされ、そこから我々の分析も一気に進みが良くなったのです(ちなみにビジネスDDの結果、その対象会社は素晴らしい会社で今後も高い成長が見込めるという評価になり、PEファンドは買収をしました)。私の長年の戦略コンサルの経験の中で「デキる戦略コンサルってすげーな」と最も強く感じたシーンでした。

このとき、事業において勝ちパターンを確立し、かつそれを言語化して共通認識にするのはとても大事なことなんだなと実感したのです。

勝ちパターンを確立するための3つのプロセス

勝ちパターンとはもうちょっと具体的に考えてみるとどういうことでしょうか?私なりにシンプルに定義すると、

勝ちパターンとは、自社なり(自分なり)の成功体験のエッセンスを形式知化し、再現性を担保したもの

となります。会社にも個人にも当てはめうる概念です。

ここでは会社を主語で考えると、勝ちパターンを確立するためには3つのプロセスが必要になります。

①成功事例を(いくつか)創出する

②その成功事例の成功要因(Key Success Factor)を分析し、形式知化する

③形式知化された成功要因を組織で共有し、それをもとに戦略や戦術を組み立て、成功事例を再現する

この中で特に②が重要になります。①だけだと、その成功事例を創出したごく一部のハイパフォーマーの暗黙知にとどまってしまい、再現性が担保されないからです。②の形式知化を経ることで、はじめてうちの勝ちパターンとは何ぞやということが言語化され、組織の共通認識となるのです。

コンサルタントの立場で様々な会社を見ていると、①のステップでとどまってしまっているケースが散見されます。何人か成果を上げているすごい人はいるのだが、「点」にとどまり、広がっていない。こういう状態をよく見かけます。②まで踏み込みきれていないのです。

勝ちパターンの確立というテーマは決して新しいものではないですが、②や③のプロセスにまで踏み込んで勝ちパターンを確立することがブレイクスルーになる会社は結構たくさんあるのではないかと思います。

戦略、勝ちパターン、戦術

さて、この勝ちパターンは、戦略や戦術とどういう関係にあるのでしょうか?私のイメージは、戦略と戦術の間に位置するのが勝ちパターンであるというものです。

戦略とは平たく言うと「目標達成のためのシナリオとリソース配分」です。勝ちパターンはこのレイヤーよりは低いレイヤーにあります。また、戦術は平たくいうと「戦略実行における局地戦での戦い方」です。勝ちパターンはこの局地戦のレイヤーよりは高いレイヤーにあります。ですので、


戦 略
勝ちパターン
戦 術

という階層で捉えるのが最もしっくりきます。

いわば、戦略と戦術の間の”ノリシロ”になるのが勝ちパターンなわけです。

一般に戦略と戦術との間には大きなギャップがあります。戦略と戦術のギャップが大きすぎて戦略実行がうまくいかないケースを多く見かけます。戦略を着実に実行に移すためにも、戦略と戦術の間のノリシロである勝ちパターンの確立が大事という言い方もできるかもしれません。

勝ちパターンの研究を今後も深めていきます

冒頭書いたとおり、この勝ちパターンというのは非常に興味深く、アップルが個人的に研究を深めていきたいテーマでもあります。

今後も、私自身の理解を深めるためにも、「勝ちパターンの作り方の要諦」とか「この会社の勝ちパターンはこうである」といったような話を継続的に記事にしていきたいと思います。

勝ちパターン含め、

・勝ちパターン
・戦略
・ビジネスモデル
・組織・人材論

この辺は最も興味あるトピックなので、継続的に記事にしていこうと思います。

今回はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました!

◆◆◆
質問、コメント絶賛募集中です(必ず回答します)!
記事のコメント欄かpeingまで質問をお寄せください。
https://peing.net/ja/apple_ringo

twitterもよろしければフォローお願いいたします!
@apple_ringo_lcl



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?