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異端iMac G4のデザインを考える(1)〜謎のアームのデザインの意義とは〜

この記事では2002年から2004年にかけて販売されたiMac G4のデザインについて解説したいと思います。一度に全部書く余裕がないので、分割でお届けします。

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この記事で考えたいのは、G4の特徴的なアームのデザインです。

前のモデルにあたるiMac G3にも、後のモデルにあたるiMac G5以降も、G4のようなアームはありません。とくに後のモデルに存在しない仕様というのは、その仕様を廃するだけの理由があるということです。そうすると、G4のアームは、いかなる理由で正当化されるのかが問題になります。

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G4は、まさに2002年から2004年においてのみ正当化されるデザインです。もちろんG4のデザインは現在においても優れたものですが、それは時代背景を踏まえてのことです。

まず、G4の一世代前であるG3までは、ディスプレイにブラウン管を採用していました。この方式のディスプレイは極めて重くて動かしづらいものでした。
それに対してG4では液晶パネルが搭載できるようになり、ディスプレイは極端に薄型化しました。目指したのは、液晶ディスプレイが持っている可能性を最大限に表現するデザインです。

ブラウン管のディスプレイは重くて大きく、角度を変えるだけでも手間でした。それに対し、液晶ディスプレイは軽くて薄く、簡単に扱えます。その特性を活かすべく、ディスプレイは本体から分離され、アームによって本体と接続されました。

たんにディスプレイと本体をつなぐためのアームであれば、G5以降のようにそれほど可動しないアームでも良かったのではないかとも思えます。

しかし、薄くて軽いという液晶ディスプレイの可能性を最大限に表現するデザインとはいえません。アームが可動して、あらゆる方向に画面を動かせるからこそ、このコンセプトに価値があります。薄くて軽くなったディスプレイの可能性は、自由自在に動き回るアームによって表現されているからです。

もともとジョナサン・アイブは、このアームにもう1つ可動軸を仕込む予定だったそうです。これはディスプレイをより立体的に動かせるようにしようとするものです(製品版では画面の高さを保ったまま奥や手前に動かせない)から、ここで説明したG4のコンセプトに忠実なものと言えます。ただ、ジョブズにやりすぎと言われたのか関節は減らされてしまいました。
参考:リーアンダー・ケイニー著『ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー』(日経BP、2015年)

さらに、そのコンセプトを際立たせるために、ディスプレイを支えるアームは、ディスプレイの重さを支えるバネ機構がアーム内に存在し、これによってディスプレイ自体の重さを打ち消しています。これにより、ディスプレイの重さがユーザーを邪魔することもありません。

ただし、ディスプレイの超薄型化によるインパクトは、数年もすれば当たり前になります。iPhoneのフルスクリーンディスプレイが数年経って当たり前になってきたのと同じ話です。そのため、G5以降では、液晶ディスプレイを極端にアピールすことはやめ、現在まで続く一体型のスタイルに落ち着いたのだと考えられます。



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