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iPad Air(第4世代)のデザインはベストではないが、全体としては魅力的な製品

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新しいiPad Airが発売されました。第4世代にあたるモデルです。

Appleはこれまでハイエンドモデルのデザインをローエンドモデルに再利用する方針を取ってきました。しかし、今回はハイエンドモデルのデザインを少し流用しつつも、完全に同じではないという特徴があります。

新規設計と言えば聞こえばいいですが、デザイン面はベストとは言えない状態にあります。

スペック

この世代では、デザインを一新し、現行のiPad Proに準じるデザインになりました。

チップは2020年のはじめに発売したiPad ProのA12Zではなく、A13 Bionicを採用しています。ベンチマークのスコアはProと同等かそれ以上という感じのようです。

格安で最新のチップとフルスクリーンを利用できるようになり、コスパという意味では、魅力的な端末に生まれ変わったと言っていいでしょう。

外観の変化について

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Proと比較すると、ディスプレイが0.1インチ小さくなり、その分ベゼルが太くなっています。これは明らかにProラインナップとの差別化のためのものです。「画面サイズが大きいほど高くなる」というルールに違反しないようにする意味もあるのでしょう。
もとよりディスプレイの仕様はProとは異なるため、Proディスプレイのサイズを揃えてもコスト的なメリットはあまりないのだろうと思われます。

他に、厚みが0.2ミリメートル増えていますが、これは内部パーツの大きさに左右されるので仕方ないところかと思います。とはいえ、Proの設計を流用しているのに、なぜ厚くなるのかは、分解してみないと分からないですね。

あとはWi-Fiモデルでのアンテナラインの消失やフラッシュライトの廃止などもあります。スピーカーの個数も減っています。

アンテナライン廃止については、理由はよくわかりません。Wi-Fiの仕様は変わらないようですから、突然アンテナラインなしで通信できるようになるとも思えません。
そうすると、ProのアンテナラインはWi-Fiとは関係なく、セルラーモデル用に設けられていたのかもしれません(私が知らないだけで常識だったりします?)。実際、セルラーモデルでは上下にアンテナラインがありますし。


Touch IDの位置付け

そして一番気になるのは、Touch IDの採用です。

Touch IDについては、新型コロナウィルスが流行して以来、Face IDよりも便利だという意見がありました。iPhone SE(第2世代)がTouch IDにしか対応していないのを、逆に便利だとほめるレビュー記事もちらほらありました。

ご存知のとおりFace IDの普及前は、Touch IDがメジャーな認証システムでした。

もともとホームボタンに搭載されていましたが、今回のiPad Airでは、ホームボタンが廃止されたので、代わりに電源ボタン(トップボタン)に搭載されました。

ホームボタンのないデバイスにTouch IDが搭載されたことで、今後はiPhoneにも搭載されるのではないかという見方もありました。しかし、実際はiPhone 12にはTouch IDは搭載されませんでした。

このことからすると、少なくとも現時点では、マスクをしていても使えるからとか、Face IDより便利だからとかいう理由でTouch IDを搭載しているわけではありません。あくまでコストの増加を抑えるための手段に過ぎないわけです(Face IDの部品の方が高額であると言われています)。

コロナの影響が続くのもせいぜいあと数年でしょうから、そのためにTouch IDを採用というのはあまり合理的ではありませんし。

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とはいえ、今回のTouch IDの採用により、AppleはフルスクリーンのデバイスでもFace IDを使用しなくてよくなったことには違いありません。今後、iPhone SE(第2世代)やiPad(第8世代)ように 、フルスクリーンでない廉価モデルをフルスクリーンに移行するために役立つでしょう。 

Touch IDのデザイン

さて、フルスクリーンデバイスにおけるTouch IDのデザインを考えてみたいと思います。

Face IDの価値は、デバイスを見るという自然な動作によってロック解除ができるというシンプルさにあります。
一方、Touch IDではセンサーの上に指を置くという意識的な動作が必要になります。また、これによって一手間増える場合があるのがTouch IDの弱点です。

今回のiPad Airはこの問題に対してそれなりの対策をしています。まあ、ホームボタンに搭載されていた頃と同じような仕様ですが、ホームボタン廃止+電源ボタンへの搭載という状況を踏まえてブラッシュアップしています。

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Face IDとTouch IDそれぞれにおける、ロック解除からホーム画面表示までの流れを一覧にすると、下のようになります。いずれもiPadで操作する場合を想定しており、画面がオフになっている状態からのスタートです。

:Face IDの場合
画面タップor電源ボタン押す→(Face ID認証)→画面スワイプ→ホーム画面

:Touch IDの場合
画面タップor 未登録の指で電源ボタン押す→登録した指で電源ボタン押す→(Touch ID認証)→ホーム画面

登録した指で電源ボタン押す→(Touch ID認証)→ホーム画面

括弧書きで示した部分は、ユーザーが意識しなくていい部分です。
Touch IDで認証されると、ロック解除だけでなく、そのまま画面スワイプもなしでホーム画面に移行する仕様になっています。
これによってFace IDの時に必要だった画面スワイプが不要になっているので、実質的な手間数はFace IDによる場合と変わらないということになります。

注目すべきは、最初から指紋登録済みの指で電源ボタンを押す場合は、そのままホーム画面に移行する点です。これはFace IDの場合よりも一手間少なくて済む場合があります。(まあホームボタンが現役だった時代はこれが標準だったわけですが。)

ただし、Magic Keyboardと組み合わせた場合は、Face ID搭載モデルの方がやや便利です。キーボード上の任意のキーを2回押すだけでホーム画面にいけたりするので、楽だったりします。

こうしてみると、キーボードとの組み合わせはともかく、それ以外では第4世代iPad AirのTouch IDは使い勝手の面ではFace IDに大きく劣るものではありません。

Touch IDのリングはどこにいった

Touch IDセンサーの外観についても見ると、少し通常の電源ボタンよりもサイズが大きい程度です。普通の電源ボタンとそれほど見た目に違いはありません。
ホームボタンに搭載されていた時は、ボタンの周囲に装飾的なリングがありましたが、そのような要素もありません。

このリングはユーザーが指をセンサーの上に置いたことを感知するために存在していました。

今回のAppleの発表を見る限りでは、電源ボタンの筐体が同じ役割を担っているようです。

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電源ボタン部分だけがステンレススチール製になっているのが分かります。
ホームボタンのリングもステンレススチール製でした。Touch IDセンサーとの位置関係から見ても、電源ボタンの筐体部分が同じ役割を担っていると推測できます。

これはセンサーが小さいので、指紋認証の精度的にこれ以上センサーを小さくできないという事情がありそうです。それに電源ボタンの場合はサイズ的にも位置的にも目立ちにくいので、装飾的要素は不要でしょう。

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意図的にランクを落とすわけ

デザイン面の進化のスピードが速かった頃は、廉価モデルを作るにあたり、旧モデルの流用で容易に最新モデルとの差別化ができていましたが、近年はそれが難しくなってきました。

そこで、最新モデルから意図的にランクを落としたデザインのものを作り、廉価モデルにするという方向にシフトしたのだと思われます。

今回のiPad Airのデザインはベストではありませんが、手抜きということはなく、廉価モデルという枠の中で最大限のデザインをしようとしているのだと思います。

結論

このiPadはデザインにおいて意図的にランクが落とされているものの、決してデザインが悪いということはなく、手頃な価格とハイスペックを両立させており、多くの消費者にとって優れた選択肢になるといえます。

手に入る限りのもっとも優れたデザインを望む場合はiPad Proを買うことになるでしょう(チップセットが1世代前なので今から買うのが良いのかは分かりませんが)。

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