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少年H 上巻/妹尾河童


大好きな河童さんの
超名作少年H!

河童さんは知らなくてもドラマか何かの影響でこれだけは知ってるって人も多いみたい。

ちなみに私は産まれる前に出版されたので
河童さんとの初対面は「河童の覗いたインド」


少年+アルファベットって、
なんとはなしに未成年で犯罪を起こした人が想起されるよね。

この少年Hは、河童さんの元の名前、
肇(はじめ)のH、つまり、河童さんの少年時代の回想録!

覗いたシリーズから入ってるから、
河童さんの度を超えた知りたがりの好奇心の虫でいつの時代もちょっとひねたおかしな人!というベースは全く変わらずに、素直に、素朴に、なんの外圧もない、少年のみた戦争の記録がここにある。

昨日読み始めて、
今日の午前中には読み終わってた、
まるで少年の、あのな、あんときな、って話を、
うんうん聞いてたら何時間も経ってたような、
御先祖様の日記を蔵で見つけて、
昔の人が今と地続きなことをふいに気付いたような、そんなお話。


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もちろんカッパ少年は当時から絵がうまく、
好奇心は強く、悪戯心や悪巧み、小学生にして商才まであると来ている。

彼の目で見る戦争は、
どんな教科書や記念館、
テレビドラマでみる戦争よりも、
ずっと何倍もほんとうの感じがする。


例えば、寺の子でありながらキリスト教に入信した母敏子に、父が「戦争が始まった時、信じるものを守るために隠れキリシタンになる」ように話すこと、

だいすきなうどん屋の、赤盤の兄ちゃんが、
ある日「思想犯」として捕まってしまう、
資本主義と共産主義への純粋な疑問

二宮金次郎や寺の鐘を壊してまで大砲にする金属を探していても、それでも神の国日本として、負けるなどとは行けない空気

日本男児は外の便所で大便をすると大変に屈辱的であったということ、

どうしても戦争に行きたくないと思った、
映画館で働くおとこねえちゃんの選択、

洋服屋の傍ら、消防で働く父の語る、
消防訓練と現実との大きな溝。


当たり前に見落とされてきた少年の目と耳と声が、何十年も経って、戦争のあったことを忘れた私たちに、こんなにも素直に届くことの不思議。


自分の目で、耳で、何が今起こっているのか、
確かめたいと思える大切な大切な、
ずっと持っておきたい本。

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