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「気にする人たち」と「気にしない人たち」の間がどんどん開いていっている|6/16〜6/22

緊急事態宣言のなかで始めた日々の記録。火曜日から始まる1週間。ステイホームのリモートワーク。仕事と生活のあわい。言えることもあれば言えないこともある。ほぼ1か月前の出来事を振り返ります。

2020年6月16日(火) 自宅

快晴。そして、暑い。長らく手付かずだった原稿を手直しし続ける。放置しすぎたのが悪い。急がなければとわかっちゃいるけど手が追いつかない。Amazonのお急ぎ便で注文した『災害とアートを探る』が届く。福島県立博物館の小林めぐみさんのテキストを読む。2011年7月。Art Support Tohoku-Tokyo 立ち上げのため、初めて会いにいったときのことが書かれていた。話には聞いていた、正直な気持ちが。

まだ、東京電力福島第一原子力発電所事故からの避難者が、旅館やホテル、保養施設などにたくさんいたころだ。正直、東京都のお金でおこなう事業を手伝うことには抵抗があった。「東京に送る電気をつくっていた発電所事故のために東京都も活動しています」というポーズの片棒をかつがされたらいやだなとも思った。しかし事業が動くなら福島のためになったほうがいいとも考えた。

小林さんに限らず、震災後に出会った東北の人たちに共通した気持ちだったのだと思う。なんで、東京から? 「それでも」この土地のためになるかもしれない。その可能性に賭ける人たちがいたからASTTは始めることが出来た。それから時間をかけて見えてくることがあった。続けることの意義を実感出来た。そこに到るためには、まず始めなければいけないということも。
小林さんのFacebookで磐梯観光船が15日で廃業したことを知る。この状況下で4月から休業していたことが影響。今年のASTTの動きを残すためにつくったnoteのマガジンの画像を猪苗代湖の遊覧船にする。R.I.P. かめ丸。

2020年6月17日(水) 自宅

午前はジムジム会。Zoomのブレイクアウトルームの機能を使って、数人のグループでのディスカッションを試す。参加したグループのテーマは「オンラインで新しい人に、どう出会うか」。オンライン会議で相手の家族が映りこむことがある。まったく、新しい人には出会わないかもしれないけれど、いままで出会っていた人の隣にいたような人に出会う機会は増えたのではないだろうか。同じ東京アートポイント計画の共催団体だけど、初対面のメンバーで議論していて、そんな話になる。所定の時間が終わるとワープするように全員が集まる画面に引き戻される。それから全体で議論の内容を共有する。オンラインでは帰り道の時間がない。立ち話がない。廊下がない。いろんなたとえが出てくる。
午後は小金井アートフル・アクション!宮下美穂さんとミーティング。遠距離と近距離について。オンラインが増えて、遠距離の人とのやりとりも容易になった。そうすると事業を仕掛ける「地域」の意味合いも変わってくるだろう。これからの事業の展開イメージを議論する。考えるべきは遠距離との付き合い方ではなく、近距離の再設計なのかもしれないと思う。
いまはオンラインにならざるをえない。しばらくすれば、オフラインも戻ってくる。オフラインの不在によって体感した、さまざまな意義。獲得した手法。これからオンラインとオフラインは、より混ざったかたちになるのだろう。遠い人にはオンラインで会えばいい。近い人とはオフライン。そのときの「近さ」を共有できる地理的な範囲は、どうなるのだろうか。行政区ではない、地域アイデンティティとしての文化の境界を考える。東京だと、どうか。たとえば、小金井市という行政単位ではなく、多摩という地域をイメージしてみる。数年前に福島県会津地域で複数の市町村にわたって展開した『森のはこ舟アートプロジェクト』のことを思い出していた。
昨日から東京都の新規感染者数がトップニュースに出てこない。Twitterで「新規感染者数 東京都」で検索をする。昨日は27人、今日は16人だった。

2020年6月18日(木) 市ヶ谷

朝から出社。曇り。帰り道は雨。在宅が続いて、スマホのデータ使用量が減った。移動中はダウンロードしてから聴いていた音楽を、プレイリストに薦められるままストリーミングで聴き続けるという贅沢。誰の何の曲かは気にならない。「いま音楽とは何を聴くかではなく、どう聴くかなんですよ」。数年前、音楽のサブスクリプションを薦められたときの台詞を思い出し、今更ながらその意味を実感する。同時に「以前」の自分が選ぶような曲を聴く気分でもないことに気がつく。思いのほか、自分のなかで「以後」の線引きは大きいのかもしれない。
大阪府北部地震から2年。地震2週間後くらいに出張で行った大阪の風景を思い出す。電車からブルーシートや重石を載っけた屋根が見えて、東日本大震災の後の風景と重なったことを覚えている。
東京都の新規感染者数は41人。トップニュースに現れる。3日ぶりに40人を超えた。ウェビナーがウェブセミナーの略語だと知る。

2020年6月19日(金) 自宅

寒い。雨が降っている。午前にメッセンジャーでACF(Artist Collective Fuchu)のミーティング。現状の共有で時間が過ぎる。次からは新たなメンバーも加えて、これからの動きを練っていくことになる。実際に会ってミーティングをするか。初対面の人もいるから、そのほうが良さそうな気がするけど、ほかのメンバーがどう思うのかがわからない。結論は保留。日程調整に加えて継続審議。
午後は「10年目をきくラジオ モノノーク」の配信テスト。万全なスタッフ体制。パーソナリティが2人、テクニカルが3人、遠隔から番組構成の担当が1人。そのやりとりに自宅からオンラインで参加する。パーソナリティの間にはアクリル板もある。YouTubeのライブ配信を試す。配信の様子をSkypeでモニターする。メッセンジャーでスタッフ間のやりとりをする。ノートPCとスマホを同時に使う。イヤホンも2セット。右耳と左耳で違う音が流れている。若干ネットが不安定になる。途中からスタッフ連絡用にLINEも追加。急いでLINEのアカウント登録とアプリをスマホにインストールする。まさか、このタイミングでLINEを使い始めることになるとは。LINEの使い方を画面越しに尋ねるという配信体制の無駄づかい。夜にはYouTubeの配信画面やチャンネルアートのデザイン更新版が届く。企画がぐっと姿を現してきた。
東京都の新規感染者数は35人。政府は都道府県をまたぐ移動の自粛を全面解除。東京都は休業や移動の自粛の要請を全面解除。電気グルーヴの楽曲配信と出荷停止も全面解除。

2020年6月20日(土) 自宅

状況的に出かけられないのではなく、出かけたくないのかもしれない。もしくは、出かけられなくなってしまったか。ここ数日、ニュース、SNS、街の様子に触れて、出張するかどうかは自分の気持ち次第なのかもしれないと思うようになった。それがいいのかもわからない。まだ事態が収束したとも思えない。新幹線の予約が埋まってきて、来月から平常の本数に戻すというニュースを見かける。福島県猪苗代町のはじまりの美術館が約3ヶ月の臨時休館を経て、7月11日から再開。出かけたい。東京都の新規感染者数は39人。首都圏から移動した先の人たちは、どう思うだろうか。どうしても気にかかる。呼ばれれば行くだろうか。いろいろと想像してみるものの、結局は意を決してというより呆気なく動き始めるような気もする。

2020年6月21日(日) 自宅

日記を書くことに慣れてきた。終わりは、どこなのだろうか、と考えるようになった。この状況は、どこで収束するのだろうか。ワクチンが出来たときだろうか。数日前に宮下さんとのミーティングでつぶやくと「ワクチンが買える国の人たちは、そうかもしれない」と返される。思考の枠組みをずらすと見えるものが変わる。終わりに見えているものが、いまも続いている人がいる。距離の遠い出来事に触れること。隣り合う他者への想像力をもつこと。それはコインの裏表なのだろう。東京都の新規感染者数は35人。大きな変化なし。

2020年6月22日(月) 自宅

Zoomの打合せは3本。午前はSTUDIO302で収録するコンテンツについて。午後はGAYAの定例ミーティング。サンデー・インタビュアーズの動き方を話し合う。ひとつひとつの映像をじっくりと「読む」。『世田谷クロニクル 1936-83』を使って、そんな経験を、どうつくっていくかを議論する。AHA!の活動として、久しぶりに行ったのだという岐阜出張の様子をきく。
夜はモノノークの進行確認。電話出演のパートを確認する。これまでの10年と「10年目」に対する認識について意見を交わす。桃生和成さんから「戦略的10年目」という言葉が出てくる。震災から10年目だからといって何か区切りがあるわけではない。けれど、この10年目というタイミングをどう使っていくかを考えるのだという。いろいろと話して、どう考えても、時間内に収まらない。初回なので事業の位置づけを、きちんと説明する方向になる。本題の後の近況共有。ここでも出張のタイミングを話題にする。来月から出張に行ってみようかと思い始める。
気にしない人がいる。それでも、その隣に気にしている人がいるのではないかと気になってしまう。思い過ごしだろうか。それでも状況は収まったという確証はない。いまは(この状況に限らない物事に対しても)気にする人がいることを気にする感性を育むチャンスでもあるのかもしれない。だけど、現状はグラデーションのある「気にする人たち」と「気にしない人たち」の間がどんどん開いていっているような気がする。

(つづく)

Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」が始まりました。noteの日記は、この企画のテスト版として始めたのがきっかけでした。今月は6月分を更新。書き手は、是恒さくらさん(美術家)→萩原雄太さん(演出家)→岩根愛さん(写真家)→中崎透さん(美術家)→高橋瑞木さん(キュレーター)です。ぜひ、以下のリンク先からお読みください!


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アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー。東京アートポイント計画(おもに西側)、Tokyo Art Research Lab(研究・開発が中心)、Art Support Tohoku-Tokyo(東京⇄東北)を担当。ジャーナル「FIELD RECORDING」編集長。運動不足。

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都内各地で地域NPOとともにアートプロジェクトを展開する「東京アートポイント計画」。各プロジェクトに伴走するアーツカウンシル東京の専門スタッフ「プログラムオフィサー」がそのとき起こったこと、考えたことをお届けします。

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