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8月はどこへ行ったのだろうか|8/25〜8/31

緊急事態宣言のなかで始めた日々の記録。火曜日から始まる1週間。仕事と生活のあわい。言えることもあれば言えないこともある。リモートワーク中心。そろりと外に出始めた。ほぼ1か月前の出来事を振り返ります。

2020年8月25日(火) 自宅

連日の暑さに比べれば涼しい朝。午前は契約の書類づくりに集中する。どうしても、これまでオフィスで進めていたデスクワークが在宅だと遅れがちになる。午後は「10年目の手記」の2回目の選考のためZoomをつなぐ。5本の手記をプロジェクトメンバーで丁寧に読み合い、意見を交わす。「10年目をきくラジオ モノノーク」で朗読する手記を選ぶ。今回届いたものから1本か、前回届いたものから1本か。あとは特別選考委員の小野和子さんに相談し、決めることにする。
議論では、それぞれに気になる1節が出てくる。当事者しか書けないくだり。あの日にいた場所の「距離感」が現れている言葉。あぁ、あのときこういう感覚だったなと思い出させるもの。次回のモノノークでは、そのあたりも紹介していく方向になる。公募企画とラジオプログラムの相性はいい。
この間に手記執筆者に対する取材の問合せがあった。この「事業」は今年度で終わる。手記は残り、それからも手記に関心をもつ人は現れるだろう。その後、どう対処していくか。いくつかの方策を議論する。リサーチを含め、早めに動き出す必要がありそう。いよいよ、出張しないといけないタイミングになってきた。日帰りがいいだろうか? 事前にPCR検査は受けたほうがいいのだろうか? 具体的に移動の仕方を考え始める。
2025年の大阪万博のロゴが決まった。ぎょろっとした目玉が印象的な謎の生き物のようなデザイン(実際は目玉ではなく、細胞の核らしい)。立体化させられたり、キャラクター化させられたり、SNS上で遊ばれている。これは成功なのではないだろうか。
東京都の新規感染者数は182人。都は8月末までの飲食店等の営業時間短縮要請を延長しない方向で調整に入った。そう、もう8月が終わってしまう。

2020年8月26日(水) 自宅

朝からZoomで新しく立ち上げるラジオプログラムの打合せ。終わってすぐに、Slackでつないで別件を少し。急いで昼を食べて、午後イチでTokyo Art Research Labのミーティング。次々と難題が現れ、長引く。在宅勤務を終えて、夕飯を食べたら、やわつちオンラインサロン「アーティストってまちに必要?」へ。何気に初めてZoomでの公開イベントに参加する。ひとつの画面に収まらないほどの人がいる。参加者はチャットに自己紹介を流す。全国各地から数十人。リアルな場ではありえなかった風景だろう。
起きている時間のほとんどをオンラインで過ごす。すっかりインターネットの中の人である。

2020年8月27日(木) 市ヶ谷

家を出た瞬間に電車で読もうと思っていた、会田誠『げいさい』を忘れたことに気がつく。インターネットの外に出てみると、いろいろと差し迫っている。詰んでいるともいう。夜は9月22日に1回目を予定しているラジオ下神白の報奏会オンライン(名前は仮)のミーティング。急いで詰めないといけないことが多数。オンラインで流せるのか。楽曲の扱い方に頭をひねる。数日前にあった解除のニュースを覆し、東京都は飲食店等の時短営業要請を23区限定で9月15日まで延長。再要請に協力金は15万円。東京都の新規感染者数は250人。

2020年8月28日(金) 市ヶ谷

朝から出社する。今日は出社している人が少ない。滞っていたメールに返信をする。急いでつくらねばならない書類がある。早く考えないといけないことがある。チラシを送付しないと…。終わらなさに呆然とする。8月はどこへ行ったのだろうか。
数日前から予定されていた首相会見。辞意表明か。そう言いつつもワクチンを国民全員分確保するという話なのではないかというニュースも流れていた。と思ったら、やはり辞意表明ということが、午後になって速報になる。夜のニュースの「月曜に辞任判断。一人で」という文字が目に付く。そういえば数ヶ月前には首相判断で学校が休校になった。東京都の新規感染者数は226人。200人超えは3日連続。淡々と世の中の事態は進んでいくように感じる。何かがまひしてしまったのだろうか?

2020年8月29日(土) 自宅

快晴で高温。少しだけ外に出る。夜は「10年目をきくラジオ モノノーク」第3回をきく。最初のコーナー「世界の今日」では香港の高橋瑞木さんが出演。CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)のエグゼクティブディレクター兼チーフキュレーター(配信では館長と言っていた)。展示室に人がいることで空気の流れが変わる。展覧会とは観客がいることで成立するものだ。と実感をもって語っていたことが強く印象に残った。この状況下でCHATは展示を閉めて、再開し、いまはまた閉めている状況なのだという。東日本大震災のときは、前職の水戸芸術館現代美術センターで企画した展覧会が中止になった。人生で2度も展示を閉める経験をすることになるとは…とも語っていた。
イ・ラン「患難の世代」、ROTH BART BARON「SPECIAL」、GAGLE「うぶこえ(See the light of day)」。選曲がめちゃよい。Nami Satoさんのジングルもそうだけど、モノノークのウリは音楽でもある。「こどもだったわたしは」の朗読とチャンス・フォー・チルドレンの奥野慧さんのトークはこどもを切り口に緩やかに結びつく。いまだから言葉にできることがある。いまのことだから言葉を探すように間を空けながら語ることがある。静かに、このプログラムの意義を確かめ、気を改める。東京都の新規感染者数は247人。ここ数日は、いつ仙台に出張しようかと考えはじめている。

2020年8月30日(日) 自宅

何もしなかったわけではないけれど、何も書くことがない。何も書けることがないという意味ではない。日記を書き忘れたから、翌日に書こうとしたけど思い出すことがない。そんな日だった。

2020年8月31日(月) 市ヶ谷→自宅

今月から新しい勤怠システムが導入されていて、月末の締めを自分でやらないと給料が確定できないと、事前に何度もリマインドされていた。ならばと朝から意気揚々と出社し、今月の勤務表を締めたろうと思ったら、明日が締め日だった。そんな日もある。
「10年目のチラシ」の発送作業と個人情報を扱う作業を少々。オフィスでしかできない作業に優先的に取り組む。昼過ぎに移動をはじめて、午後は在宅に移行。電卓を打つ。ファイルを作成する。メールを送り、Slackやメッセンジャーでやりとりを重ねる。出社が増えてきた。在宅続きだった日々にリズムが出てきた。外に出ることに身体を戻していこう。
東京都の新規感染者数は100人。昨日は148人。100人台が続く。感染者数のグラフを見るとふたつめの山のくだり坂にあるように見える。「非常に強い勢力」の台風9号が沖縄に接近している。

(つづく)

noteの日記は、Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」のテスト版として始めたのがきっかけでした。8月の書き手は、岡村幸宣さん(原爆の図丸木美術館 学芸員)→山本唯人さん(社会学者/キュレイター)→谷山恭子さん(アーティスト)→鈴木 拓さん(boxes Inc. 代表)→清水裕貴(写真家/小説家)さん。以下のリンク先からお読みいただけます!
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