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着実に広がっている|11/24〜11/30

緊急事態宣言のなかで始めた日々の記録。火曜日から始まる1週間。仕事と生活のあわい。言えることもあれば言えないこともある。リモートワーク中心。出掛けることが増えてきた。ほぼ1か月前の出来事を振り返ります。

2020年11月24日(火) 市ヶ谷→武蔵小金井→市ヶ谷

週末は暑いくらいに気温が上がったけれど、今朝は寒い。市ヶ谷のオフィスに出社。細々とした作業が終わらないうちに、午後の移動時間になってしまう。小金井のシャトー2Fへ。この頃、定期的に議論を重ねてきた宮下美穂さんとの事業構想のミーティング。話には、しばしば、いまの社会の「厳しさ」が話題にあがる。
すぐ隣にあるもの、見えにくいもの、気がついていないもの……どれもが日常のなかにあるものばかり。それを「課題」としたときに、文化に何ができるか? という問いは何か遠い気がする。文化はどう向き合うのか? すでにそう突きつけられている「社会」なのかもしれない。そんなことを考えながら、ふたたび市ヶ谷に戻る。体調不良で休んだ分の巻き返しをはかる。

2020年11月25日(水) 自宅

夜は自宅からオンラインでTokyo Art Research Lab(TARL)の新企画「つどつど会」。「都度集うアートマネージャー連絡会議」を略して、つどつど会は「ジムジム会」の経験を踏まえて立ち上げたもの。ジムジム会は東京アートポイント計画の共催団体のメンバーが集っていたけれど、つどつど会はTARLに参加経験のある5名のメンバーに声をかけ、Zoomを使って、オンラインで集う場をつくっていく。秋田、猪苗代、新潟、墨田、別府。地域は違うけれど、それぞれ自己紹介をしながら悩みを共有していくだけで、共通した課題が立ち現れてくる。この調子で進めば、今後の話題には事欠かないだろう。滑り出しは好調(3月まで月1回のペースで集う予定)。むしろ、落としどころをどこにもっていくかが早くも悩みになりつつある……。

子どもの自殺が大幅に増えているというニュース。

厚生労働省が発表した統計によりますと、小中学生と高校生の自殺者はことし4月から先月までで246人と、去年の同じ時期より58人、おととしの同じ時期よりも42人多くなり、深刻になっています(NHKニュース)。

GoTo トラベルは感染が再拡大している札幌市、大阪府市の適用を一時停止。都知事は臨時の記者会見で「感染対策 短期集中」のフリップを掲げ、「できるだけ不要不急の外出をお控えいただきたい」と発言。都は11月28日から12月17日の20日間に午前5時から午後10時までの営業時間短縮要請。協力事業者には一律40万円の協力金を支給。東京都の新規感染者数は401人、重症者数は54人で最多を更新。三島由紀夫の没後50年のニュースも、ちらほらと見かける。

2020年11月26日(木) 自宅

朝、Yahoo! ニュースの「緊急事態宣言も視野に」の文字が目に入ってくる。

西村担当相は、会見で繰り返し「なんとかこの3週間で抑制していきたい」と訴えた。そして。「これができないと、感染がさらに広がると、次のステージ4になると緊急事態宣言が視野に入ってくる。あの春のような自粛ということになってくる。ぜひとものこの3週間で抑制していく。是非ご理解いただいて、多くの皆さんのご協力で3週間で抑制ができれば」と協力を呼び掛けた。

25日の新型コロナ対策分科会を受けての発言。同分科会の尾身会長は、感染者が急増している地域として、札幌市、東京23区、名古屋市、大阪市を挙げた。着実に広がっている。
午前は在宅勤務。午後は東京都立大学の非常勤の授業。『あわいゆくころ』を読んでいく作業は、震災後「四年目」に入った。この年、著者の瀬尾さんは陸前高田の写真館で働きはじめる。写真というメディアの話も多い。これまでの議論も振り返りつつ「記憶」と「連続性」をキーワードに挙げる。記憶を呼び覚ますこと、その暴力性について、折に触れて読み返してきた名著『記憶/物語』から引用する。

「記憶とは時に、わたしには制御不能な、わたしの意思とは無関係に、わたしの⾝に襲いかかってくるものでもある」(岡真理『記憶/物語』岩波書店、2000年、5⾴)

震災によって断絶が生まれた日常の「連続性」をつくるためにメディアが、どんな役割を果たすのか?  AHA!の話もする。
東京都の新規感染者数は481人。重症者数は60人で緊急事態宣言が出ていた5月11日以来の60人台になる。

2020年11月27日(金) 曳舟→市ヶ谷

朝10時に予約していたオル太『超衆芸術スタンドプレー 夜明けから夜明けまで』(ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―)へ。過去の再演なのか、現在の描写なのか。エリアリサーチを踏まえた大正時代からのこの土地の話が、何人もの演者の講談風の語りとともに、人力でぐるぐると回るセットのなかで続く……という映像を1時間じっと見る。スクリーンを取り囲むようにあるのは、関東大震災後のバラック風のセット。リサーチの資料も展示されていた。随分と真面目な作品だなと思う(いい意味で)。すっかり冷える。市ヶ谷のオフィスに出社後はオンラインミーティングを連続でこなす。疲れる。

2020年11月28日(土) 自宅

「仙台市民会館と戦災復興記念館、老朽化で廃止」のニュースを目にする。仙台では宮城県美術館が移転するという話が現地改修で落ち着いたと思ったら、こんな話も進んでいたとは……(もちろん、県と市で話は違うけれど)。仙台市では中心部に震災のメモリアル施設を設置する話も進行中だ。「戦災」と「震災」……どこかで関わってくるのだろうか?
夜は「10年目をきくラジオ モノノーク」の第7回目。3月までの予定回数も折り返し、内容にも安定感が出てきたように思う。「あなたの”立ち上がりの技術”教えてください」のコーナーゲスト、歴史社会学者の山内明美さんの語りにあった時間の尺の長さが印象に残る。

10年、20年の自分たちのことだけを考えて新しい街をイチからつくるのではなく、100年、200年後その土地に暮らす人たちのことが考えられるかどうか。でも、まだ10年しか経ってないんですよね、まだまだこれからだと思います。(モノノーク第7回レポートより

2020年11月29日(日) 自宅

日曜日でお休み。もう11月が終わってしまう……。

2020年11月30日(月)  市ヶ谷→伊賀上野

朝から市ヶ谷のオフィスに出社する。午後からは休みをとって、三重県の伊賀へ移動を開始する。福島県立博物館が事務局を務めるライフミュージアムネットワークの一環として「蜜ノ木」という活動をリサーチするのが目的。ちょうど1年程前に、青森県立美術館の企画展「青森EARTH2019:いのち耕す場所-農業がひらくアート」で「蜜の木」の存在を知り、気になっていた。そもそも、このとき青森県立美術館に寄ったのはライフミュージアムネットワークのリサーチで弘前と八戸を訪れたためだった。巡り巡った不思議な縁。明日のリサーチが楽しみだ。
電車を乗り継ぎ、夜になって伊賀上野駅に着く。どこもご飯を食べれそうなお店はやっていない。ホテルにあったマップを頼りにコンビニまで20分ほど歩く。遠くにお城が見える。伊賀と言えば忍者。ホテルに着くなり、ふたつ隣くらいの部屋から念仏が聞こえてきた。ま、この街ならばありうることなのだろう。怖くない。コンビニから戻ると終わっていた。
全国で重症者は472人。8日連続で過去最多を更新。2週間で倍増した。

(つづく)

noteの日記は、Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」のテスト版として始めたのがきっかけでした。11月の書き手は、清水チナツさん(インディペンデント・キュレーター/PUMPQUAKES)→三澤真也さん(ソコカシコ 店主)→相澤久美さん(建築家/編集者/プロデューサー)→竹久 侑さん(水戸芸術館 現代美術センター 主任学芸員)→中村 茜さん(株式会社precog 代表取締役)です。
東日本大震災から10年目、いま何を考えていますか? 問いかけからはじまる寄稿シリーズ。写真家の畠山直哉さんの思索の道をたどるような文章です。ぜひ、お読みください。
東京アートポイント計画の10年を凝縮した『これからの文化を「10年単位」で語るためにー東京アートポイント計画2009-2018ー』がBASEで販売中! PDF版は、こちらでお読みいただけます。