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うまくしゃべれないなと思うことが多い|10/20〜10/26

緊急事態宣言のなかで始めた日々の記録。火曜日から始まる1週間。仕事と生活のあわい。言えることもあれば言えないこともある。リモートワーク中心。出掛けることが増えてきた。ほぼ1か月前の出来事を振り返ります。

2020年10月20日(火) 自宅

午前はZoomでNPO法人アートフル・アクションの宮下美穂さんとミーティング。これからの事業構想を練る。というより手立てを探る。新しい取り組みの議論をしていると、2年前のTokyo Art Research Labでのスタディ(東京プロジェクトスタディ5「自分の足で「あるく みる きく」ために」)や小金井アートフル・アクション!の実践と地続きだと感じることが多い。
実践の経験を重ねることは、問題意識を明確にし、それにアプローチするための方法や言語の選択肢を増やすことなのだろう。熟達化とは、問題意識の的確な捕捉と適切な方法や概念の組合せが早く出来るようになることなのではないか。レスポンス速度が上がるというか。それは最短距離でゴールに向かう技術ともいえるけど、自覚的に未踏の地に飛び込むために使うことも出来る。当然のように後者に流れていくのだけど、どうやっていくかは、まだ見えない。
情念をどう回避するか? そんな話題で、柴崎友香『百年と一日』の記述がいいと教えてもらう。また課題図書が増えた。

2020年10月21日(水) 自宅

溜め込んでいたタスクの消化に集中する。午後にオンラインで水戸芸術館現代美術センターの竹久侑さんと「10年目の手記」について話す。
10年目の手記は「書くこと」が主眼にあるけれど、方法として「読むこと」が組み合わさっているのがいい。選考委員が読む。朗読をする。ラジオで所感を伝える。集まった手記を読んでいても、書くことで終わるというより、書いたことで語り始めようとしている人が一定数いるように思った。そう実感を竹久さんに話しながら、自分のなかでも少し整理されてくる。こうして実践を気にかけてくれる人がいることはありがたいし、心強い。それから、またパソコンと向き合い、文字を打ち続ける。
女性の自殺が7月以降に増加しているというニュース。ちらほらと目にしていた話題。「8月に自殺した女性 651人(前年比40%増)」「新型コロナでDVや子育ての悩みが深刻化」「芸能人の自殺報道も影響か」と。感染者の「中傷被害」による不登校や退職が増えているというニュースも。人とウイルスではない。人と人の間にある問題なのだろう。

2020年10月22日(木) 府中→自宅

府中にACF(Artist Collective Fuchu)のミーティングヘ。拠点が必要なのか、事業が必要なのか。まちのさまざまな場に染み込んでいくような事業を展開する。拠点があれば、そこから出かけていく(そこにいる)存在として分かりやすくなる。でも、拠点をつくるならば、そこで何をするか。場を確保するためには実績があったほうがいい。それを言えるようになるためにも、まず実践をしてみよう…。鶏か、卵か。議論がいい意味で煮詰まったことによる空転。
小さくとも実践をはじめる。具体的に場所を探す。とにかく、動いてみよう。それでわかることもあるだろう。そう会議のメンバーで確認しあい、次回までの分担を決める。スピードは上がるだろうか。
東京都立大学の授業のために急いで帰宅する。奇をてらったり、新しいことを言うのではなく、当然のように思っていることや繰り返し考え、語ってきたことを相手に渡すことを意識し、丁寧に語り直していく。それが必要なのではないだろうか。この状況下で、そう思うようになった。今日も、また画面越しに東日本大震災後の話をする。
ライフミュージアムネットワークでの遠方出張の誘いを受ける。行ったことのない土地の気になっていた活動のリサーチだった。心が躍る。
女川町と石巻市の経済効果を期待した請願を受けるかたちで宮城県議会が女川原発再稼働を容認。年内に判断か。もし、再稼働する場合は東日本大震災以来、被災地で初の事例になる。うぅーーーむ。

2020年10月23日(金) 市ヶ谷

うまくしゃべれないなと思うことが多い。Zoomのミーティングだと説明が遠回しになってしまう。順序立てて話しているつもりでも、道のりが長いから何を言いたいかが伝わりにくい。面識の少ない人を相手にちゃんと話をしなければいけない場だとなおのことそうなってしまう。オンラインで話すときは、対面よりも言葉を整理し、正確に伝えないといけないという気持ちが強くなる。話の内容に集中するというか…この感覚はなんなのだろうか。互いに思うことを正しく伝え合うよりも、微妙にずれながら生まれる会話の振幅のようなものがコミュニケーションの楽しさなのではないだろうか。言い訳なのか、つっこみなのか、誰ともなく言いたくなる。
配信プログラムは、もっと工夫ができる。係会(注:東京アートポイント計画スタッフの定例ミーティング)で話題になる。配信画面のありかた、プロジェクトのウェブサイトからライブ配信のページへの誘導の仕方、チャットへの気を配りかた…オフラインの出来事を「配信」するのではなく、配信を使った「企画」としてのつくりが必要なのだろう。オンライン企画も増えてきて、比較して議論も出来るようになった。会議が長引く。
2004年の新潟県中越地震から16年が経つ。知人のFacebookの投稿で知った。大学院の頃に調査で長岡に通っていたときがあった。2007年〜2008年頃だったかと思う。でも、中越の話を聞いた記憶は、まったくない。聞こうとしていなかったからかもしれない。今なら、どうだろうか?
「年末年始の休暇は1月11日まで」。帰省や旅行の分散を目的に政府が企業に要請するのだという。陽性を避けるための要請。妖精は陽性になるのか? どうでもいい。東京都の新規感染者数は186人。

2020年10月24日(土) 自宅

平日も日記を書くことが追いつかなくなってきた。ゆえに本日はお休み。

2020年10月25日(日) 平和島

このまま11月を迎えれば、12年ぶりに台風の上陸がなしになる。平和島の平和の森公園フィールドアスレチックへ出かける。家族連れで混み合っている。番号順にいくつものアスレチックに挑戦していくスタイル。ひとつひとつ列に並びながら、進む。いままでにない混みようなのだろう。

2020年10月26日(月) 武蔵小金井→市ヶ谷

シャトー2Fでミーティング。宮下美穂さんと、これからの事業の構想について。ちょうど電車で読み終えていた『心を病んだらいけないの? うつ病社会の処方箋』の話がオーバーラップしてくる。この本を読みはじめたのは、別の事業がきっかけだった。こうやって玉突きのように話がつながっていくタイミングがある。何が重なっているかが明確に言語化出来ないのだけど、その予感を追い続けていると、あるとき、共通項が腑に落ちることがある。ばらばらにあったものが連鎖する瞬間が訪れることがある。

(つづく)

noteの日記は、Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」のテスト版として始めたのがきっかけでした。10月の書き手は、木村敦子さん(クリエイティブディレクター/アートディレクター/編集者)→矢部佳宏さん(西会津国際芸術村 ディレクター)→木田修作さん(テレビユー福島 報道部 記者)→北澤 潤さん(美術家)です。
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