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想像は出来る。でも、実感が足りない|8/10〜8/13

コロナ禍の日々の記録。平日の仕事を中心に。土日祝は休みます(例外あり)。2020年の1回目の緊急事態宣言の最中にはじめた日記はこちらから。3回目の緊急事態宣言解除の日から再開。しばらく続けたい。

2021年8月10日(火) 市ヶ谷

朝のニュースでは気温が40度まで上がる地域があるのだという。電車が空いている。Twitterでは「電車ガラガラ」がトレンド入り。気分が変わってきているのだろうか?
午前は係会(注:東京アートポイント計画のスタッフ定例会)。ある企画を成立させるための人出が足りないのだという。そんなとき、プログラムオフィサーは、どうするか? 現場を担う人たちと「近くとも外にいる」という中間支援の立ち位置から、課題解決の「手立て」となることが必要なのだろう。それは単に人手に「なる」のとは異なる。たとえば企画の意図を確認し、解決に向かう道すじを増やす(少し外の視点から到達点を問い直すと、手段は複数あることに気がつくことがある)。ほかのプログラムオフィサーのネットワークを使う(プログラムオフィサーは複数の現場や、さまざまな人たちのつなぎ手=ネットワークの束のような存在。ひとつの現場では出会えていない別のコミュニティに架橋できたりする)。そんな手立てとして自覚的に動くこと、そして、そういう動きを求められることは「プログラムオフィサー」の存在意義に直結するのだと思う。とはいえ、解決策として人手の一員になることも大事。でも、その前にやれることがある。
午後はせっせと発送作業。Tokyo Art Research Lab(TARL)東京プロジェクトスタディの昨年度の成果をまとめた4冊を送り出す。ダンボールから開梱し、冊子を机に並べる担当。順番に組んでいく(積んでいく)担当。送り状とチラシを重ねて、透明な袋に入れていく担当。各々の分担と流れ作業で、最後にラベルを貼れば、あとは郵便局員さんに渡すのみ。ひたすら人手として手を動かす。こればっかりはリモート化できない。並べてみると見栄えのするラインナップ。それぞれの「問い」は、いまにふさわしい射程をもっているのだと思う。

東京都の新規感染者は2612人。重症者数176人で最多更新。国内の新規感染者数は10574人。8日連続で1万人超え。

2021年8月11日(水) 国立→市ヶ谷

朝から国立でACKT(アクト/アートセンタークニタチ)のミーティング。今年度の動きは、だいぶ詰まってきた。企画は具体化するほどに「この状況下で」という枕詞が増える。出来そうなこと、出来なさそうなこと。「そう」としか話せない。先が読めそうで読めない。外は暑い。日差しが強く、窓の外に見える風景には、影がくっきりと出ている。
午後は市ヶ谷のオフィスで、次年度の動きを練るための戦略ミーティング。オンラインだからできること、オンラインが増えたから考えないといけないことがある。対面が戻ってきてもオンラインはベースに入り込んでくるんでしょうね? と言いながら、実際のところ、それがどんな状態か思い描けていない。対面とオンラインの対比ではなく、両者を混ぜこむようなありようは、突き詰めると「それで何がしたいのか?」という問いに返ってくる。
帰り道に『東京プロジェクトスタディ2 Tokyo Sculpture Project Rehearsal Book』を読む。佐藤慎也さんの「まえがき」に見逃せない言葉を発見する。

このスタディは、彫刻=スカルプチャーを起点として、パフォーマンスを出自とする居間theaterとともに、プロジェクトという言葉を介して、美術と演劇の接点を考える場であったように思う(6頁)
プロジェクトが指し示す、展示のような静的なありかたに留まらない、上演のような動的なありかたは、それを作品と呼ぼうが呼ぶまいが、美術と演劇の双方から再考すべきことではないだろうか?(6頁)
そのとき、プロジェクトのつくりかたを考えるスタディにおいては、美術や演劇だけでなく、さまざまなつくりかたが要請されるだろう。そんなことの一端が本書には収められている(7頁)

なるほど……「プロジェクトのつくりかたを考えるスタディ」だったのか。この「つくりかた」は、東京アートポイント計画で展開した「アトレウス家」シリーズ「長島確のつくりかた研究所」の頻出ワードだった。実際に本書を執筆した居間theaterの東彩織さんは、その結びつきも書いている。

パフォーマンスプロジェクトの居間theaterと建築家の佐藤慎也は、このスタディ2のナビゲーターを三年間、担当させてもらいました。居間theaterと佐藤は、二〇〇九年ごろから同じプロジェクトに継続的に関わった経験があり、「演劇の考えかたを使いながらも劇場ではない場でいかに上演を展開するか」ということを考えてきました。
「十年で考える」(13頁)

「二〇〇九年ごろから同じプロジェクト」には「アトレウス家」シリーズも含まれている。3年間のスタディは、10年以上の時間をかけて醸成された問題意識と地続きだった。
そうしてみると本書のデザイナー(福岡泰隆さん)と判型は『アトレウス家の建て方』『つくりかた研究所の問題集』とおんなじだ。どっちも好きな本だったから、続編が読めるようでうれしい。
スタディ2のつくりかたの根幹には「ぼんやり」があったようだ。「つくる」プロセスで起こる逡巡を頷きながら、本を読み進める。
東京都の新規感染者数は4,200人。全国15,812人で過去最多。9府県で最多を更新(静岡県288人、三重県111人、滋賀県162人、京都府341人、大阪府1,490人、奈良県138人、愛媛県85人、熊本県181人、鹿児島県108人)。西日本での増加が目立つ。Reborn-Art Festival 2021-22が開幕。

▼ 「つくりかた」の系譜は、以下のインタビューでも。

2021年8月12日(木) 自宅

2週間ぶりの終日在宅勤務。朝から九州が大雨になるというニュース。曇り空で気温は連日より低め。とはいえ、エアコンは欠かせない。午前はTARLディスカッション初回レポートの原稿整理。午後はZoomでミーティング。この頃、東京の外の人とつなぐと、まず「大丈夫ですか?」と聞かれることが多い。そして「こちらは日常です」と答える。でも、これを日常と言うなんて、とんでもないと思う人もいるのだろう。想像は出来る。でも、実感が足りない。家庭環境や職種など置かれている立場によって状況は違うのだろう。自分の属するコミュニティの人たちとは共有できるが、ほかのコミュニティとの間に分断があるのかもしれない。そんな話を皮切りに、いいアイディアがひとつ生まれる。
熊本と大分で線状降水帯が発生し、大雨が降っている。熊本県和水町十町川が氾濫。気象庁は「大雨警報の基準を大きく上回る災害級の大雨になる」と厳重な警戒を呼びかけ。
東京都の新規感染者数は4,989人。全国は18,888人で2日連続最多更新。政府のコロナ分科会は今後2週間で「都内の人手の5割減」を呼びかけ。東京都のモニタリング会議では「自分の身は自分で守って」という専門家の発言もあったのだという。

東京都のモニタリング会議で、専門家は「かつてないほどの速度で感染拡大が進み、制御不能な状況で、災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態だ」と指摘したうえで「医療提供体制が深刻な機能不全に陥っている」として、極めて強い危機感を示しました。(NHKニュース

御巣鷹の日航機墜落事故から36年。少し前に朝のニュース番組で、日本航空スタッフによる事故の経験を継承する取り組みがとりあげられていた。気になりつつも追えていない。

2021年8月13日(金) 自宅

仕事は2日目の夏休みを取得。今年もお盆の帰省はしない。東京都の新規感染者数は5,773人で最多更新。国内の新規感染者数は20,366人。3日連続で最多更新。初めて2万人を超えた。大雨のニュースも続いている。政府は午前に「8月11日からの大雨に関する関係閣僚会議」を開いた

(つづく)

▼ 1年前は、どうだった?(2020年の日記から)

▼ Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」。1年前の8月の書き手は、岡村幸宣さん(原爆の図丸木美術館 学芸員)→山本唯人さん(社会学者/キュレイター)→谷山恭子さん(アーティスト)→鈴木 拓さん(boxes Inc. 代表)→清水裕貴(写真家/小説家)さんでした。