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発端を忘れているのは、ちゃんと手法に落とし込まれた証なのだろう|7/19〜7/21

コロナ禍の日々の記録。平日の仕事を中心に。土日祝は休みます(例外あり)。2020年の1回目の緊急事態宣言の最中にはじめた日記はこちらから。3回目の緊急事態宣言解除の日から再開。しばらく続けたい。

2021年7月19日(月) 自宅

「モデルナアーム」なんて名付けがなんで必要なんだろうか? とニュース記事を読みながら思っていたのは数日前。週末になって痛みが収まったと思った左腕のワクチン接種箇所が痒くなり、赤みが広がってくる。アームがモデルナってくる。日常生活に支障はない。自分の腕を見ながら、ニュース画像と同じだと思う。ならないとわからない。その距離について考える。
夕方からZoomで「ジムジム会」に参加する。今年度最初ということで、多摩地域で準備を進める、ふたつの新規事業(「多摩の未来の地勢図 Cleaving Art Meeting」と「ACKT(アクト/アートセンタークニタチ)」の説明をする。その後は各事業から今年度重点的に取り組みたいことを筋肉にたとえて共有をする(わたしたちの鍛えたいのは「〜筋」です、みたいなかたちで)。運営側はUDトークも使ってみる。ジムジム会は東京アートポイント計画の共催団体間の横のつながりづくりだけでなく、事業で使える新たな手法を試す場でもある。
「オンラインプログラムでのコミュニケーションの取り方でいい方法はないものか?」。本番が終わり、アンケート記入時間もかねて開けてあるZoomのなかでの会話もいい感じだ。ジムジム会が、昨年度オンラインに切り替わったとき、最初に話題になったのは、オンラインには「帰り道」や、立ち話をする「廊下」がないということだった。そうしてはじまったZoomの後の時間も、すっかり定着している。その発端を忘れているのは、ちゃんと手法に落とし込まれた証なのだろう。
東京都の新規感染者数は727人。オリンピック開会式の楽曲担当だった小山田圭吾が過去のいじめの経験を語ったインタビュー記事の問題で辞任。オープニングの4分間の楽曲担当予定だったのだという。スポンサー企業のCM自粛や開会式欠席の報道も目立つ。

2021年7月20日(火) 市ヶ谷

今日も朝から暑い。少しだけ電車が、いつもより空いているのと、途中の駅で止まりがちなのはオリンピックがはじまることと関係があるのだろうか。都内の交通規制による渋滞のニュースをちらほらと見かける。
係会(注:東京アートポイント計画のスタッフ定例ミーティング)では、次年度の予算要求に向けて、各事業の要点を確認する。昨日のジムジム会で使ったUDトークのフィードバックも行う。事業進捗、事務連絡、業務分担の確認……粛々と会議は進む。
午後は来年度の東京アートポイント計画やTokyo Art Research Lab(TARL)の動きを検討する戦略ミーティング。今後のスケジュールと手持ちの材料を検討する。新たな事業スキームの構想と、具体的な事業の落とし込みが同時進行になってきた。鶏か、卵か……その両方が必要なのだという結論。
帰り道に、こうやって日々の記録している意味を考える。定期的に訪れる「これって、なんの意味があるのだろうか?」と思ってしまう問題。ましてや、最近のニュースを見ていると過去の記録が問題化することも多い。公開する情報に気を使っているつもりでも、とんでもないことをやらかしているかもしれない(どこからともなく聞こえる「おまえは、あとで記録が問題視されるほどの人物なのか?」という突っ込みは、さておき)。そんな自問自答しつつ、note公開用に記録を整理しながら、1年前の同じ頃に書いた記事を読み返す。あの頃から変わったこと、変わらないことを振り返る。その時間が、いい。続ける気力が充填された。記録の効果は後からやってくる。
ヨーロッパでは変異ウイルス「デルタ株」の影響があり感染は再拡大。連日感染者数が1万人を超えるフランス政府は「第4波に入った」という認識を示し、感染者は「10日間の隔離」、従わない場合は罰金も科すと対策を発表。21日から段階的に適用予定。東京都の新規感染者数は1387人。

2021年7月21日(水) 市ヶ谷→府中→自宅

市ヶ谷のオフィスに出社する。駅から早足で向かうと汗が止まらない。暑い。午前はZoomで「移動する中心|GAYA」の定例ミーティング。「ナラティブがナラティブを生む」という言葉が飛び交う。「世田谷クロニクル 1936-83」で閲覧できるデジタル化された8mmフィルムの映像。それらを(オンラインで)囲んで定期的に語りを交換するメンバー「サンデー・インタビュアーズ」。その新規メンバーの募集が終わり、どう活動を展開し、メンバーとのかかわりづくりをしていくかが議論になる。映像のナラティブ(何が写っているか)を深く掘り下げていくと、見ていた人自身のナラティブ(語り)につながっていくのではないか? そのナラティブを、どう後押ししていくのか? すでに昨年からサンデー・インタビュアーズとして活動してきたメンバーもいる。「先輩の背中」をつくるような取り組みが必要なのかもしれない。話をしながら、数年前に取り組んだTARL 東京プロジェクトスタディ4「部屋しかないところからラボを建てる」のことを思い出す。「きく」ことをテーマにした、このスタディは、結果的に参加メンバーが、それぞれの手法で語り出すことになった。「いい聞き手は、いい語り手になる」。ナビゲーターを務めた瀬尾夏美さんは、スタディの終わりに、そう語っていた。スタディの歩みを思い出しながら、GAYAのメンバーと共有する。
TARLディスカッションのナビゲーターメッセージをウェブサイトで公開する。今回のディスカッションの動機のようなものを書いた。参加者募集の締切まで、あと一週間。
オフィスから府中へ移動する。ACFの事務局を務める新井有佐さんがかかわる「LIGHT UP LOBBY」の内覧会へ向かう。駅までの道のりが暑い。尋常ではない熱気がアスファルトの地面からゆらゆらと立ち上がっている。このなかでアスリートの人たちが全力を発揮するのか……。ニュースで今日から一部の競技がはじまっていると聞いていたけれど、いまだに実感が湧かない。
「LIGHT UP LOBBY」は府中駅前すぐのホテルケヤキゲート東京府中の2階にあった。「シェアキッチン併設型のコワーキングスペース」と資料には書いてある。新井さんは、ご自身が府中で運営するレストラン「サングリア」プロデュースで、カフェエリアの運営に携わっていた。もともと市の公共施設の跡地開発で、公共施設時代にご両親が運営していたレストランが、この場所にあった。前にインタビューで聞いていた話とつながった。内覧会で訪れる地元の人たちには「おかえりなさい」と言われたのだという。こういう文脈は大事なんだろうなと思う。壁面には淺井裕介さんの絵があった。府中市美術館で淺井さんの公開制作がはじまるのだという。忘れずに行かねば。
弱まることのない暑さのなか自宅へ移動し、在宅に移行する。東京都の新規感染者数は1832人。この数字が、オリンピック開幕にあわせて「TOKYO 2020」になる……と言う人を少し前にSNSで見かけたけれど、いまとなってみれば現実はネタを悠々と超えていくのだろうとも思う。

(つづく)

▼ 1年前は、どうだった?(2020年の日記から)

▼ Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」。1年前の7月の書き手は、大吹哲也さん(NPO法人いわて連携復興センター 常務理事/事務局長)→村上 慧さん(アーティスト)→村上しほりさん(都市史・建築史研究者)→きむらとしろうじんじん(美術家)さんでした。