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そもそもから考えましょう|9/1〜9/7

緊急事態宣言のなかで始めた日々の記録。火曜日から始まる1週間。仕事と生活のあわい。言えることもあれば言えないこともある。リモートワーク中心。そろりと外に出始めた。ほぼ1か月前の出来事を振り返ります。

2020年9月1日(火) 市ヶ谷→自宅

久しぶりに涼しい。夜のうちに雨が降ったのか、地面が濡れている。今日で関東大震災から97年が経つ。そして、防災の日。

「防災の日」は、1960年(昭和35年)に、内閣の閣議了解により制定された。9月1日の日付は、1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災にちなんだものである。また、例年8月31日 - 9月1日付近は、台風の襲来が多いとされる二百十日にあたり、「災害への備えを怠らないように」との戒めも込められている。
(中略)
「防災の日」が制定されるまでは、9月1日に行われる行事は、関東大震災犠牲者の慰霊祭が中心であった。しかし、「防災の日」が制定されてからは、全国各地で防災訓練が行われる日となっている。
ウィキペディア「防災の日」

慰霊が防災になる。ある固有の出来事に想いを馳せる行為から、名前のない未来の出来事に対する構えを身体化することに比重が移る。どっちが良い悪いではない。東日本大震災から時間が経つほどに、この違いに自覚的でいなければと思うようになった。
朝から出社し、チラシの封入作業をし、郵送の手続きをする。終わったと思いきや、郵便局集荷のタイミングで不備が発覚し、やり直しが決定。気持ちが切り替わらないまま、自宅に移動し、在宅勤務へ。今朝は電車をうっかり一駅手前で降りてしまった。ぼんやりしている。
小金井アートフル・アクション!「pen友プロジェクト」の交換ノートが始まる。告知の文案が届き、宮下美穂さんと電話で話す。プロジェクトでは11月に展示を予定しているが、どう進めようか、と。このプロジェクトにおいて、展示でどんな体験をしてもらいたいのか、そもそもから考えましょうという話に。どんなに現場で対策を打っても、世の中の感染者数が増えれば状況的に開催が出来ないことも予見できる。そのときの代替策はオンラインかもしれない。でも、それで、いいのだろうか。いまからなら、まだ問える。
東京都の新規感染者数は170人。都内で8月中に熱中症で亡くなった人は187人。統計史上最多を記録。台風9号は沖縄で猛威をふるい、台風10号も発生した。

2020年9月2日(水) 自宅

Tokyo Art Research Lab(TARL)のミーティング。議論の焦点は「東京プロジェクトスタディ」の見せ方について。3つのスタディの動きを確認し、情報(「ウリ」になるところ)の伝え方を模索する。が、前回のミーティングから考えれば考えるほどに、そもそもTARLがなんであるかを、最初に語らねばならないのではないかという地点に返ってくる。
TARLはアーツカウンシル東京の人材育成事業に位置づけられている。人材育成とは何か。それは関わった人になんらかの「変化」をもたらすものだろう。その変化をうみだすために「学び合い」という方法を入れ込んできた。2014年度に「講座」から「学校」(「思考と技術と対話の学校」)へプログラムを展開したときに気がついた方法だった。少人数の関係づくりを重視し、知識伝達型の教える/教わるではない、相互に学びを刺激し合う場づくりを行う。学び合いは一般の参加者だけでなく、プログラムを率いるナビゲーターやコーディネーターの間にも起こることが目論見にあった(TARLの学校と研究・開発では後者がその要素が強い)。最前線で実践をしている人たちこそ、立ち止まって自分の行為を振り返ることや次の一手を打つための試みが必要だった。実践に忙しい人たちが、新たなスキルをブラッシュアップしたり、異なるスキルをもつ人たちが実験的な試みを重ねてきた(学校がアートプロジェクトの入口に立つ人々のコミュニティだとすれば、研究・開発は現場の実践者や専門家が集う場になっていた)。
参加者の学び合うコミュニティは、プログラムの範疇を超えてうまれていった。受講後に連絡をとりあい、どこかに一緒に出かける。ともに企画をつくったり、現場をともにする人たちも現れた。各地に散らばった「同窓生」は互いに親交を深めていた。
たくさんのドキュメントをつくり、ウェブサイトの図書室ROOM302のアーカイブを拡充してきたのもTARLの特徴だった。プログラムに参加できない人たちに「学び」の素材を提供することを目指してきたからだった(=学び合いを触発するメディアとしてのドキュメント)。いまはオンラインにシフトするなかで、この「遠隔の参加者」を意識することが、改めて重要になってくるのだろう…。と、ここまで急いでメモをしつつ、図をつくれるといいなと思う。この手にiPadとApple Pencilがあれば、きっと…。
2019年に発刊した『Tokyo Art Research Lab 2010-2017  実績調査と報告』をひっぱり出して読み返す。そう、ここに色々と書いてあった。

2020年9月3日(木)  自宅

Zoomのミーティングが3本。朝の1本目は、しばらく議論していたラジオ企画ついて。すでにあるやりかたをなぞるのではなく、この企画で何を試していくのかに立ち戻る。企画はラジオという手法から急旋回。これまで広げてきた目的や対象を絞っていくことになった。少人数でオンラインで議論する場づくりを試みる。この状況下で、ほかの人たちは、どう実践しているのか。具体的な話をきいて、話しあう。それが、いま知りたいことではないだろうか。話はシンプルになる。
移動する中心|GAYAの定例ミーティング。松本篤さんの参加が遅れる間、水野雄太さんに仙台出張の話をきく。水野さんは初めて仙台の沿岸部を訪れたのだという。しばらく行けていなかった荒浜周辺の様子をうかがう。最後に行ったのは、つい数ヶ月前のことなのに、仙台を遠くに感じる。そこはかとない懐かしさすら漂う。
夜はラジオ下神白の「報奏会」のミーティング。前回のミーティングに欠席だった小森はるかさんを交えて、当日の構成や運営体制を議論する。1回目はアサダワタルさんが、これまでのラジオ下神白を振り返るというミニマムの体制でのぞむことになる。楽曲の使用と権利処理のはざまでアイディアを出し合う。
オンライン化のなかで、さまざまな「権利」が課題として前景化してくる.。こういう話は、いつも「そもそも」に立ち返りたくなる。なんのための権利なのか? 許諾なのか? 制度なのか? 必要なのは具体的な手続きなのだと知っている。それでも、そこを問うことを手放してはいけないのではないかとも思う。

2020年9月4日(金) 自宅

夕方、Zoomで係会(注:東京アートポイント計画のスタッフ定例会)。情報共有の方法が議論になる。ヒヤリハットや経理処理のノウハウだけでなく、事業を動かすときに触れる法的なこと、技術的なこと、気にしておくべき視点を互いに普段の会話で意識的にいれこんでいく必要がありそう。事業のやりかたが変わっていく、いまだからこそ。

2020年9月5日(土) 自宅

朝日新聞に「10年目をきくラジオ モノノーク」と「10年目の手記」の記事が掲載される。東京版だからか、珍しく「都の被災地支援事業の一環として」という一文が入った。
ここ2日間くらい朝から頭痛が続いている。激しくはないのだけど、ずーっと肩から首にかけて痛みがある。熱中症っぽい感じだけど、エアコンの効いた家のなかにしかいないからありえない。肩こりが影響しているのだろうか。運動もしないとなと思いつつ、まったくしていない日々が続いている。
台風10号のニュースが何度も流れている、100年に1度の規模になるのではないか。九州では1ヶ月平均雨量の2倍の雨が降るのではないか。最大級の警戒を…。地図の進路は沖縄から九州を通って韓国へ向かっている。明日はどうなっているのだろうか。
明日で北海道胆振(いぶり)東部地震から2年。37人が亡くなった厚真町では町主催の追悼式が今日開催された。式典は簡略化し、約30分で終了。6月下旬に中止決定があったが、状況が落ち着いたことを踏まえて方針転換。仮設住宅の入居期限の2年が迫り、順次、災害公営住宅への移行が始まるのだという。

2020年9月6日(日) 自宅

台風10号のニュースが続く。少し勢力は弱まったものの、油断はまったくできない規模。オンラインで購入した防災ラジオとカセットコンロが届く。カセットボンベはオフラインのほうが安いらしいので、近くのホームセンターに買いに行く。

2020年9月7日(月) 自宅

終日在宅。珍しくオンラインミーティングがない日。ウェブサイト「Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021」用の原稿に集中する。合間に諸連絡。この「諸」が積もり積もると大変なことになる。時折、土砂降りの雨が降る。東京都の新規感染者数は77人。2ヶ月ぶりに70人台。グラフだけ見ていると、第2波は下り坂に入っている。

(つづく)

noteの日記は、Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」のテスト版として始めたのがきっかけでした。8月の書き手は、岡村幸宣さん(原爆の図丸木美術館 学芸員)→山本唯人さん(社会学者/キュレイター)→谷山恭子さん(アーティスト)→鈴木 拓さん(boxes Inc. 代表)→清水裕貴(写真家/小説家)さん。以下のリンク先からお読みいただけます!
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