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さらばドロンよ

アラン・ドロンが亡くなったニュースが流れて、そう言えば映画を見始めの頃、よくTVで観たような。調べたら最初に観たのが『さらば友よ』でゴールデン洋画劇場でした。当時はアラン・ドロンというと野沢那智が吹き替えをやっていたようで、後に深夜放送で「那智・チャコ・パック・イン・ミュージック」で聞く声には違和感を覚えたような(すぐに慣れましたけど、ラジオではおちゃらけた感じでアラン・ドロンの声はおちゃらけた感じはなかった。)

『さらば友よ』を観た翌日、中学の友だちとドロンとブロンソンのタバコに火を付けるシーンの真似をしたり(どっちがドロンだったのか、もちろん中学生だから煙草はないけど)懐かしい思い出。ほとんどその頃が映画の見始めだと思います。アラン・ドロンは暗黒街ものの例えば『地下室のメロディ』だと、美男とベテラン男優という感じで、ブロンソンとも後に『レッドサン』で再共演してますね。ノワールものと言われる『サムライ』とか雰囲気だけでストーリーはさっぱりでしたけど、アラン・ドロンの影ある役が似合っていたような。

それでも一番ドロンで有名なのは『太陽がいっぱい』でしょうか?今回の訃報を受けて観ましたけど、アラン・ドロンはそれほどカッコいい役でもなかった。金持ちの取り巻きで、やがてその金持ちを殺して完全犯罪を企て、ラストに「太陽がいっぱい」とサマーベッドに寝ているところに、ボートを引き上げたロープに死体が絡んでいたという永遠に忘れられないラストシーン。ドロンのヨットでのシーンがポスターに使われるけど、彼のヨットではなく、小間使いのような扱いを受けているのでドロンの印象としてはいまいちかな。この映画で何より素晴らしいのはニーノ・ロータの音楽でそれだけで満足ですね。

アラン・ドロンの美貌を観るのは、モノクロの陰影がはっきり目立つ映像が一番だと思うので、ヴィスコンティ『若者のすべて』を勧めます。後に『山猫』もヴィスコンティの傑作映画ですけど、こちらはバート・ランカスターが良すぎて、アラン・ドロンは引き立て役かもしれない。

あと好きなのは『冒険者たち』でこれも今回見直したら、ドリカム映画(男二人に女一人)だが大した内容はなかったです。自由を愛する三人の男女の物語。やはり音楽が印象的で記憶に残っていたのか?と思いっました。ジョアンナ・シムカスが可愛いのは、アラン・ドロンとリノ・ヴァンチュラという男に挟まれていたからか。水葬のシーンが良かったです。軍艦島も魅力的だが、もう少し観てみたかったかも。ラストの戦闘ごっこだけではもったいない感じがします。結局、アラン・ドロンも死んでしまう映画だった。アラン・ドロンは死なないイメージがありましたね。

アラン・ドロンの異色作と言えばトロツキー暗殺を描いたジョセフ・ロージの『暗殺者のメロディ』。この社会派映画は、それまでのアラン・ドロンとイメージが違う暗殺者役でこれもラストのシーンが強烈でアラン・ドロンよりもトロツキー役のリチャード・バートンがメインだったのかな?それでも丸メガネのサングラスのアラン・ドロンがカッコ良かった。この映画も今回もう一度見直したいと思ったらどこも動画サイトになかったです。これは傑作だからぜひ観て欲しい。

ジョセフ・ロージ監督でもう一本、『パリの灯は遠く』はフランスのナチス占領化でのユダヤ人問題を扱ったこれも「セザール賞」を取った名作とされているようです。ユダヤ人に間違わられる男をアラン・ドロンが演じているミステリーなのですが、最後までよくわからない。そのわからなさがカフカ的なある日突然逮捕されてしまうカフカ『訴訟』に見立てた映画なのかな。ただ映画にするとちょっとその経過が退屈で辛い時間になっていますね(アラン・ドロンももう中年ですし、それほど魅力がある役者ではない)。最初にジャンヌ・モローがユダヤ人の身体検査を受けるのがけっこう刺激的な(大女優なのに裸にさせて検査する)、それだけで存在感あるところを示すというあとはあまりストーリーに絡んでこなかったのが残念な使い方だと思いました。

ベストは『若者すべて』『さらば友よ』『冒険者たち』かな。番外として『暗殺者メロディ』。まあ、アラン・ドロンの恋愛ものはほとんど興味がなかったので、それは別の人を参考にして下さい。

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