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プルースト「ヴァントゥイユ・ソナタ」を求めて

Shani Diluka『The Proust album』


1-3) レイナルド・アーン:ピアノ協奏曲 ホ長調
4) ドビュッシー:『夢』
5) レイナルド・アーン:ワルツ『ニネット』
6) グルック:『オルフェウスの嘆き』(「精霊の踊り」より/ ケンプ編)
7) フォーレ:『水のほとりで』
8) フランク:前奏曲(FWV.30 Op.18より)
9-11)ヴァントゥイユ・ソナタ
   9) レイナルド・アーン:夜想曲
   10) イザイ:マズルカ Op.10-1
   11) シャミナード:『スペインのセレナード』(クライスラー編)
12) フォーレ:『3つの無言歌』Op.17 ~第3番
13) ワーグナー:『エレジー』www 93
14) R.シュトラウス:『4つの情緒のある風景』Op.9~第6番:ノットゥルノ
15) フォーレ:『ゆりかご』(シャニ・ディリュカ編)
16) マスネ:『エレジー(メロディ)』Op.10-5
17) フォーレ:『秘密』
18) ドビュッシー:『喜びの島』
19) レイナルド・アーン:『当惑したナイチンゲール』~エグランティーヌ王子の夢

【演奏】
シャニ・ディリュカ(ピアノ)
パリ室内管弦楽団(1-3)
エルヴェ・ニケ(指揮:1-3)
ナタリー・デセイ(ソプラノ:7, 17)
ピエール・フシュヌレ(ヴァイオリン:9-11)
ギヨーム・ガリエンヌ(語り:19)

【録音】
2020年10月26-27日、フィラルモニ・ド・パリ、SR1 (1-3)
2020年11月18-19日、ラ・セーヌ・ミュジカル(4-19)

繊細で過敏な神経の持ち主であった作家マルセル・プルーストは、芸術の信奉者としても知られ、美術や音楽にも造詣が深く、ベートーヴェンやシューマンをはじめ、フォーレやドビュッシーら同時代の作曲家にも賛辞を贈り、自身も強いインスピレーションを受けていました。このアルバムに収録されたのは、彼が愛した作曲家たちの作品であり、その中にはレイナルド・アーンの珍しい「ピアノ協奏曲」や、最近発見されたばかりのリヒャルト・シュトラウスの「ノットゥルノ」は、『4つの情緒ある風景』の1曲(シャニ・ディリュカが初演)が含まれるなど、ピアノ曲好きにもたまらない内容になっています。ピアノを演奏するシャニ・ディリュカは、スリランカ出身のモナコ育ち。グレース王妃に見出されて英才教育を受け「ラ・フォル・ジュルネ音楽祭」でもたびたび来日している日本でもおなじみのピアニストです。これまでもインド哲学とベートーヴェンを組み合わせるなど、ユニークなコンセプトのアルバムをリリースしていますが、ここでは更に深みのある音色と語り口で作品の魅力を引き出しています。
 また、プルーストが”失われた時を求めて”で追求した架空の「ヴァントゥイユ・ソナタ」は、ここではよく言われるようなサン=サーンスのヴァイオリン・ソナタではなく、アーン、イザイ、シャミナードの作品を組み合わせることで、新しい解釈を広げています。ここでヴァイオリンを弾くのは1985年生まれのヴァイオリニスト、ピエール・フシュヌレ。彼が紡ぎ出す伸びやかな旋律は、プルーストが描き出した「揺れ動く薄紫いろの波」そのものと言えそうです。
 アーンのピアノ協奏曲では、フランスの秘曲の探求に尽力する名指揮者エルヴェ・ニケがタクトを執るだけではなく、歌曲ではナタリー・デセイが印象的な歌を聴かせるなど、共演者からも目が離せないアルバムです。

Shani Diluka (シャニ・ディリュカ) は、スリランカ出身のモナコ在住のピアニスト。1976年11月7日生まれ。ワーナーから結構アルバムを出していますね。

レイナルド・アーン(Reynaldo Hahn, 1875年8月9日(1874年生まれという説もある) - 1947年1月27日)は、ベネズエラ出身のピアニスト。1894年のマルセル・プルーストと出会い、天才少年と言われサロンでフォーレ、シューベルトの歌曲をピアノで弾いて歌っていたようです。後に作曲家に転身してオペラ指揮者としても活躍。

ドビュッシー:『夢』は、フランスの印象派の作曲家でプルースト『失われた時を求めて』のオープニングの語りをイメージしたのでしょうね。

グルック:『オルフェウスの嘆き』は、「オルペウスとエウリュディケー」のオペラをピアノ曲にアレンジしたものだと思います。これは印象深い曲です。

「ヴァントゥイユ・ソナタ」は、サン=サーンスのヴァイオリン・ソナタだとされるのですが、ここではあえて当時の印象派の曲を組み合わせて、想像を膨らませています。ちょっと物足りない感じです。みどりさんの「Saint-Saëns, Camille:Violin Sonata No.1 d-moll Op.75」を上げときます。


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