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殻を破る。

蒼月海里はデビューしてから無事に五周年を迎えた。
そして、デビュー作である『おばけシリーズ』も、無事に完結させることが出来た。
完結自体が難しい昨今、17冊も出させて頂いたのは有り難いことだし、コミカライズをして頂いたのもいい思い出だ。
ここで一つ、殻を破って次の一歩を踏み出してみようかと思う。

『幽落町おばけ駄菓子屋』でデビューし、ほっこり路線で行く方針が固まって以来、出来る限り柔らかい文章で語ることを心掛けていたが、私の本来のテイストはこちらだ。
幼い頃から図鑑に慣れ親しみ、定期的に書店の理工学書のコーナーに行ってしまうような理系分野大好き人間で、『マタタビ潔子の猫魂』の解説を寄稿した時は、朱野先生に理系クラスタの文章だという旨を言わしめたほどだ。
こちらの方が饒舌になれる気もするし、少しだけ胸の内を曝け出せそうな気がする。


一昨年の年末、父が亡くなった。
年賀状を既に準備し、原稿に追われている最中の出来事だった。
喪中の便りどころか、各出版社の担当編集者に周知する暇もなく、仕事を片付けることで精いっぱいだった。
亡くなった父は、認知症の一種を患っていた。
様々な事情があって、私は多くの重大な決断を迫られた。
去年は、仕事と法要に追われていた。
精神的にも疲弊してしまったようで、隙間の時間を見つけては、自分の素性を隠して場末の酒場に足を運び、ゴロツキ達を相手に管を巻くというような日々を送っていた(※たとえ話。実際に場末の酒場には行っていない)。
そこで、人間の浅ましさや、自分の愚かさを改めて感じた。
しかし、様々な切っ掛けがあって、自分の創作の原点を思い出すことが出来た。
もうあの場所へと足を運ぶことはないが、貴重な体験をしたのではないだろうか。

父の一周忌も迎えた。そして、2020年になった。
気持ちを新たに、今あるシリーズを大切にしつつ、新しい道を切り開ければと思う。
WEB文蔵で連載中の、ちょっと怖い蒼月作品『怪談喫茶ニライカナイ』以外にも、今までとは毛色が違った小説が春に出版されるかもしれない。
新しく生み出される物語達は、必ずしもほっこりではないかもしれないけれど、根本から変えたいわけではない。
私が紡ぎたいのは、幻想と救済の物語なのだから。


因みに、3月には『稲荷書店きつね堂』の2巻が発売予定なので、こちらも引き続き、お手に取って頂けますと幸いです(モフモフが増えます)。

よろしければご支援頂けますと幸いです! 資料代などの活動費用とさせて頂きます!