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メンタル・タイムトラベルと脳

過去のことを思い出すのも、未来を思い描くのも、自分の内側にある記憶から作られる。けれど、過去の記憶を思い出すのは、あった出来事の記憶を引き出すということがメインだけれど、未来を思い描くのは、過去の記憶たちから、情報を紡いで、予測的な脳機能も必要になるため、同じではないだろう。

こんな我々の内側にあるメンタル・タイムトラベルに寄与する脳部位の一つが明らかになりつつある。以下の論文は、2021年にオックスフォード大学プレスが発表している。vmPFCという脳部位にダメージがあると、未来に対するイメージが持ちづらくなるそう。

vmPFCは、デフォルトモードネットワークというネットワークの一部としてもよく知られ、強い記憶との関係性が知られているが、強い記憶がないと未来も描きづらいのと関係しているような気もする。

やりたいことは?夢は?と問われても、なかなかその未来を描けないのは、それに伴う体験をもっていなくて、すなわち強い記憶(具体的には、エピソード記憶と感情記憶など)がないから。

本を読んでも、ネットをサーフィンしても、なかなか強い記憶にはなりづらい。体験は、五感を通して、感情も発露させ、強い記憶を作る。その体験が、脳の中で未来イメージを形成する材料になるのかも。

夢は、思い描くものではなく、思い描き続けるもの。そうする中で作られる強い記憶が、我々の行動や考え方を、思い描く方に導きやすくなり、夢に近づきやすくなるのだろうなぁ。

Ciaramelli, E., Anelli, F., & Frassinetti, F. (2021). An asymmetry in past and future mental time travel following vmPFC damage. Social cognitive and affective neuroscience, 16(3), 315–325. https://doi.org/10.1093/scan/nsaa163


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