出発、出艇。


出発前日

 ナイル川単独カヤック行が始まる。スーダンの首都ハルツームを出発する前日に、スタート地点を決めるべく川へ降りれる場所を探した。予めGoogleマップで衛生写真を見ながら、このへんかなあと何箇所か目星をつけ、現地で実際にそこまで行ってみる。

 決めたのは、この地図の赤丸地点。左から白ナイル、右から青ナイルが流れてきて合流する場所、ここでナイルは一本の川となる。ここから地中海までが狭義でのナイル川である。現地まで行ってみると、この赤丸の橋の下が川まで降りやすく、周りに人気もなかった。



出発当日

 朝イチで出発しようかと思っていたが、パッキングやらをしていたら宿を出るのが8時になってしまった。

 8時半に昨日の橋下に着き、カヤックを組み立てるべく荷解きをしていると、どこから来たのか、子供たちが集まって、何やら訝しげに僕の様子を伺っている。それもそうだろう、外国人が、見たこともないでかいバッグ2つを持ってきて、見たこともないものを広げているのである。

 ハリウッド映画など見たことがあったら、もしかしたら僕はスパイか何かだと思われているのかもしれない。その誤解を招かないように、笑顔で彼らに話しかけて、良い奴感を出しながら作業を進めた。

 フレームを組み立て終わり、カヤックの全貌が見えて来ると、子供達は僕が何をし始めるのか、少し見当がつき安心したのか、笑顔でコソコソと話し始めた。


 組み立て終わったカヤックを、流されないよう注意しながら、水面に浮かべ、この頃には既に仲良くなった子供たちに手伝ってもらいながら、30kgの荷物をなんとか積み込んだ。カヤックの積載許容量が確か200kgほどだったので、当たり前だが、沈む気配はなく安定感があった。

 これから1ヶ月、こいつと地中海を目指すのだと思うと、「最後まで壊れないでくれよ」という不安感とともに、「一緒にがんばろうな」という少し友情めいたものがあったが、周りには子供たちだけでなく大人も集まり始めたので、騒ぎになる前に早く行ってしまおうと、パドルを漕ぎ出した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?