(詩)夏の日暮れに

人にたとえれば
もういいおばあさんの
野良猫とじゃれあった後の
夏の夕暮れ時に

いつになく
去ってゆくぼくの背中を
その野良猫が
いつまでも見ていたので

気になって立ち止まり
見つめ返したその時

「わたしはもうすぐ
 この世界を去ってゆくけれど
 わたしは今日まで充分に
 自分の生涯を生きてきたので
 そんなに後悔することなど
 ないのだが

 わたしには
 いつもひとりぼっちの
 おまえのことが
 少し心配なんだよ」

そんな言葉をつぶやくように
野良猫の目がぼくの顔を
心配そうに見つめていた
夏の日暮れ時

いつも
誰かのことを心配しながら
生きてきたつもりだったのに

本当はいつも
誰かに心配かけながら
生きていたのだと気付いた

しずかな夏の
夕暮れ時だった

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