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創作に費やした時間は決して無駄にはならない…なぜならば

こちらの記事では、ミステリーの短編の作り方を少しだけ、

そしてこちらの記事では、これからはじめて物語を書く人のために、4コママンガの作り方を載せました。

今回は「恋愛もの」の作り方について書きたいと思います!


恋愛を描くとは関係性を描くということ

私がマンガ教室で教えていたとき、
「恋愛ものを描いてください」というお題を出すと必ず
「えー、恋愛ものって苦手なんですよねー」と言う人が
出てきます。
でも、「恋愛もの」は、ショートストーリー(漫画なら24ページくらい、小説なら30枚くらい?)を描くとき、ちょうどいいテーマとなるので、
別に「友情」でも「家族愛」でもいいのですが、
とりあえず何かを描いてみよう、と思ったときは「恋愛」をオススメします。
なぜかというと、「恋愛」は二人でするものだからです。
短い物語の場合、メインの登場人物は、まずは「二人」が望ましい。
でも、二人ではなかなか物語が進まないので、二人の関係性をちゃんと描いた上で、もう一人加えて
「三人」にするとうまくいきます。
初心者の人には、登場人物が最小で、
濃い関係、深い感情だけを描ける「恋愛もの」が
一番勉強になるし練習になるし、おすすめなのです。

それでも「恋愛ものは苦手だから描きたくない」という人に
無理強いはしませんが…
でもそういう人って、ただ単に「恋愛を描くなんて恥ずかしい」という
理由だったりするので…
そもそも漫画や小説というものは、自分の心の内をさらけ出すことです。「恥ずかしいから描けない」と言う人がおもしろい物語を描けるとはおもえません。
「恋愛じゃなくて、もっと壮大な物語を描きたいんですよねー」と言い張る人は、
大抵、物語の序盤だけ書いて挫折します。
まあ、別にそれでもいいのですが…

私が訴えたい「物語を描く」ということは、
短い物語であっても、必ず「最後まで描く」ということが重要なのです。
物語を完結まで一通り描いてみて、やっとゼロから一になります。
そうしてやっと見えてくる景色があるのです。


話を戻します。
ポイントは、メインの二人の登場人物の特徴をじっくりと詳しく
描くことです。
二人はできるだけ、性格も容姿も正反対がいいです。
その上で、もう一人の人物(第3の人物)を考えます。
こうして生まれた「三人の登場人物」の相関図を作るだけで
自然とおおまかなストーリーができている…というのが
ミソです。

この方法は、物語を考えてから人物をあてはめる
という方法ではなく、
人物を考えると自然と物語が生まれてくる
という方法です。
初心者の人に、まず試してみてほしい作り方です。

前回でも紹介しました
20年ほど前に作ったマンガ教室の通信講座のテキストの
人物(キャラクター)の作り方を載せておきます。
小学生でもわかる内容にしてありますので、一見、子ども向けですが
もしよろしければ参考にしてください。




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「ミステリー」はオチから。「恋愛もの」は転がすような感じで。

ミステリーの場合、オチがとても重要です。
なので、(私の場合)ミステリーを描くときは、
オチをまず考えます。
そして、オチがバレないようにバレないように、
エピソードを積み重ねて積み重ねて、最後にひっくり返します。
積み重ねたものが多ければ多いほど、ひっくり返したときの
衝撃が大きくなる、つまりおもしろくなります。

恋愛ものの場合は、そういうことはしません。
ラストはだいたい、ぼんやりと考えておきますが、それもただ
「二人が結ばれてハッピーエンド」くらいです。

メインの二人の性格は正反対の方がおもしろくなるし、
(そうしないと読者から見て二人がごっちゃになって見分けがつかないという問題もありますから)
「この二人がまさか恋人同士になるなんて!」という意外性があったほうが読む側は興味がわきます。
そして、自分でもどうやって恋が実るのはわからないという状態で描き始めます。

つまり、ミステリーの時とまったく逆です。
(自分もオチがわからない)
「どうなるかわからない」のに、描けるのか?と思われるかもしれませんが、描けます。

キャラクターが勝手にしゃべる

「そんなバカな」と怪しまないでほしいのですが、
何本も漫画や物語を描いている人が必ず経験するのが
「キャラクターが勝手に動く」
「勝手にしゃべる」
という現象です。

うまくいくと、何も考えなくても
勝手にしゃべってくれるので、特に「セリフを考える」ということは
しなくてもいいのです。
作者はただ「転がす」だけです。
私の経験では、主人公、副主人公といったメインの人物よりも
悪役、ライバルなどの第3の人物の方が
勝手によくしゃべります。

キャラクターがうまくのびのびと動いてくれるためにも
設定、プロットは、あまり凝らずに単純な方が良いのです。
初心者に「恋愛もの」をおすすめするのもそのためです。
SFだったり歴史ものだったり、設定に説明が必要な物語は
説明だけで一苦労してしまいますから。
恋愛もの、しかも現代の身近な物語…ならプロットはだいたい、限られています。

〇片思いが成就する
〇好き同志なのにジャマがはいってすれ違いばかりを繰り返す
〇嫌いだと思っていたのに、いつの間にか好きになっていた

と、まあこれくらいだと思います。
これだけ見ると幼い少女漫画的なのですが、大人のラブストーリーであっても、だいたい、この中のどれかに当てはまります。

単純でよくあるプロット…だからこそ、
キャラクターをしっかり描くこと、つまり
ディティールが大切となります。
「勝手に動く」というのも、性格や考え方などを
まるで本当にどこかで生きて生活している人のように
リアルに描くからこそなのです。

例えば、「幼馴染みの男の子のことがずっと好きだった」は
恋愛もののド定番なのですが、
一体、どこが好きだったのでしょう?
「幼馴染みだから」なんて理由になりません。
子どもの頃に好きになったからといって、大人になっても
引きずるものなのでしょうか?
物語の中では「よくある」ことであったとしても
現実の世界の中では「よくある」ことではありません。

イケメンだから好きなのでしょうか?
優しいから好きなのでしょうか?
お金持ちだから好きなのでしょうか?
それだけでは納得いきません。
かといって、「理由」を細かくたくさん考える…というよりも、
「空気」が大事なのではないかと思います。
言葉にできないけど、なぜだか惹かれる…
という空気感を描くことが大事です。
普通、人は理屈や打算で人と付き合って
恋愛しているつもりになっているようですが、
物語の中ではそういうものは通用しません。


物語は脳トレに勝る

少しだけ話が反れるのですが、
ずっと前、友人がゲーム機で脳トレをやっていると言ってきて、(漢字のパズル?みたいな)私はあまり興味がないので「ふーん」と聞いていたのですが、「将来、ボケないように、あんたもやりや!漫画ばっかり描いてたらボケるで!」と言ってきたのです。

その後なんだかモヤモヤしてしまいました。
脳トレだかなんだか知らないけど、本人が楽しんでやっているのなら
それは自由ですが、
人にまで強制することか?と。(強制というのはおおげさですが)

その頃はまだ30代。「ボケないための訓練」なんてまだ早いのではないか?
いえ、それも確かに必要かもしませんが、でも…。

別にゲームで脳トレなんてせんでも、(おもしろいのならしますが)
私は毎日、漫画を描いているのです。
「漫画を描く」「物語を作る」って、すでにめっちゃ脳トレじゃないですか?
設定を考え、キャラクターを考え、ストーリーを組み立て、セリフをしゃべらせ、心の声を吐かせ、人間関係を描き、その上、指先も使って絵も描きます。
考える、ひらめく、の繰り返し、
脳をフル回転させている、これ以上の脳トレってないじゃないですか?

私の母は83歳なのですが、昔からNHKの朝の連続ドラマ小説が大好きです。
でも、「朝ドラならどの物語も好き!」というわけではなくて、
「今回のはええわ!おもしろい!」と褒めるときもありますが、「今回のは、アカン!しょーもない!」というときもあります。

お気に召さないドラマであっても、毎朝キチンと観て、
「ここがアカン」とか、「次どうなるかわかりきってる」と批評をしながら観ています。
ちゃんと分析しながら観ているようなので、好きではなくても、
毎朝ドラマの続きを観ることで、かなりの脳トレ&ボケ防止になっているのではないでしょうか。

ドラマを見続けるというのも、頭を使います。
前回の話を覚えていないといけないし、登場人物も多く、複雑な人間関係であったりします。
「ああなってこうなって」という話の筋を追うことができなければついていけません。
さらに「次はどうなるのかな」と予測や期待をしながら観るのです。
そしてさらに「ドキドキ」「ワクワク」などの感情もついてきます。

脳トレのゲームでも別にいいんですけど、物語の中に入り込む方が
ずっと楽しくボケ防止できるのでは…と、思うのですが。(個人の意見です)

さらにもっと言うと、「観る側」ではなく「作る側」にも
なってみれば、もっと楽しいし、さらなるボケ防止になると思うのですが…。
でも、さすがに「物語を作る」ことはハードルが高いようです。

「物語を作る」ということは
「漫画家」「小説家」「絵本作家」「シナリオライター」などの職業であったり、特別な人のすることで、
その他の人にとっては意味のないこと…
ではないと私は思うのです。

私が作った通信講座のテキストを見てもらってもわかるように、
職業や年齢に関係なく、どんな人でも楽しんで
ワクワクできる最高の脳トレだと思うのです。
もちろん誰にも強制はしないけど、
少しでも興味のある人はぜひ、挑戦してみてほしいです!


アクションとリアクション

またちょっと話を戻して、
「キャラクターにどうやって勝手にしゃべらせるか」について
もう少し説明します。
以下は、あくまでも私の創作の方法なのですが…。

ミステリーの場合、すべてのコマ、セリフに
「違和感」を残すようにしています。
そして主人公はその違和感に「気づかない」。
それが、ラストにすべてをひっくり返すコツとなります。

恋愛ものの場合にも、ところどころに「違和感」を
散りばめます。
そして、主人公はすべての違和感に反応します。

恋愛ものはラストでひっくり返すということは
しないので、その時その時に小さな「反抗」をします。
そしてそれを積み重ねていくと、
クライマックスにかけてその反抗が大きくなり、
爆発します。
と、いうと過激ですが、別に爆発はしなくても
何らかの大きな、重大なリアクションをします。

それが何であるのかは、作者自身もわかりません。
でも、
行動(アクション)と、反応(リアクション)を
繰り返すうちに、何かが生まれます。
問題の答えを解いていくような感じで、
ラストには主人公は自ら成長して、何らかの答えを出してくれるのです。

多分、(うまくいけば)
今まで自分でも思ったことがないような、理屈では考えられないような
感情が詰まったセリフを、主人公はラストでしゃべってくれるでしょう。

それは、世界を変えるほどの威力はないかもしれない…
けれど、少なくとも、自分を変える力にはなります。
気づきだったり、発見だったり、ちょっとした希望だったり、前向きな心だったり、勇気だったり…
胸につっかえていたものがなくなってスッキリする…という感覚です。
それが癒しというものなのかもしれません。

私はたくさんの物語を作って生きてきました。
残念ながら、ヒット作というものはなく、
ずっと無名の売れない漫画家です。

でも、私には「これだけ描いてきた」という
確かなものがあり、一度も手を抜いたことがなく
いつでも物語と真剣に向き合ってきたという自負があります。
(売れなくて絶版になっていますが、おもしろいですよ!自分で言いますが…)

そして自分の心を癒したり、励ましたりしてきました。
漫画を描いてきたことを一度も後悔したことはないし、
「もし、描くことを諦めてやめてしまっていたら」
と想像すると、今の自分はいなかったと思うと
ゾッとします。

今回の記事が今から「描きたい」と思う人や、
描きたいけど、なかなか筆が進まない…という方の
少しでもお役に立てれば幸いです。


最後に

実は今回の記事は、ある人に向けて書きました。

それは、昔の自分に、です。
デビューしたばかりの頃、ネームを描いても描いても編集者に無視されて、なかなか仕事につながらなかった
昔の自分へ。
描いても描いてもボツ、だと何のために描くのかがわからなくなります。
「描こう」と思っても、
「どうせ無駄だ」「こんなことしたって無駄だ」
という心の声が聴こえてきました。
誰も私の漫画なんて読みたくない、望んでいない…と思うと惨めで
漫画家なんてもうやめるべきだ、とも思いました。

でも、やっぱり、諦めずに描き続けてよかった。
描くこと、創作は、絶対に無駄にはなりません。
すべて、自分のためになるのです。

だから、昔の悩んでいた自分に言いたい。
もうちょっとしたらいいことあるよ!描くことは絶対に、無駄にはならないよ!だから描くことをやめちゃダメ!


最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

ついでに恋愛ものの宣伝もしておこう!
絶版だけどkindleなら読めますよ!
(ティーンズラブです)






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