無題

ルイナーがわからない

ルイナーの話をしていきます。(主にweb連載版に基づく)

第三部より登場するニンジャ愚連隊、サークル・シマナガシの一員であり、外見・発言の露出が少なく謎めいているキャラクター。
マーブル迷彩のニンジャ装束であること以外は長らくビジュアルの開示がなく(web版第三部終盤や書籍エピソードにてフードもついている記述が出る)、相手の身体に触れたところから圧し潰すような緩慢な挽肉カラテで戦い、時には銃火器も平然と扱い、敵が乗っていたハイテックなバイクを奪い取って運転し、くせ者揃いのシマナガシにおいて一呼吸おける休符のような存在であるが、「何者か?」を語ろうとすると言葉にぐっと詰まってしまう。

ルイナーの不思議なところは、登場エピソードにてどんな行動・成果を上げたかを紹介していくことはできても、その人格をなぞって内側を探索し、「こういうキャラクターだよ」とまとめるのがなかなかに難しい点にある。

もしも私が「ルイナーってどんなの?」と尋ねられたら、第一部の「ラスト・ガール・スタンディング」から「ニュー・メッセンジャー・オブ・ホワット」、そして第三部の「ヘイル・トゥ・ザ・シェード・オブ・ブッダスピード」をおすすめしていくことになるだろう。その後に「ニュー・メッセンジャー・オブ・パスト・アンド・フューチャー(ホワットの物理書籍収録・加筆版)」だ。テキストを読むならこれだ。これは当時の私がリアルタイムで読んだ順そのままである。そのため「なんかまどろっこしくない?」感がある。

あるいはコミカライズ版の「ラスト・ガール・スタンディング」、続いて収録されている「ニュー・メッセンジャー・オブ・ホワット」。ここからは上のパターンと同じでブッスピに入っていけばいい。ビジュアル重視ならこっちだ。(なんとコミカライズのホワットにはルイナーのシルエットが出る。これはすごいことである。おかげで物理書籍までだいぶ食いつなぐことができた)

ルイナーを知る前にシマナガシを、その前にスーサイド(とフィルギア)を知ってほしい。この気持ちがとても強い。まずルイナーがいるエピソードを出すのは悪くないが私はそのルートはとらない。ラストガールで忍殺の世界とソウカイヤ(ソニックブーム)の圧、スーサイドの熱さを見てもらいたいからだ。そして死闘の後の静けさからフィルギアが現れ、スーサイドと読者を誘ってシマナガシへ接続していく、この導線が非常に好きだ。

「ルイナーを知りたければ真っ先にルイナーを目指すべきではない」と考える。先に述べたようにルイナーは「休符のような存在」である。初見からキャラクター性で殴りかかってくるような感じではない。それはスーサイドやフィルギアやアナイアレイター、他のシマナガシメンバーにふさわしい。
初めて足を踏み入れた冒険者ギルドに剣呑な空気の強者が集い、一斉にこちらに視線を浴びせてくるとして、あなたが負けじと目を配らせていく途中で「ん?」と一瞬違和感を覚える。その時視界に映っているのがルイナーで、彼もまた確かな強者ではあるが、しかしその時点では強烈な存在感を発していないためにあなたは目線をはずしていく。しばらくはそのひっかかりを忘れる。しかし後になってから必ず思い出す。そういえば妙なやつがいたなと。

ブッスピにおけるルイナーの第一印象は、「火力がある」「寡黙だ」「有能そうだ」「いい意味で地味だ」だった。共に現れたアナイアレイターがそのド派手さで一気に注目をさらっていく一方、スーサイドたちはまだなじみがあるからいいとして、このトラッカーとかいうニンジャをスイカ割りしていったニンジャはなんなんだ? そう、なんなんだ、である。

ここで言っておくと私は「寡黙な影の働き者」がたいへんツボである。
例えば『戦国無双』の服部半蔵、とだけ添えておく。たいへんツボなのである。

話を戻す。web版ブッスピではシマナガシが港湾倉庫を爆破する一幕がある。アナイアレイターが敵ニンジャの到来を待つが、それに対して「こんなところで十分だろう」と返すルイナーのくだりでおおむねイメージがかたまった。フィルギアとは別のベクトルの知性があり、かつリーダーへ自然に口を出せるほどには立場が安定しており、スーサイドほど堂々とは張り合わず、血気にはやっているわけでもない。当時、口数が少ないルイナーについて考えるための指標がほぼこの台詞だった。「十分だろ」ではなくて「十分だろう」。そこに執拗にこだわっていた。(今では「十分だろ」が似合うようになった。それも素晴らしいことだと思う)

ここでブッスピにおける最高のツイートを紹介する。この一段落ほどルイナーの働きを過不足なく伝えている箇所はないだろうと今でも思っている。

セクション8の19、私は勝手にハイクと呼んでいる。ハイクを読め、だ。

「味方への2本のクナイ・ダート攻撃を防ぎ」、「そのクナイを指先で捻じり壊し」、「先刻はヘリを撃墜して上空の憂いを絶っていた」。これを影の働き者と言わずしてなんとすればいいのかわからない。アクションの流れで説明されるのではなく一気出しのため、「それらをすべてソツなくこなせている」という印象を与えることができる。状況報告、異常なし。というやつだ。それを誰が指摘・称賛するでもなく、地の文が記すだけ。彼らにとってはいつものこと、当たり前のこと。そんなそっけない信頼と温度を感じられる。
そして、だからこそブッスピの後に物理書籍版の「ニュー・メッセンジャー」を読んでほしい。ラストガールからブッスピまでにどれだけの時間と空気の流れがあったのかを覗いてほしいからだ。

ブッスピの話だけがしたいわけではないのだがなんか長くなってしまった。

ブッスピ以後、「ゼア・イズ・ア・ライト」のファイアブランド戦で右肩を爆破され腕がちぎれかける重体となり、「デス・トラップ、スーサイド・ラップ」の逃走千里行では路上でひとり、苛烈なアクションを繰り広げる。正直言って私はこのソロ路上戦のくだりを更新翌日早朝に読んだ時ものすごい勢いで号泣した。「これは死ぬ。ルイナーはここで死んでしまう」と確信に近い終わりを感じたからだ。蠟燭の最後の燃え上がりを見たと思った。それほどにこのシーンが痛ましく、かつてないほど雄々しく、次のツイートでやられてしまうのでは、と気が気でなくてどうしようもなかった。

その荒波を越えた後にあの台詞がある。ここではあえて書かないが、あの発言で一気にルイナーのイメージがひっくり返ってもんどりうって捻転しながら土俵の外へ転げ落ちていった。そこからのスターゲイザー戦はもう呆然としながら読んでいた。あの一喝もあって脳が殴られすぎてあほになっていたのかもしれない。更に地下水路であの過去最長の台詞がくる。もうめちゃくちゃだった。蝋燭の火がダイナマイトに繋がってしまった。厄介なことにこのダイナマイト、導火線の終わりに結わっているのではなく途中途中にドカドカと並べられている。次々爆発する。今になって言葉を選ぶなら、デストラは威風堂々の有様だった。爆破されるのはあなたです!

しばらくはある種のショック状態だったと思う。ルイナーの背中が遠くなっていくとかいうぼやきは何回かした覚えがある。見えなくなるまでおとなしく見届けようと思っていたのに、「ニチョーム・ウォー」でまたも殴られる。

映画館でマッドマックスを観た日の夜の更新だった。翌朝読んだ私はメロスではないが激怒した。デストラでのディセンション後の絶頂期エピソードだけでなく、ここでもまた過去の話が出てくるとは。しかも今度はモータル時代だ。クリスタライズドが砕け散ったことと「巨人を殺った」通信には「ダビデとゴリアテ……」とうめきかけたがサイズ感だけのひらめきだったのでやめた。

とにかく「イメージを練り直さなければならない」と強く思い、それまでの脳内ビジュアルを一度白紙にした。
ルイナーは成長する人間であるとようやく理解したからだ。

あとあまりにもセンセイ案件が頭にキたので勝手に捏造したりした。

さて、ルイナーの活躍は第三部終盤でピタグワスイッチの連鎖の果てに背後から槍で貫通刺突されたところで終わる。その後にアナイアレイターの極限スリケン・ジツやジェノサイドとエルドリッチを仲裁するフブキさん・リー先生など色々あるのだがルイナーはここまで。

槍傷はおそらくなんとかなるだろう。右腕もきっとかろうじて使えることだろう。第四部の世界ではどうしているだろうか。サイバネになっただろうか。年はとったのだろうか。そもそも生きているのだろうか。アテはあるだろうか。

今度登場するかしないかはどちらでもいい。ルイナーは確かに第三部で生きていたし、無事に「生き延びる事を重点」できたはずだ。それがわかっていればいいと思う。まだまだルイナーについて考えられることは山ほどある。わからないことだらけの男なのだ。我々のお楽しみはこれからだ。

個人的にルイナーのイメージBGMは、ブッスピ以前~デストラが
『真・三國無双6』官渡の戦い・魏 frenzy moon

デストラ以後が同じく『真・三國無双6』毋丘倹・文欽の乱 Male Roar
音源を探して聴いてもらえれば「あっ……ふーん」となると思う。
シマナガシ全体は呂布軍。

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