送信履歴#6 きっかけを待つことだよ。

クラブ活動だとかフラワーアートなど趣味の会合だとか、同一の目的をもった人たちの集まりでさえ、いざこざが起こることがあるんだもの。
「次の大会ではいい結果を残せるよう頑張ろうね」「フラワーアートはこうあるべき」、こうした個々の意見が同一の目的を細分化させ、差異を浮き彫りにしてしまうからだ。うまくまとめられる人がいて、みんながその気になれば“意識の高い集団”に向けて歩み始めることができるんだろうけど。そうした集団になりやすいと言ったほうがいいのかな。

それに対して会社は嗜好で集まった人たちの集団じゃないじゃない。
好きなことを仕事にすることはできても、好きな人たちだけを集めて仕事をすることはほとんど不可能に近いしょ? 多くの労働者にとって。そこに軋轢が生じることは必然みたいなものだし、その軋轢が悲劇につながっても不思議じゃない。
好きなことを目的として集まった集団よりも、問題が起こるリスクは高くなるのも当たり前。

このことを意識しくおくだけでも、精神衛生は多少改善されると思うんだ。いわば受け入れなければならない運命なわけだから。
そしてその代わり、僕たちは生活者として保障される。

軋轢は、副作用みたいなものだと思うよ。どんなに人づきあいに慎重になっても、自分の努力以外のところでつまづいてしまうんだよ。趣味嗜好の世界でさえ、意見が細分化されれば個々の違いが浮きだってくるんだ。ましてや仕事の領域でならなおさらのこと。よかれと思ってやったことが、思いもよらない抵抗勢力で挫かれることがある。
だからといって、その抵抗には悪意が込められているとは限らない。
ここが難しいところだね。「私は間違っていると思ってはいませんよ』なんて宣言してはくれないし、真意も外見からじゃわからないから。
善意の「よりよくしたい」方法が違っていて、そのことがうまく伝わっていないことに因る軋轢、というのはよく見られることだよ。

その彼女のしたいことに耳を傾けてみるってことはできないのかな?

ただ、総務部長のバックアップで入社した君をおもしろく思わない人もいて、彼女がそれにとらわれていることも考えられると思う。彼女がそのタイプだったら、純粋な善意からくる抵抗--圧力といったほうがいいのかな--とは言えなくなる。悪意じゃないかと言われそうだけど、そう言い切れないのは、彼女にとってその姿勢は正義だからだ。
「私は正攻法で狭き門をくぐり抜けこの会社に就職し、実力と努力で営業1課のマネージャーになったというのに」、そう感じていたとしたら「コネ入社の実力足らず」と君を見下しているかもしれない。
気を悪くしないでほしい。たとえば、の話だ。
まずは、聞いて。
で、彼女が君を取り巻く恵まれた環境に納得できないのであれば、いちばんの解決法は、君が実力で上まわっていることを示せばいい。理想論としてはの話だけれども。だけど、現実にはそううまくいくものではない。
話を聞く限り、彼女の自信やふるまいは、君の実力を認めていなさそうだからね。
認めたくない、潜在的にそんな感情があるのかもしれない。

だとすれば、彼女に入り込むきっかけを待つことだと思う。
きっかけから懐に入りこめれば、腹を割って話すこともできるだろう。

だけど、力技はいけない。かたくなになっている蓋をこじ開けようとすれば、きっと軋轢の先にある亀裂の予感は傷として顕れる。不思議なもので、そうやってできた傷口は、補正しようと思えば思うほど広がっていく。根治療法がないからこじれているのに、そこに当てる絆創膏が傷に合わなければ、痛みを呼んで化膿してしまうことだってある、そんな感じ。
だから、きっかけがあって、踏み込むことができても、反応が芳しくなかったら、決して言い訳したり繕ったりしてはいけない。
「その提案、ちょっとした間違いでした」ってドライな顔を装って、忘れてくれるのをひたすら待つ。そして次のきっかけに期待をかける。
君は部長補佐なのだから、これから彼女と仕事を共にする機会は飽きるほどある。望むと望まざるとにかかわらず、君は彼女と仕事をしていかなければならないんだ。
営業戦略立案なり成果なりで、共に仕事をする仲間であることを意識してもらう。そのためのきっかけをひたすら待つ。
それが上司としての君の仕事だし、真っ先に着手すべき正攻法だと思う。

こんなこと、君はとっくにわかっているとは思うんだけど。

ぼくはちゃんと君のことを真剣に考えている。

あとで電話していいかな。
返信を待つ。

そうそう、先日の文字化けメール、デコードしてもだめだったのに、ある方法で文章に変換されたよ。
すごいね、グーグル翻訳。
でも、あれってどこの言葉なんだろう?
疑問はほかにもあってね。翻訳されていた文章が、なんとぼくが君に当てたメールの一部だったんだ。

サーバーの気の迷いだったかな?
そんなことがこのハイテク時代に起こり得る?

いずれにしても、連絡を待つ。

(続く)

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この道に“才”があるかどうかのバロメーターだと意を決し。ご判断いただければ幸いです。さて…。

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商用物書きから少し逸れて、生活に添わない創作に憑かれたのが2018年。溢れては無駄にこぼれていくことばの流れ、その川底に残ったものを剥がしては拾い集めて、を繰り返していたら、点が線になりました。少しずつ少しずつ、それらを積み上げていけたなら。感想をいただけたら幸いです。
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